遺伝センター( Genome & Genetics Center)のご案内

センター長のご挨拶

近年、がんだけでなく、多くの疾患、病態で遺伝子の変化や遺伝的素因が関与していることが明らかとなり、遺伝子の情報に基づいたがん治療をはじめ、遺伝診療および遺伝カウンセリングは身近な存在となってきています。

遺伝センターは、がんゲノム医療や遺伝診療の体制を一元化し、関係する各診療科との連携を強化していくことを目指し、集学医療部門の1つとして2022年度に設置されました。

『がんゲノム検査外来』では、診療科の枠を超えてがんゲノム医療を実践するため、がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)を実施しています。「遺伝カウンセリング外来」では、遺伝性腫瘍に限らず幅広い遺伝性疾患に対応しております。 また、遺伝学的検査に関わるご相談も可能です。『周産期遺伝相談外来』では、非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)についての遺伝カウンセリング及び検査を実施しています。

患者さんにわかりやすく説明を行い、少しでも安心して検査や診療を受けていただけるよう努めてまいります。

                                                          遺伝センター長
安井久晃

                                                             

遺伝とは

血のつながった家族ってみんな違うのに、みんなどこか似ているのはどうしてでしょう?
「遺伝子」は体を作る設計図の役割を果たしています。父親と母親から1つずつ受け継ぐので、私たちは母親にも父親にも似ているところがあります。みんな「遺伝子」を持っていますが、「遺伝子」にはひとりひとり少しの違いがあります。その違いの多くはその人らしさや個性と関係がありますが、なかには“病気のなりやすさ”に関係する違いもあります。

遺伝カウンセリングについて

遺伝カウンセリングはこのような方を対象としています。

遺伝カウンセリングは、「遺伝子が関係する病気や体質」と共に生活していくために必要なことを話し合う場所です。ご病気や遺伝子の検査について、医学的根拠に基づく正しい情報をわかりやすくご説明します。またご自身やご家族一人ひとりの健康管理や治療選択のためのポイントを整理します。心配なことや困っていることがあれば、それを解決するためにはどうしたらよいか一緒に考えます。遺伝について相談したいことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

遺伝センターの特色

がんゲノム検査外来
がんゲノム医療は「がん遺伝子パネル検査」を用いて、がん細胞の遺伝子の変化を調べ、患者さん一人ひとりに適した治療を提案することを目的としています。がん遺伝子パネル検査を受けた患者さんの中には、遺伝性腫瘍に関連する遺伝子の変化が見つかる方がいらっしゃいます。遺伝性腫瘍が疑われる患者さんやご家族の皆さまには、遺伝カウンセリング外来の受診をお勧めしています。

がんと遺伝について
遺伝カウンセリング外来
当院は臨床遺伝専門医、遺伝カウンセラー、遺伝性疾患を扱う診療科の医師、看護師等のメディカルスタッフで、チーム一丸となって遺伝カウンセリングをおこない、分野を問わず遺伝性疾患に関する相談に幅広く対応しています。また遺伝カウンセリングを開始した当初から、遺伝性腫瘍の分野に力を入れてきました。遺伝学的検査の結果が陽性の場合には、今後のリスクに応じた対策を立て、院内の関係診療科と連携してフォローアップを行います。
さらに、リスク低減手術も実施可能な体制を整えております。
周産期遺伝相談外来
当院では妊娠10~14週で単胎もしくは双胎妊娠の妊婦さんにNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)を実施しております。

構成メンバー

がんゲノム検査外来

がんゲノム医療とは

がんの組織などを用いて、がんに関連する多数の遺伝子を同時に調べ(がん遺伝子パネル検査)、遺伝子の変化を明らかにすることにより、一人一人の腫瘍特性や病状に合わせて治療などを行う医療です。特定の遺伝子の変化が、がんの増殖に重要な役割を果たしている場合(ドライバー遺伝子)、その遺伝子の働きを抑える薬剤(分子標的治療薬など)を用いることによって効果が得られる可能性があります。原発臓器に応じた従来の標準治療ではなく、がん細胞の遺伝子の変化に基づいて薬剤を選択することが可能となります。

当院で実施しているがんゲノム検査(がん遺伝子パネル検査)

患者さんの全身状態が検査を受けられる状態かなどを医師が見極めた上で、がんゲノム検査を受けられるかどうか判断します。まずは、ご自分が検査の対象になるかどうか、かかりつけ医にご確認ください。

*このうち1~3割が自己負担額となります
「高額療養費制度」の対象となります

検体の条件

この検査では、遺伝子解析のために、がん組織由来の核酸サンプルが必要です。そのため、がんを含む組織(※)の病理ブロック、またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片をご提供いただきます。

(※)がんを含む組織:がんの病理検査のために行った生検のサンプルあるいは手術の際に採取した組織サンプルを用います(ホルマリン浸漬時間48時間以内、採取後3年以内が望ましい)。

がんゲノム検査の流れ

当院ではがんゲノム検査外来受診から結果説明まで約1~2か月のお時間をいただいております。専門解析機関から返却された遺伝子の情報については、がんゲノム医療に精通した専門家による検討会(エキスパートパネル)で、患者さんに合った治療法や治験があるかどうかを検討し、患者さんに結果を説明します。当院はがんゲノム医療連携病院として、がんゲノム医療中核拠点病院である京都大学病院と提携しております。

ご留意いただきたいこと

がんゲノム医療には、さまざまなメリットだけでなく、デメリットもあります。がんゲノム検査外来では、単に検査や結果の説明を行うだけでなく、検査のメリット・デメリット、限界などについても時間をかけて丁寧に説明し、患者さんにとってどのような選択肢があるのか、一緒に考えさせていただきます。

がんゲノム検査には、以下のような、いくつかの留意点があります。

検体不良の可能性

検査を行っても、検査自体が100%成功するというわけではありません。検体の状態が悪いなどの理由で、検査自体が不成功に終わる可能性があります。

効果のある治療薬が見つからない/保険適用のある治療薬が見つからない可能性

検査を受けることで、今後の治療の選択に役立つ情報を得られる可能性があります。一方で、がんゲノム検査を行っても、既承認薬がない等の理由で実際に治療ができる患者さんは10~20%程度にとどまります。遺伝子の変化に基づいた治験や先進医療は少なく、未承認薬を適応外使用する場合には非常に高額な費用がかかるという問題点があります。

生まれつきの体質(がんになりやすさ)が明らかになる可能性

がんの約1割は、生まれつきがんになりやすい体質が原因とされる、遺伝性腫瘍であることがわかっています。がんゲノム検査では、数%の確率で遺伝性腫瘍に関連する遺伝子の変化が見つかります。

当院では、遺伝性腫瘍が疑われる場合に生じるさまざまな疑問について、遺伝カウンセリング外来で一緒に考える体制を整えております。

C-CATへの情報提供

がんゲノム検査で用いたデータをC-CATに登録することで、薬剤や治験に関する情報など、診療に役立つ情報を得ることができます。また、将来の新しい治療薬の開発に役立てられます。

がんゲノム検査申し込み方法

がんゲノム検査外来は、火曜日午後のみとなっております。

当院を受診されている場合

主治医に相談してください。

当院を受診されていない場合

かかりつけ医にご相談の上、かかりつけ医から事前にFAX予約を取ってもらってください。
FAX予約に必要な書類は、「診療情報提供書」と「追加聞き取り項目」です。当院の地域医療連携センター(FAX:078-302-2251)まで、FAX送信してください。

診療情報提供書
追加聞き取り項目

遺伝カウンセリング外来

遺伝カウンセリング外来について

ご来院の際は、事前の予約をお願いします。相談内容に応じて、保険診療または保険外(自費)診療となります。遺伝カウンセリング当日は当院「南館」2階受付へ直接お越しください。
※個人情報の観点から、来談者のご家族以外の方のご病気の相談については、対応できかねる場合があります。

遺伝カウンセリングを受けられる予定のみなさまへ

遺伝カウンセリングは、「遺伝子が関係する病気や体質」と共に生活していくために必要なことを話し合う場所です。

外来日と費用

曜 日:毎週金曜日

費 用:相談内容に応じて保険診療または保険外(自費)診療となります
    保険外(自費)診療の場合は、以下のとおりです

  1. 初回60分    6,600円(消費税込み)
  2. 2回目以降30分   3,300円(消費税込み)

※検査や他科受診の場合は別途料金が必要です。検査費用は遺伝カウンセリングの中でご案内します。

当日お持ちいただくもの
  • 健康保険証
  • 紹介状

当日は家族歴を差支えない範囲で確認し、家系図を作成します。

留意事項

基本的にはすべての疾患領域に対応しておりますが、親子鑑定などはお受けできません。
予約受付後、お電話で相談内容の確認をさせていただくことがあります。
また、原則として、遺伝カウンセリング前後に当院の担当診療科を受診していただき、
診療方針をご相談いただくことをお勧めしております。

予約方法

遺伝カウンセリング外来の受診は、ご予約が必ず必要です。
すでに病院にかかっている方は主治医を通してFAXにてご予約ください。ご予約時には、FAX予約申込書と診療情報提供書が必要です。

FAX予約申込書はこちら

かかりつけ医療機関がない方(血縁者診断をお考えの方)は、直接以下の担当者にご連絡ください。血縁者診断には、ご家族の遺伝学的検査結果のコピーが必要です。

血縁者診断をご検討のみなさまへ

病院代表:078-302-4321 (受付:平日9:00-17:00)
担  当:浦川、大道、高渕(遺伝カウンセラー)




臨床研究

研究課題名 責任医師 承認月 説明文
BRCA 遺伝学的検査に関するデータベースの作成 林 信孝 2024年3月 PDF

周産期遺伝相談外来

NIPT

最近、産婦人科領域でNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)という出生前に母体血を用いて特定の胎児染色体異常を調べる検査の認識が広がっており、当院でも実施体制を整え基幹施設の認証を取得し、遺伝カウンセリングおよび検査を行っています。

NIPTは、母体血を調べることで赤ちゃんが染色体疾患(21トリソミー・18トリソミー・13トリソミー)をもつ可能性を検査するものです。 NIPTを受けることが選択肢となるのは、これらの染色体疾患の発生頻度が高くなる以下のような場合とされています。

  • 高年齢の妊婦さん
  • 母体血清マーカー検査で、赤ちゃんが染色体数的異常を有する可能性が示唆された場合
  • 染色体数的異常のある赤ちゃんを妊娠した既往がある妊婦さん
  • 両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有していて、赤ちゃんが 13 トリソミーまたは 21 トリソミーとなる可能性が示唆される場合
  • 胎児超音波検査で赤ちゃんが染色体数的異常を有する可能性が示唆された場合

ただし、対象疾患の発生頻度によらず、遺伝カウンセリングを実施しても赤ちゃんの染色体数的異常に対する不安が解消されない妊婦さんについては、十分な情報提供や支援を行った上でご本人の意思決定を尊重させていただきます。

対象者と実施場所

NIPTの対象は妊娠10~14週で単胎もしくは双胎妊娠の妊婦さんです。

遺伝カウンセリングおよび検査については、周産期遺伝相談外来で行っております。

予約方法

周産期遺伝相談外来の予約やご案内は当院産科外来で行っております。

当院産科外来へ通院中の方でNIPTを希望される場合は、主治医にご相談ください。
他院かかりつけで当院でのNIPTを希望される方は、かかりつけの産婦人科医にご相談いただき、
 当院産科外来の受診予約をお取りください。

お知らせ

アクセス

当院へのアクセスについては、こちらをご覧ください。

当院は本館と南館があります。遺伝カウンセリングは南館2階で行っております。 「医療センター」駅改札を出て左方向に直進すると、南館2階入口があります。

南館2階入口にある受付で来院手続きを行ってください。

リンク

遺伝に関する学会

日本人類遺伝学会

日本遺伝カウンセリング学会

日本遺伝性腫瘍学会

がんゲノム検査外来

「がん」と「遺伝」Q&A キホンのキ

がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査

がん情報サービス

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がん遺伝子パネル検査のおはなし

周産期遺伝相談外来

一緒に考えよう、お腹の赤ちゃんの検査