治療に難渋することの多い多臓器転移や合併症を有する進行がん患者さんに対しても、関連診療科・多職種と連携したチーム医療のもと、質の高い診療を提供いたします。

神戸市立医療センター中央市民病院
腫瘍内科部長
安井 久晃

病名、病気の性質、状態、期待される治療効果、予後および今後の治療方針について、詳しい説明を行うのはもちろんですが、医師と患者さんが話し合いながら治療法を決定します。インフォームド・コンセントのように情報の流れは一方向でなく、医師は患者さんの特性をつかみながら、自由に個人的意見も言える関係の中でお互いが納得できる治療方針を一緒に決定するというプロセスを大切にしたいと考えています。

患者さんご本人には十分理解、納得していただいた上で治療を行いますが、最初に受診される場合は、ご本人だけではなく、可能な限りご家族と一緒に来院されることをお勧めいたします。

治療法としては特別な理由がない限りは標準治療をまず検討します。標準治療とは「現時点でその治療を行うことが、最も良い効果が出る可能性が高い」ことが、臨床試験で証明され、医学的・科学的根拠に妥当であるとされた治療法です(当然新しい治療法の出現により変わることがあります)。さらに、患者さんの全身状態や治療法により副作用の違い、患者さんの希望やその他の状況なども考慮し、患者さんにとって最良の治療を提案させていただきます。

臨床試験として、新薬の治験、新しい併用化学療法などの研究的治療にも取り組んでいます。希望のある患者さんは治験や臨床試験に参加することで、新たな治療法を先取りし選択できる場合もありますので、治療説明の際に希望される方にはお話させていただいております。

QOL(生活の質)を重視し、化学療法を導入した後は、当院外来もしくは地域の連携医療機関で治療を継続していきます。可能な限り今までの生活が続けられるように心がけています。

また、当院外来化学療法センターでは、各分野の専門医、さらにはがん専門看護師、がん化学療法認定看護師、がん専門薬剤師と協働し、安全で快適な外来化学療法の実施に努めております。

がんゲノム医療とは

がんの組織などを用いて、がんに関連する多数の遺伝子を同時に調べ(がん遺伝子パネル検査)、遺伝子の異常(変異)を明らかにすることにより、一人一人の腫瘍特性や病状に合わせて治療などを行う医療です。特定の遺伝子変異ががんの増殖に重要な役割を果たしている場合(ドライバー遺伝子)、その遺伝子の働きを抑える薬剤(分子標的治療薬など)を用いることによって効果が得られる可能性があります。原発臓器に応じた従来の標準治療ではなく、がん細胞の遺伝子変異に基づいて薬剤を選択することが可能となります。

当院で実施しているがんゲノム検査(がん遺伝子パネル検査)
保険診療

オンコガイド NCCオンコパネル
ファウンデーションワン CDx
ファウンデーションワンLiquid

対象患者

標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者さん(終了見込みを含む)で、関連学会の化学療法に関するガイドライン等に基づき、全身状態・臓器機能等から「化学療法の適応となる可能性が高い」と主治医が判断した方(厚労省見解)

自費検査

ガーダント360(リキッドバイオプシー)

対象患者

保険診療としてのがんゲノム検査の適用とならない患者さんなど

対象となるがんの種類

固形がん(原発不明癌を含む)

検体の要件

この検査では、遺伝子解析のために、がん組織由来の核酸サンプルが必要です。そのためがんを含む組織(※)の病理ブロック、またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片をご提供いただきます。ガーダント360では、末梢血に存在する腫瘍由来のDNAを検査しますので(リキッドバイオプシー)、末梢血20mlのみで検査が可能です。

(※)がんを含む組織:がんの病理検査のために行った生検のサンプルあるいは手術の際に採取した組織サンプルを用います(ホルマリン浸漬時間48時間以内、採取後3年以内が望ましい)。

費用

検査前に「がんゲノム検査外来」を受診していただきます。保険診療としてがん遺伝子パネル検査を行う場合は、通常の保険診療として受診費用がかかります。

自費検査の場合の費用負担は、ガーダント360が約43万円となっています。

(注)この検査が開始された後であっても、検体がこの検査に適する状態にないことが判明した場合、この検査は中止されます。この検査が中止された場合であっても、その時点までに発生した費用を患者さんにご負担いただく必要があります。

検査結果について

検査結果返却までの期間は検査によって異なり、約3週間~5週間となります。ガーダント360は約10日で結果が返却されます。しかしながら、返却された遺伝子変異情報はそのままでは患者さんにお伝えすることはできません。がんゲノム医療に精通した専門家による検討会(エキスパートパネル)で、開示すべき情報や推奨治療・治験などについて検討を行うため1週間程度の時間が必要となります。

当院はがんゲノム医療連携病院として、がんゲノム医療中核拠点病院である京都大学病院と提携しており、中核拠点病院が開催するエキスパートパネルで症例検討を行った後に患者さんに結果を説明します。

ご留意いただきたいこと

がんに関わる遺伝子の変異については、未知の物も多数存在し、本検査を受けていただいても、有用な情報が得られないことがあります。また、がんゲノム検査を行っても、既承認薬がない等の理由で実際に治療ができる患者さんは10~20%程度にとどまります。遺伝子変異に基づいた治験や先進医療は少なく、未承認薬を適応外使用する場合には非常に高額な費用がかかるという問題点があります。

多数の遺伝子を検査するがんゲノム検査では、遺伝性腫瘍に関連する遺伝子変異が見つかる場合があります(二次的所見)。BRCA遺伝子変異に関係する遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC)が有名ですが、それ以外にも該当する遺伝子が存在します。遺伝性腫瘍が疑われる場合、検査結果をどう解釈するか、確定診断のための遺伝子検査を受けるべきか、家族の検査が必要かなど、がんの早期発見や治療法など医学的問題に加えて、検査費用の問題や、家族関係・結婚・出産などの問題を整理し理解するために遺伝カウンセリングが必要です。当院では「家族性腫瘍相談外来」を設置しており、必要に応じて遺伝カウンセラーが対応しています。

がんゲノム検査外来では、単に検査や結果の説明を行うだけでなく、検査のメリット・デメリット、限界などについても時間をかけて丁寧に説明し、患者さんにとってどのような選択肢があるのか、一緒に考えさせていただきます。

がんゲノム検査申し込み方法

本検査をご検討される場合は、下記フロー図をご確認のうえ、「がんゲノム検査外来」をお申し込みください。

がん遺伝子パネル検査<保険適用フロー図>

(※)がんゲノム検査外来は、火曜日午後のみとなっております。

当院を受診されている場合は、主治医に相談してください。

当院を受診されていない場合は、かかりつけ医にご相談の上、かかりつけ医から事前にFAX予約を取ってもらってください。
FAX予約に必要な書類は、「診療情報提供書」、「同意書」、「追加聞き取り項目(保険診療希望者のみ)」です。
当院の地域医療連携センター(FAX:078-302-2251)まで、FAX送信してください。

診療情報提供書
同意書の様式
追加聞き取り項目

当科では、消化器がんをはじめとする成人固形がんの患者さんに対する先進的なチーム医療を行っています。

診療実績

外来がん化学療法

外来がん化学療法患者 年間約10,000件を実施・管理。

詳細については、外来化学療法センターの項をご参照ください

セカンドオピニオン

日本臨床腫瘍学会 指導医、がん薬物療法専門医による様々なセカンドオピニオンに随時対応しております。 40件/年程度

臨床試験・治験

数多くの臨床試験・治験を実施、各種臨床試験をはじめとし、国際共同臨床試験・開発治験(第Ⅱ相、第Ⅲ相)も多数実施しています。胃癌、大腸癌、膵臓癌、胆道癌、肝細胞癌など多くの癌腫で施行しております。

詳細は臨床試験・治験管理センターの項をご参照ください

診療科別統計

臨床評価指標ページ

主な疾患・治療法

当院では、安心して外来で抗がん剤治療を開始していただくために、看護師が治療開始前にお話を伺います。治療当日の流れや治療中の注意点・生活方法・副作用の対処方法・困ったときの相談窓口などを、冊子を利用してご説明いたします。
外来化学療法センターのページ

治療予定の患者さんについて、治療内容の確認や注意事項の共有を行うため、毎朝看護師・薬剤師・医師によるカンファレンスを行っています。安全で快適な治療を行い、一人ひとりの患者さんに最善が尽くせるよう努めています。

いつごろどのような副作用が出現するか予想できる場合も多いため、患者さんに注意していただくことなどを具体的にご説明いたします。特に初回の治療後は電話で状況を確認させていただいたり、途中で受診していただいたりしながら、安心して治療を受けていただけるよう配慮しております。

化学療法の治療を行うことが決まれば、薬剤師から点滴のスケジュールや主な副作用とその対策などをご説明します。また内服の抗がん剤のみで治療される患者さんもご自宅で安全に服用頂けるよう、薬剤師が継続的なフォローを行っています。

当科では臨床試験や治験(国際共同臨床試験・開発治験などを含む)を多数実施しております。新しい治療法や治療薬を開発し医療の進歩に貢献することは、私たちの使命と考えています。ご興味のある方は是非ご相談ください。

私たちは、患者さんが納得して治療方針を決定することが重要と考えています。そのために、他施設の医師の意見を聞くこと(セカンドオピニオン)をおすすめしています。ご希望があれば遠慮なくスタッフにお伝えください。また、他院からのセカンドオピニオンも随時受け付けております。

治療を続けているとだんだん腕の血管が使いづらくなってきたり、抗がん剤のために痛みや炎症を起こすことがあります。長期にわたる治療を安全で快適に行うために、中心静脈ポートをおすすめしています。日帰り手術で簡単に行うことができます。詳しくはスタッフにお尋ねください。

治療中の体調変化などに対応するため、かかりつけ医をお持ちいただくことを強くおすすめしています。また、治療と並行して、体調に合わせて緩和ケア科と連携して診療を行っています。

臨床研究

治療介入を伴う臨床研究には、治験(企業主導と医師主導)と臨床試験(医師主導:多施設共同試験など)があります。未承認薬の安全性などを確認する早期臨床試験(第Ⅰ相試験)から、有効性や安全性を評価する第Ⅱ相試験、標準治療の確立や薬剤の承認申請を目的とした第Ⅲ相試験まで、幅広い研究実施体制を整えております。

臨床研究推進センター

治験(企業主導と医師主導)

下表に現在実施中の治験の一部を紹介します。

試験名/課題名 対象疾患 試験薬 説明文
(PDF)
ONO-7913 第I相試験 根治切除不能な進行又は再発の結腸・直腸がん患者を対象に、一次治療としてONO-7913、ONO-4538並びに標準治療であるFOLFOX及びベバシズマブ又はセツキシマブを併用する非盲検非対照試験

根治切除不能な進行又は再発の結腸・直腸がん

ONO-7913・ONO-4538(Nivolumab) PDF
FGFR2bを過剰発現している未治療の進行性胃癌及び食道胃接合部癌患者を対象としたBemarituzumab+化学療法及びニボルマブとの併用療法と、化学療法及びニボルマブ併用療法とを比較する第Ib/III相試験

胃癌
食道胃接合部癌

Bemarituzumab PDF
未治療のFGFR2b過剰発現進行性胃癌又は食道胃接合部癌患者を対象としたBemarituzumabと化学療法の併用投与とプラセボと化学療法の併用投与を比較する試験

胃癌
食道胃接合部癌

Bemarituzumab PDF
トラスツズマブ デルクステカンのHER2陽性の胃癌または胃食道接合部腺癌患者への二次治療を対象とした第3相臨床試験 胃癌 DS-8201a PDF

臨床試験(医師主導:多施設共同試験など)

試験名/課題名 責任医師 承認日 説明文
(PDF)
悪液質合併消化器がんに対するアナモレリンの有用性を探索する後方視的観察研究 安井久晃 2023年5月 PDF
血液循環腫瘍DNA陰性の高リスクStage II及び低リスクStage III結腸癌治癒切除例に対する術後補助化学療法としてのCAPOX療法と手術単独を比較するランダム化第III相比較試験(VEGA trial) 安井久晃 2020年5月 PDF
根治的外科治療可能の結腸・直腸癌を対象としたレジストリ研究 (GALAXY trial) 安井久晃 2020年4月 PDF
Prognostic index による大腸癌肺転移切除と術後補助化学療法の成績(WJOG5810GSS) 安井久晃 2023年1月 PDF
固形がん患者及び血縁者における生殖細胞系列遺伝子変異同定の有用性を評価する観察研究 安井久晃 2022年10月 PDF
未治療進行又は再発胃がんを対象としたニボルマブ+ 化学療法の実臨床下における有効性と安全性に関する観察研究 安井久晃 2022年10月 PDF
治癒切除不能な固形悪性腫瘍における血液循環腫瘍DNAのがん関連遺伝子異常及び腸内細菌叢のプロファイリング・モニタリングの多施設共同研究(SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN) 安井久晃 2019年10月 PDF
切除不能膵癌における二次治療までの多施設合同後方視検討 安井久晃 2022年4月 PDF
Vulnerable大腸がんに対する化学療法の実態調査 安井久晃 2022年2月 PDF
切除不能進行再発胃癌における後方治療の新規薬剤(FTD/TPI、ニボルマブ、トラスツズマブデルクステカン)に関する多施設共同研究; 多施設後方視的研究 安井久晃 2021年
10月
PDF
結腸・直腸癌を含む消化器・腹部悪性腫瘍患者を対象としたリキッドバイオプシーに関する研究 安井久晃 2018年
10月
PDF

その他、数多くの多施設共同の医師主導臨床試験を行っています。

それぞれの臨床研究には、対象となる患者さんの条件(適格基準、除外基準)があります。また、患者さんの募集状況は随時変わります。お問い合わせなどございましたら、下記までご連絡いただきますようお願いいたします。

連絡先

神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科部長 安井 久晃
神戸市中央区港島南町2丁目1-1
TEL 078-302-4321(大代表) 

お知らせ

令和元年6月1日付けで、一部のがん患者さんに対するがん遺伝子パネル検査(OncoGuide NCCオンコパネル、FoundationOne CDx)(以下、本検査)が保険適用になりました。その運用には課題が多く、当院において長らくお待たせしておりましたが、この度、保険診療下での本検査を実施できるようになりました。詳しくは、『がんゲノム検査外来について』の項をご参照ください。

なお、自由診療によるがん遺伝子パネル検査も、従来通り実施しております。

腫瘍内科

先端医療センター病院 総合腫瘍科ならびに神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科を受診され、下記臨床研究への参加にご同意いただきました患者さんへ

当科で実施中の12研究は、医師の移動に伴い研究責任者が変更となりました。一部、臨床研究法施行により、研究実施体制も変更となっております。

当該研究の詳細につきましては、情報公開先にてご確認いただけます。

臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCT) UMIN臨床試験登録システム
【対象の臨床研究】

当院での被験者募集は、すべて終了いたしました

試験名 情報公開先
高齢者進展型小細胞肺がんに対するカルボプラチン+エトポシド併用療法(CE療法)とカルボプラチン+イリノテカン併用療法(CI療法)のランダム化比較第Ⅱ/Ⅲ相試験 (JCOG1201) jRCTs031180193
高悪性度神経内分泌肺癌完全切除例に対するイリノテカン+シスプラチン療法とエトポシド+シスプラチン療法のランダム化比較試験(JCOG1206) jRCTs031180216
EGFR遺伝子変異陽性進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するゲフィチニブ単剤療法とゲフィチニブにシスプラチン+ペメトレキセドを途中挿入する治療とのランダム化比較試験(JCOG1404) UMIN000020242
既治療の進行・再発非小細胞肺癌に対するドセタキセルとnab-パクリタキセルのランダム化比較第III相試験(J-AXEL) jRCTs071180037
未治療原発不明癌に対する次世代シークエンスを用いた原発巣推定に基づく治療効果の意義を問う第II相試験(原発不明癌NGSCUP) UMIN000016794
EGFR 遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者に対する一次療法としてのベバシズマブ + エルロチニブ併用療法と エルロチニブ単剤療法を比較する非盲検無作為化比較第 III 相臨床試験(NEJ026) jRCTs031180056
EGFR遺伝子変異陽性75歳以上未治療進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するアファチニブの第Ⅱ相臨床試験(NEJ027) jRCTs031180136
骨転移を有する肺癌を対象としたゾレドロン酸の4週間間隔投与と8週間間隔投与の有効性に関する無作為化第2相試験(阪神がん研究グループ0312試験) jRCTs061180054
治療進行期非小細胞肺がんに対する緩和的放射線治療併用Nivolumab治療による照射野外病変に対するimmune priming効果の有効性および安全性を検討する第Ⅱ相試験(阪神がん0116/PRINCIPAL試験) jRCTs051180174
オシメルチニブ無効後の進行EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者に対するアファチニブ+ベバシズマブ併用療法の多施設共同単群第II相試験 jRCTs051180205
特発性間質性肺炎を合併した進行扁平上皮肺癌に対するカルボプラチン+パクリタキセルの第Ⅱ相試験(IP合併001(Sq)) jRCTs051180149
特発性間質性肺炎を合併した扁平上皮癌を除く進行非小細胞肺癌に対するカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブの第Ⅱ相試験(IP合併002(non-Sq)) jRCTs061180046
問い合わせ先

該当の臨床研究に際し、ご質問がある方は、以下の「問い合わせ先」へご連絡ください。

【問い合わせ先】
神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科 部長
安井 久晃 ( やすい ひさてる )
〒650-0047 神戸市中央区港島南町2丁目1-1
電話番号:078-302-4321(代表)

 
7:30〜
8:15
    肺がん
カンファレンス
   
8:15〜
8:30
  腫瘍内科
カンファレンス
乳がん
カンファレンス
婦人科腫瘍
カンファレンス
 
8:30〜
8:50
     
8:50〜
9:30
外来化学療法
カンファレンス
外来化学療法
カンファレンス
外来化学療法
カンファレンス
外来化学療法
カンファレンス
外来化学療法
カンファレンス
16:00〜
17:00
  腫瘍内科回診      
17:30〜
18:00
    第1:化学療法委員会    
18:00〜
19:00
  消化器疾患
合同カンファレンス
第1:キャンサーボード    

腫瘍内科は当院がんセンターのコア診療科の一つであり、がん患者さんの窓口となります。化学療法が必要な患者さんばかりでなく、確定診断に難渋している、もしくは最良の治療法がまだ決まらないといった場合にも、腫瘍内科でトリアージを行い、関連診療科と共同での診療に対応いたします。

がん化学療法に関しましては、消化器がんをはじめとする成人の固形がんの患者さんの対応を行います。さらに患者さんの希望に応じ、当院および紹介元/地域医療機関との医療連携による化学療法も可能です。

さらに新規抗がん剤の治験や臨床試験への参加にも対応可能ですので、ご興味のある患者さんがいらっしゃいましたらお声掛けいただけましたら幸いです。

「臨床腫瘍プラクティス」vol.1.10 No.3(2014)

当院が雑誌に掲載されました。

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がんゲノム医療とは

がんの組織などを用いて、がんに関連する多数の遺伝子を同時に調べ(がん遺伝子パネル検査)、遺伝子の異常(変異)を明らかにすることにより、一人一人の腫瘍特性や病状に合わせて治療などを行う医療です。特定の遺伝子変異ががんの増殖に重要な役割を果たしている場合(ドライバー遺伝子)、その遺伝子の働きを抑える薬剤(分子標的治療薬など)を用いることによって効果が得られる可能性があります。原発臓器に応じた従来の標準治療ではなく、がん細胞の遺伝子変異に基づいて薬剤を選択することが可能となります。

当院で実施しているがんゲノム検査(がん遺伝子パネル検査)
保険診療

オンコガイド NCCオンコパネル
ファウンデーションワン CDx
ファウンデーションワンLiquid

対象患者

標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者さん(終了見込みを含む)で、関連学会の化学療法に関するガイドライン等に基づき、全身状態・臓器機能等から「化学療法の適応となる可能性が高い」と主治医が判断した方(厚労省見解)

自費検査

ガーダント360(リキッドバイオプシー)

対象患者

保険診療としてのがんゲノム検査の適用とならない患者さんなど

対象となるがんの種類

固形がん(原発不明癌を含む)

検体の要件

この検査では、遺伝子解析のために、がん組織由来の核酸サンプルが必要です。そのためがんを含む組織(※)の病理ブロック、またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片をご提供いただきます。ガーダント360では、末梢血に存在する腫瘍由来のDNAを検査しますので(リキッドバイオプシー)、末梢血20mlのみで検査が可能です。

(※)がんを含む組織:がんの病理検査のために行った生検のサンプルあるいは手術の際に採取した組織サンプルを用います(ホルマリン浸漬時間48時間以内、採取後3年以内が望ましい)。

費用

検査前に「がんゲノム検査外来」を受診していただきます。保険診療としてがん遺伝子パネル検査を行う場合は、通常の保険診療として受診費用がかかります。

自費検査の場合の費用負担は、ガーダント360が約43万円となっています。

(注)この検査が開始された後であっても、検体がこの検査に適する状態にないことが判明した場合、この検査は中止されます。この検査が中止された場合であっても、その時点までに発生した費用を患者さんにご負担いただく必要があります。

検査結果について

検査結果返却までの期間は検査によって異なり、約3週間~5週間となります。ガーダント360は約10日で結果が返却されます。しかしながら、返却された遺伝子変異情報はそのままでは患者さんにお伝えすることはできません。がんゲノム医療に精通した専門家による検討会(エキスパートパネル)で、開示すべき情報や推奨治療・治験などについて検討を行うため1週間程度の時間が必要となります。

当院はがんゲノム医療連携病院として、がんゲノム医療中核拠点病院である京都大学病院と提携しており、中核拠点病院が開催するエキスパートパネルで症例検討を行った後に患者さんに結果を説明します。

ご留意いただきたいこと

がんに関わる遺伝子の変異については、未知の物も多数存在し、本検査を受けていただいても、有用な情報が得られないことがあります。また、がんゲノム検査を行っても、既承認薬がない等の理由で実際に治療ができる患者さんは10~20%程度にとどまります。遺伝子変異に基づいた治験や先進医療は少なく、未承認薬を適応外使用する場合には非常に高額な費用がかかるという問題点があります。

多数の遺伝子を検査するがんゲノム検査では、遺伝性腫瘍に関連する遺伝子変異が見つかる場合があります(二次的所見)。BRCA遺伝子変異に関係する遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC)が有名ですが、それ以外にも該当する遺伝子が存在します。遺伝性腫瘍が疑われる場合、検査結果をどう解釈するか、確定診断のための遺伝子検査を受けるべきか、家族の検査が必要かなど、がんの早期発見や治療法など医学的問題に加えて、検査費用の問題や、家族関係・結婚・出産などの問題を整理し理解するために遺伝カウンセリングが必要です。当院では「家族性腫瘍相談外来」を設置しており、必要に応じて遺伝カウンセラーが対応しています。

がんゲノム検査外来では、単に検査や結果の説明を行うだけでなく、検査のメリット・デメリット、限界などについても時間をかけて丁寧に説明し、患者さんにとってどのような選択肢があるのか、一緒に考えさせていただきます。

がんゲノム検査申し込み方法

本検査をご検討される場合は、下記フロー図をご確認のうえ、「がんゲノム検査外来」をお申し込みください。

がん遺伝子パネル検査<保険適用フロー図>

(※)がんゲノム検査外来は、火曜日午後のみとなっております。

当院を受診されている場合は、主治医に相談してください。

当院を受診されていない場合は、かかりつけ医にご相談の上、かかりつけ医から事前にFAX予約を取ってもらってください。
FAX予約に必要な書類は、「診療情報提供書」、「同意書」、「追加聞き取り項目(保険診療希望者のみ)」です。
当院の地域医療連携センター(FAX:078-302-2251)まで、FAX送信してください。

診療情報提供書
同意書の様式
追加聞き取り項目

2017年11月1日より先端医療センター病院は中央市民病院と統合され、南館として運用されます。それに伴い、先端医療センター病院の総合腫瘍科は中央市民病院腫瘍内科の1グループとして診療を継続することになります。 本館だけでなく南館にも腫瘍内科のベッドが割り当てられており、患者さんの状態や治療の目的に応じて入院病棟が決まります。

入院患者さんにおかれましては、入院中に病棟が替わる(本館内だけでなく本館⇔南館も)可能性がありますことをご了解くださいますようお願いいたします。