泌尿器科の特徴と歴史、取り扱う臓器・疾患

神戸市立医療センター中央市民病院
泌尿器科部長
山﨑 俊成

診療業務のあらまし

高齢化社会に伴い、泌尿器科疾患は年々増加傾向にあり、特に前立腺疾患,悪性疾患が多く見られます。癌の進行症例でも根治を目指した拡大手術を行う一方で、より低侵襲の腹腔鏡手術を積極的に導入しております。腎癌では4~5cmの突出したものであれば、ロボット支援の腹腔鏡で部分切除を行います。それより大きなものや複雑なものは開放手術での部分切除、あるいは腹腔鏡での腎摘除術を行います。前立腺癌では、平成18年に腹腔鏡手術の施設認定を取得、平成19年には前立腺癌の密封小線源治療を導入し、さらに平成26年1月よりda Vinciによるロボット支援前立腺全摘除術を導入しました。また、前立腺肥大症に対するレーザー核出術(HoLEP)、バイポーラー核出術(TUEB)、尿失禁・性器脱に対する手術なども多く手がけております。生体腎移植も年4~5例あり、夫婦間移植も行っております。ABO不適合移植ではリツキサン投与によって脾臓摘出を回避します。ドナー腎摘は腹腔鏡手術により行われ健康な方のQOLをなるべく損なわないよう心がけております。

特徴

当科では毎朝ミーティングを行って日々変化する患者さんの状態を全員が把握できるよう努力しております。また、疾患ごとの治療方針をコンセンサスミーティングで統一し、どの医師が担当しても最新・最良の診断・治療を受けていただけるようにしております。当院の基本理念のひとつに、「24時間体制で救急医療を実践する」とあり、当科でも終日当直あるいは待機にて救急疾患に対応しております。手術の画像、病理をレビューすることにより、スキルの向上と根治性の向上に役立てています。さらに腹腔鏡手術には高度な技術が要求されるため、経験の浅いスタッフは日々ドライボックスで練習するほか、生体での腹腔鏡手術の習得のため、学会認定の泌尿器科腹腔鏡技術認定医による技術指導のもと、大型動物での実習を行っています。da Vinciによるロボット支援手術は年間100件を超え、全国でも有数の施設となっています。またメーカーの手術見学指定施設にもなる見込みで全国からda Vinciの取り扱い資格を取得希望する医師が集まってくるものと予測しております。

神戸市立中央市民病院は、昭和56年に布引から現在のポートアイランドに新築移転しました。泌尿器科は移転当時、松尾光雄部長(現神戸市健康保険組合健康管理センター)のもと診療が行われていました。平成8年に竹内秀雄部長(現公立豊岡病院院長)が着任され、腎癌に対する開放腎部分切除術、腹腔鏡手術の導入など手術療法の改良に尽力されました。平成14年に川喜田睦司が着任して現在に至っております。当科は京都大学香川大学獨協医科大学泌尿器科との関連が深く、現在のスタッフはこの3大学の出身ですが、他大学出身で当院において研修をして専門医をめざす専攻医も受け入れています。

泌尿器科(ひにょうきか)は尿路および性器を扱う診療科であります。尿路とは腎臓、尿管、膀胱、尿道などであり、性器は精巣(睾丸)、精巣上体(副睾丸)、精管、前立腺、精嚢、陰茎など男性の生殖器と、腟などの女性の生殖器を一部扱います。腎臓の上にあってホルモンを分泌している副腎も扱います。

取り扱う臓器・疾患

取り扱う病気は、これらの臓器の腫瘍(副腎腫瘍、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌)、炎症(腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、尿道炎)、尿路結石、前立腺肥大症、機能障害(神経因性膀胱、性機能障害、男性不妊、男性更年期、腎不全)、外傷などです。腎移植も手がけています。また男性思春期にかかわる様々な悩みに対応するための専門外来も設置しています。これらの病気に対して、最新の知識、技術を取り入れ、診断・治療をしています。

診療内容・特長

腹腔鏡手術

腹部に小さな穴を数個あけ、内視鏡を挿入し、炭酸ガスで腹部内を充満させてテレビモニターを見ながら操作手術する方法で、開腹手術に比べ痛みが少なく、術後の回復も早く早期退院が可能です。内視鏡で拡大して見えるため繊細な剥離が可能で、腹部内圧が高いことと合わせて出血量が非常に少ないのが利点のひとつです。副腎腫瘍に対する副腎摘除術、無機能腎や腎癌に対する腎摘除術、腎癌の腫瘍部分だけを切除する腎部分切除術、腎盂尿管癌に対する腎尿管全摘除術、腎盂の出口が細くなる腎盂尿管移行部狭窄症に対する腎盂形成術、小児で精巣が陰嚢内に下降していない状態の停留精巣に対する精巣固定術など多くの適応があります。前立腺癌は平成18年4月より保健適応となり当院は平成18年8月より施設認定をクリアして保険診療を開始しました。これまで1600件以上の腹腔鏡手術を行い、重篤な合併症はありません。ここ数年では年間200件ほどになっております。

腎癌に対する腎部分切除術

腎臓は左右ふたつあり、通常は片方だけでも充分機能は果たせます。しかし、残った腎臓に癌が出来る可能性があります。他の原因で腎臓の働きが悪くなって腎不全になるかもしれません。腎癌が比較的小さくて表面に近い場合には、腫瘍だけを切除して残りの正常部分を温存することが可能です。腎の血管を一時遮断して、出血を最小限にして腫瘍を切除し、切除断面を縫い合わせます。腹腔鏡手術で行えば創が小さくてすみます。当科ではこれまでに260例以上の腹腔鏡下腎部分切除術を行い、ロボット手術も40例を超えました。

診療実績

診療科別統計

数字で見る 中央病院 (病院指標)

主な疾患・治療法

検査

前立腺針生検は、仙骨麻酔下に、初回では経直腸12か所、2回目以上では経直腸+会陰の24か所を行っております。基本的にはデイサージェリーの日帰りで行います。抗凝固薬・抗血小板薬は中止をせず内服継続のままで行います。生検前にはMRIを施行しております。平成26年度には220件 (初回177、再33)あり64%に癌、平成27年度には245件(初回207、再38)あり56%に癌を検出しました。

腎癌とはどんな病気でしょう?

腎臓は、背中に左右1 個づつある握り拳大 の臓器です。その主な働きは尿を作る事です。尿を作ることによって体液のバランスをとります。そのほか、血圧を保つホルモンや、血液をつくるホルモンも作り出しています。その腎臓に含まれる細胞が勝手に増殖するとCTなどのレントゲン検査で異常に映り「腎腫瘍」と診断されます。それには良性腫瘍と、悪性腫瘍すなわち「がん」があります。残念ながら腎臓にできる腫瘍の大半は悪性ですので、「腎腫瘍」と診断された場合は「がん」を念頭に置いた治療計画が必要になります。

無症状で偶然見つかる腎癌が増えています

腎癌にはどのような症状があるのでしょうか?腎臓は背中の深い所にある臓器なので「がん」ができても進行するまでなかなか症状が出ません。以前は、「がん」の進行に伴った症状(尿に血が混じったり、お腹に違和感があったり、倦怠感や微熱が続くといった症状)で見つかっていましたが、最近では人間ドックや癌検診などで行われている超音波検査やCT で偶然発見される患者さんが増えてきています。

腎癌と診断されたなら

画像検査で腎癌が疑われたなら、「がん」の広がりを調べる検査が必要になります。腎癌が進行すると肺、骨、リンパ節などに転移をおこします。そのため超音波検査やCT、MRIなどで腎臓局所の広がりを調べると同時に、CTや骨シンチ検査などで転移がないかどうかを総合的に調べるのです。また、どうしても良性か悪性か診断のつかないとき針で組織の一部をとって顕微鏡で調べる腎腫瘍生検という検査を行います。

腎癌の治療は手術が基本です

腎癌の治療にはどういうものがあるのでしょうか?一般的に「がん」の治療というと思い浮かぶのは「手術」「放射線」「抗癌剤」だと思います。腎臓に「がん」が限局しておれば、「手術」で摘出することで完全に治ることが期待できます。では転移をおこしたりして進行していればどうでしょうか?近年腎癌の発癌に関する遺伝子学的ならびに分子生物学的解明が進み、これまでインターフェロン、インターロイキン2といった免疫療法しか薬物療法がなかったものが、分子標的薬という薬が登場し進行した腎癌でも成長を抑えたり、ときには腫瘍が縮小したりします。さらに2016年には免疫チェックポイント阻害薬も登場し腎癌の治療法は幅が広がりました。ただ、やはり治療の主体は手術で、転移があっても腎摘をすることがありますし、単発の転移巣であれば摘除することもあります。

より負担の少ない手術法が可能になってきました

腎癌に対する「手術」にはどういうものがあるでしょうか?以前はおなかや背中に15センチから20センチの傷をつけ、そこから癌のある腎臓ごと摘出することが基本でした。今は違います。皆さんは「腹腔鏡」による手術について聞かれたことはありませんか?体に何カ所か小さな穴を開けカメラで体内を覗きながら遠隔操作で手術をすすめる方法です。腎臓は体の奥深くにあるためカメラで拡大しながら手術をする「腹腔鏡」による手術に最適の臓器です。今では「腹腔鏡」により摘出する腹腔鏡下根治的腎摘出術が中心になっています。術中の出血や術後の痛みの軽減、早期の回復など「腹腔鏡」による手術は、患者さんに大きな恩恵をもたらしています。さらに、当院では、手術で犠牲になる腎臓の機能を最小限に抑えることを目的として「がん」の部分だけを摘出する腎部分切除術も積極的に行っています。これもロボットを含めた「腹腔鏡」で行うことができます。腹腔鏡下腎部分切除術は開腹手術と比較して負担少なく、病巣のみを摘出し腎臓の機能不全を最小限に抑える理想的な手術です。

腎癌(腎腫瘍)と診断されたならご相談ください

腎癌について簡単に解説しました。腎臓に腫瘍があるといわれ心配な方、すでに腎癌と診断されたが治療法にお悩みの方は是非ともご相談ください。あなたに最適な診断、治療をご相談させて頂きます。

副腎の腫瘍はその多くが良性ですが、特に大きなサイズ(5cm以上)のものでは癌(副腎癌)の可能性が高くなります。副腎の働きの特性から、副腎腫瘍ではホルモンの分泌異常がしばしば起こり、コルチゾールの過剰分泌による症状はクッシング症候群、アルドステロンの過剰分泌による症状は原発性アルドステロン症、そしてアドレナリンの過剰をきたす腫瘍は褐色細胞腫、と呼ばれています。

副腎とは?

副腎はみぞおちの高さの背中側にあり、ちょうど腎臓の上方に接するように存在します。約3cm大の黄色い、薄っぺらい臓器ですが、その働きは重要で、さまざまなホルモンを分泌し、体のバランスを一定に保つ(恒常性)働きや血圧の調整を行っています。副腎から分泌される代表的なホルモンとして、外側の皮質と呼ばれる部位からはコルチゾール(いわゆるステロイド)、アルドステロンが、内側の髄質と呼ばれる部位からはアドレナリンというホルモンが分泌されています。

副腎腫瘍とはどんな病気でしょう?

副腎の腫瘍はその多くが良性ですが、特に大きなサイズ(5cm以上)のものでは癌(副腎癌)の可能性が高くなります。副腎の働きの特性から、副腎腫瘍ではホルモンの分泌異常がしばしば起こり、コルチゾールの過剰分泌による症状はクッシング症候群、アルドステロンの過剰分泌による症状は原発性アルドステロン症、そしてアドレナリンの過剰をきたす腫瘍は褐色細胞腫、と呼ばれています。分泌されるホルモンにより高血圧や糖尿病など多彩な症状を示し、腫瘍の治療により、それらの症状が軽快することもしばしばあります。一方、人間ドックや他の疾患の検査中に偶然発見される副腎腫瘍も増加しています。これらの多くはホルモンの異常を伴わない非機能性腫瘍であり、小さなものであれば定期的に画像検査(CTなど)で経過を見るだけでよいのですが、念のため一度はホルモン分泌の異常がないか、検査を受ける方が良いでしょう。

副腎腫瘍の治療は腹腔鏡手術が主流です

以前は腎臓の手術と同様、横腹に約15cmの皮膚切開を置く、開放手術で副腎の摘出を行っていましたが、最近は内視鏡手術(腹腔鏡手術)で治療することが多くなりました。腹腔鏡手術は腹部に3~4箇所の小さな穴を開け、そこから内視鏡や鉗子を入れて、副腎の摘出を行います。傷が小さいため、開放手術に比べると術後の回復が格段に早く、翌日には歩行、食事が可能となります。当院では、この方法での手術を年間約15件、行っており、全例大きな合併症なく経過しています。

膀胱の腫瘍は粘膜の移行上皮から発生し、その殆どは悪性(移行上皮癌)です。1年間に10万人中約8人に発症し、50歳以上の男性に多い病気です。喫煙との関係や、化学薬品を使う職業との関係が指摘されています。

膀胱癌

膀胱は下腹部にある臓器で、腎臓から流れてくる尿を貯め、必要に応じて収縮し尿を出す働きを持っています。内面は粘膜で覆われ、200-400mlぐらいで尿意を感じます。外側には収縮して尿を排出させる筋肉の層があります。

膀胱癌とはどんな病気?

膀胱の腫瘍は粘膜の移行上皮から発生し、その殆どは悪性(移行上皮癌)です。1年間に10万人中約8人に発症し、50歳以上の男性に多い病気です。喫煙との関係や、化学薬品を使う職業との関係が指摘されています。

膀胱癌の症状は、痛みのない血尿です

血尿(尿に血が混じる)を契機に発見されることが多く、特に中高年の方の痛み・頻尿を伴わない血尿(無症候性血尿)の場合には、この病気を疑って検査を受けることが勧められます。尿検査や超音波検査の他、膀胱の内視鏡(膀胱鏡)を行って診断し、他の臓器への転移や周囲の組織への広がりを調べるため、CTやMRI、骨シンチグラフィーを行います。

膀胱癌はいくつかのタイプに分けられます

筋層非浸潤性腫瘍

細胞の悪性度も低く、根も浅いことが多いため、内視鏡手術の良い適応となります。

筋層浸潤性腫瘍

粘膜から深い筋肉層あるいは膀胱の壁を越えて広がっている腫瘍で、内視鏡では完全な切除は不可能です。根治的な全摘手術や抗がん剤での治療が必要になります。

上皮内癌

粘膜内の癌で、内視鏡ではほぼ正常か粘膜が発赤した様な所見となります。細胞の悪性度は高く、約2割の人が浸潤性腫瘍に進行します。BCG膀胱内注入療法のよい適応となりますが、抵抗性のものは早いうちに積極的に治療することが必要になります。

膀胱癌の治療はタイプに応じて行われます
  • 膀胱癌の悪性度と浸潤度を診断するため、殆どがまず内視鏡手術での治療を行います。尿道より内視鏡を挿入し、電気メスで病変を削り取ります。下半身の麻酔が必要ですが、体にとっての負担は少なく、追加治療がなければ入院も3-5日間です。ただ、筋層非浸潤性腫瘍の約半数の人が術後数年間の間に膀胱内に再発を起こすため、退院後は内視鏡による定期的な観察を行い、再発が見られた場合には大きくならないうちに適切な治療を行う必要があります。術後の再発を最小限にするため、手術後定期的に膀胱内に抗がん剤の注入を行うこともあります。
  • 筋層浸潤性腫瘍は内視鏡手術での根治が難しいため、手術による根治的な膀胱全摘除が必要になります。男性では前立腺もとります。尿道も摘出することがあります。女性では膀胱と子宮、膣の一部をあわせて切除することがあります。膀胱を切除すると、尿の出口がなくなるため、新たに尿の通り道を作らないといけません(尿路変更術)。手術は開腹手術や低侵襲の腹腔鏡手術があります。また250万円程度の自費になりますがロボット支援手術も行っております。浸潤やリンパ節転移があった場合には手術前後に抗癌剤治療を行います。
  • 上皮内癌は病変が膀胱粘膜に広く分布しており、内視鏡での治療はやはり困難です。膀胱内に結核菌(BCG)を注入して、炎症を起こし、間接的に腫瘍を治すBCG注入療法が効果的で、当院でも積極的にこの治療を行っています。
尿路変向術にはどんなものがあるの?

手術で膀胱がとられた後、尿の通り道を再建するにはいくつかの方法があります。当院で現在行っている方法として、

  • 尿管皮膚ろう 左右の尿管をお腹の前面に誘導して固定し、出てくる尿を集尿袋で受けます。
  • 回腸導管 小腸を約15cm遊離して、左右の尿管をつなぎ、小腸の端をお腹に誘導する方法で、やはり集尿袋が必要です。
  • 回腸新膀胱 小腸で袋を作り、それを膀胱に見立てて尿道につなげます。お腹に集尿袋をつける必要がなく自力で排尿ができ、もっとも自然な方法ですが、上手く排尿できなかったり、尿が漏れることもあります。
化学療法は効くの?

浸潤性腫瘍でも、特に病変が進行していて、手術のみでは根治が難しい場合、当院では抗がん剤での化学療法を積極的に行っています。

完全に治すことができる早期の前立腺癌には残念ながら症状がありません。「良性」の病気である前立腺肥大症を合併しておれば排尿困難や頻尿の症状がでることもあります。いずれにせよ、前立腺癌の早期発見には無症状であっても積極的に検査を受ける必要があります。

前立腺癌

限局性前立腺癌には、手術のほかに小線源治療や外照射治療を行っています。密封小線源永久刺入療法はPSAが低く悪性度の低い比較的おとなしい前立腺癌の治療法として欧米で実績のある方法です。放射線障害がおこりにくい、性機能が維持されやすく、尿失禁がない、体への負担が少ない、入院・治療期間が短い(2泊3日)などのメリットがあります。外照射治療には、IMRTにより高容量の放射線照射が可能になりました。放射線治療科と協力して院内あるいは先端医療センターで治療を行います。また全摘後のPSA再発にも外照射を薦めております。

前立腺癌は増えつづけている

前立腺は、膀胱のすぐ下、ペニスの付け根付近にある「栗の実」大の臓器です。精液の成分を作るのが役目ですので歳をとるにつれて必要がなくなります。その必要なくなった前立腺にも悪性の「がん」ができます。それが前立腺癌です。アメリカやヨーロッパでは男性6人に1人がなるほどで、数あるがんの中でも一番多いがんといわれています。日本でも食生活の変化などに伴い年々増加してきており、この10年で2倍以上、この先10年でさらに2倍になるといわれています。2015年には男性に発生する癌のトップになりました。前立腺癌はすでに日本でも非常に「身近」ながんといえるでしょう。

前立腺癌は早期発見が大切です

前立腺癌にはどのような症状があるのでしょうか?完全に治すことができる早期の前立腺癌には残念ながら症状がありません。「良性」の病気である前立腺肥大症を合併しておれば排尿困難や頻尿の症状がでることもあります。いずれにせよ、前立腺癌の早期発見には無症状であっても積極的に検査を受ける必要があります。さいわい「PSA検査」という血液検査で前立腺癌の可能性のある患者さんは絞られます。最近では市町村の健康診断、人間ドックなどでも「PSA検査」が取り入れられているところがありますので、是非ともうけてみてください。そのような機会のない50歳以上の男性はかかりつけのドクターにお願いすれば検査してくれると思います。もちろん当院を受診して頂ければ「PSA検査」を受けることができます。PSA検査値が高ければさらに精密検査が必要です。

前立腺癌のための精密検査とは

PSA検査値が高いひとの3人に1人で前立腺癌が見つかるといわれています。それを調べるためには前立腺生検という検査が必要になってきます。おしりのあたりから注射針のような器械で前立腺の組織の一部を直接取り、それを顕微鏡で詳しく調べる検査です。当院では原則日帰りで行っており、痛みが少ないように十分に麻酔を行ってから検査しますのでご安心ください。また診断を補足する検査としてMRI検査という画像検査があります。当院では先端医療センターと提携し生検前にMRI検査を行っています。

前立腺癌と診断されたなら

前立腺生検検査で前立腺癌と診断されたなら、がんの広がりを調べる検査が必要になります。前立腺癌は進行とともに「骨」と「リンパ節」に転移することが知られており、骨シンチ、CT検査などでそのおそれがないかどうかを確認するのです。転移のない段階なら大半は完全に治すことができます。治療法はたくさんありますので、じっくりと相談して方針を決めていきましょう。

前立腺癌の治療法はたくさんあります

前立腺癌を完全に治す目的で行う治療法、がんの進行を抑える目的で行う治療法など前立腺癌の治療法もたくさんあります。ひとつずつ簡単に解説していきましょう。

手術療法

根治的前立腺全摘除術と呼ばれます。文字通りがんを含んだ前立腺をすべて摘出し根治(完全に治ること)を目的とした手術です。がんの広がりによっては神経を合併切除するため、勃起機能に障害がでます。皆さんが心配なさる尿失禁は手術後しばらくの間だけの場合がほとんどです。物理的にがん病巣を体外に取り出すため確実な治療法のひとつといえます。2006年から厚生労働省の認定した施設においては、カメラで手術をする、より傷の小さい腹腔鏡下前立腺全摘除術を施行することが可能となり、2012年からロボット手術も保険収載され当院でも年間80人以上の方が保険診療で手術を受けておられます。

放射線療法

放射線療法も前立腺癌を完全に治す目的で行う治療のひとつです。放射線を出す機械の性能により治療成績が大きく左右されますが、最新式の機械を用いれば手術に匹敵するほどの成績も報告されています。当院では先端医療センターと提携しあわせて2台の治療装置でIMRTを行っておりますのでご相談ください。また小線源療法(ブラキセラピー)という前立腺内に放射線源を埋め込む治療法も当院で行っております。

内分泌療法

ホルモン療法とも呼ばれ、一般的には、リンパ節や骨などに転移のあるがんの進行を抑えることを目的とした治療法で完全に治ることを目的とはしておりません。再発リスクの高いがんに対しては放射線療法と併用して行います。また、高齢の場合には内分泌療法でいわゆる「天寿」までがんを抑えることを目的として施行する場合があります。完全に治すことを目的とした治療のあと残念ながらがんが再発した場合も内分泌療法の出番です。精巣から男性ホルモン(テストステロン)を分泌するよう命令する脳下垂体を抑える注射剤と男性ホルモンが前立腺癌に作用しないようにする内服薬があります。

去勢抵抗性前立腺癌の治療法

内分泌療法で抑えきれなくなった前立腺癌を去勢抵抗性前立腺癌と呼びます。これに対しては、内分泌療法は継続のまま、新規抗男性ホルモン剤、抗癌剤、さらに骨転移に作用するラジウムの注射があります。

治療に迷ったならご相談ください

前立腺癌について簡単に解説しました。PSA検査値が高いといわれ心配な方、すでに前立腺癌と診断されたが治療法にお悩みの方は是非ともご相談ください。あなたに最適な診断、治療をご相談させて頂きます。

放射線治療は焦点合わせが重要です

放射線治療を行う場合、重要なのは放射線を病変の組織に正確かつ高用量に照射する事です。周辺の正常臓器の中には、放射線が多くあたると組織が死んでしまうものもあり、治療は周辺臓器への影響が最小限になるよう調節しなければなりません。

CTリニアックによって直腸への被爆が最小限になります

放射線が正確に病変に当たるよう、以前は通常のCTやレントゲン撮影を用いて位置決めをおこなっていましたが、いったん位置を決めても、その後治療室に移動する間に病変がずれてしまうという問題がありました。その課題を克服するため、CTと放射線治療装置を一体とし、CTで決めた位置がなるべくずれないよう調整する方法が開発されました。それがCTリニアックです。前立腺癌の放射線治療にCTリニアックを用いることで、前立腺の数mm後ろにある、直腸への被爆を最小限にすることができ、効果的に高用量の放射線を前立腺に照射することが出来るようになります。また治療による直腸出血や肛門の痛みなどの合併症を減らすことも可能となりました。

CTリニアックの治療は先端医療センターで行います

当院は同じ神戸市関連の施設である、先端医療センターと共同して、このCTリニアックによる前立腺の放射線治療を積極的に行っています。

放射線治療を行う場合、重要なのは放射線を病変の組織に正確かつ高用量に照射する事です。周辺の正常臓器の中には、放射線が多くあたると組織が死んでしまうものもあり、治療は周辺臓器への影響が最小限になるよう調節しなければなりません。

前立腺癌永久挿入密封小線源治療とは

ヨード125シード線源による前立腺がんの放射線治療です。比較的早期の前立腺がんに対する治療法として欧米では実績のあるものです。日本では平成15年9月から開始され、平成18年4月に保険適応されました。平成25年6月現在では全国114カ所の医療機関で実施されております。兵庫県では、当院と神戸大学、兵庫医大に導入されています。一般に前立腺内にとどまっているがんが適応となります。局所で進行しているものや転移のあるものでは適応となりません。また前立腺のサイズが大きい場合にもできないことがあります。欧米では、PSAが10未満で悪性度の低い、いわゆる低リスク群において5年間再発しない率が80~90%と、前立腺全摘除術とほぼ同等の治療成績が示されています。

埋め込む位置は、あらかじめコンピュータを用いて、尿道や直腸などの他の臓器への影響が最小で治療効果が高い場所を選びます。大きさ0.8 x 4.5 mmのシード線源を、会陰から刺した針の中を通して前立腺内に50~100個挿入します。全身麻酔あるいは腰椎麻酔で行われ2~3時間の小手術です。泌尿器科医と放射線治療医が協力して治療にあたります。線源であるヨード125はガンマ線という放射線を出しますが2ヶ月でその出力は半分になり、1年間にわたりがん病巣を照射します。2泊3日の入院治療ですが管理区域として隔離するため個室になり個室料金が必要です。ヨウ素125のエネルギーが低いため帰宅後は周囲の方への影響はそれ程気にしなくてもよいのですが、妊婦や乳幼児には一定期間配慮が必要になります。1年以内は放射線が出ているため、何らかの理由で亡くなった場合は解剖して前立腺を摘出することが法律で義務付けられています。

合併症はとくに重篤なものはありません。前立腺が一時的に腫れるため尿が出にくくなることがありますが、全摘後のような尿失禁を来すことはありません。また手術や外照射による放射線治療に比べ性機能への影響が少ないといわれています。ときに線源が脱落してきて尿に出てくることがあります。手で直接触れずにスプーンなどで拾って専用の容器に入れて病院へ持参します。

手術はどうも気が進まないとか、外照射のため2ヶ月にわたり長期間通院できないといわれる方に是非お勧めします。とくに比較的若い方で男性機能をできるだけ温存したいと思っておられる方にはよい適応と存じます。詳しくは当院泌尿器科外来までお尋ねください。

シード線源とは

大きさ約1 x 5 mm のシード線源を50~100個ほど挿入します。挿入された線源からは約半年間にわたり放射線を放出し癌病巣を照射します。陰嚢と肛門の間から、X線や超音波を見ながらシード線源の挿入を行ないますが、麻酔により疼痛なく行うことができます。

この治療の適応となるのは

遠隔転移や周囲組織への浸潤がない場合に限ります。長時間の手術に不安を感じる方、外照射に長期間通院できない方、比較的若年で勃起機能をできるだけ温存したいと言われる方にはよい適応と思われます。

適応にならないのは

もともと浸潤や転移がありホルモン療法を行った後に画像上それが消失したとしても、この治療の適応にはなりません。がんの悪性度が高い、PSA値が10以上、などの方は小線源療法による治療では不十分であることから適応外となる場合があります。ただ、外照射との併用で適応になる場合がありますのでご相談ください。

前立腺体積が著しく大きい場合や、以前に経尿道的前立腺切除術を受けている方も適応外とさせていただいています。

治療の長所は

放射線障害がおこりにくい。

体外から放射線を照射する外照射治療と比較すると、直腸や膀胱など前立腺周囲にある臓器への影響は少なくなります。

性機能が維持されやすく、尿失禁は起こりにくい。

放射線外照射や手術と比べると性機能が維持されやすく、尿失禁が起こりにくい治療です。

体への負担が少ない。

麻酔をかける必要はありますが、創はほとんどつかず治療終了後しばらくして歩行や食事も可能になります。

入院・治療期間が短い。

当院では2泊3日の入院で行っています。

治療の短所は

合併症には治療早期と晩期に分かれます。

  1. 早期(6ヶ月以内)に生ずる合併症には、排尿困難、頻尿、尿意切迫感、残尿感、排尿痛、前立腺炎などがあります。これらの副作用が認められた場合、炎症を抑えるお薬や尿道を拡張するお薬で症状を緩和します。その他、血尿、射精時痛や血精液症(精液に血がまじる)などは通常自然に軽快します。
  2. 晩期合併症(6ヶ月以上)としては直腸炎・直腸障害、尿道狭窄、勃起障害などがあります。直腸炎、直腸障害:直腸に放射線による炎症がおこり、排便時の痛みや出血、ひどいときには潰瘍や膿瘍ができたりします。症状が強い場合、一時的な人工肛門の造設が必要になることもありますが、ごくまれであり、多くは抗炎症剤の使用でなおります。また、放射線による尿道狭窄を生じる場合があります。内服治療が無効な場合には内視鏡的な尿道切開術が必要となる場合もあります。勃起障害は他の治療と比べると起こりにくいです。勃起障害が出現した場合には、勃起を補助する薬剤の内服をお勧めする場合があります。ただし、内服薬を用いても改善しない場合もあります。
治療成績は

全摘手術や外照射療法とほぼ同等とされています。しかし、癌細胞の中には放射線を照射しても死滅しないものがある可能性があり、小線源療法による治癒率は現時点では手術を超えるものではないと考えられています。日本ではまだ歴史が浅く、長期的な成績は出ておりません。

初回外来受診時に必要なもの
  1. 紹介状
  2. 生検後であれば病理プレパラート
  3. 画像診断資料(施行してある場合)

*すべてがそろっていない場合でもご相談に応じます

退院後の安全管理について

線源が尿道へ脱落して排尿時に尿といっしょにでてくることがあります。線源が拾えるようでしたら直接手で触れず、スプーンなどですくって所定の容器にいれて次の外来受診時に持参してください。容器は治療後にお渡しします。治療後体外にでる放射線の量はごく少量でほとんど問題になることはありませんが、あなたの身近な人々との距離や時間について多少の注意が必要な場合があります。退院時に担当医から指導いたします。

治療後1年以内の死亡について(重要)

不慮の事故など、治療後1年以内に患者様がお亡くなりになった場合、前立腺を含めて線源を取り除くことが法律で義務付けられています。このことはご家族にも十分知っておいて頂くことが重要です。

費用は

3割負担の方の場合で約40-50万円です。2泊3日の入院にかかる患者負担の総額です。差額個室料金(市内居住:16,200円、市外居住:21,060円/日)を含みます。

(参考)保険請求点数は100,000-120,000点(手技料、線源費用ふくむ)です。

連絡先、お問い合わせ 

神戸市立医療センター中央市民病院 泌尿器科外来
〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-1-1
TEL:078-302-4321(代表)
FAX:078-302-7537

前立腺肥大症とはどんな病気?

男性では50歳を過ぎる頃から前立腺が大きくなりはじめます。すなわち男性の老化現象の1つと言えます。肥大は前立腺の内腺(尿の通り道に近い部分)から起こり尿道を圧迫して、尿の勢いの低下、残尿感、頻尿、尿漏を起こし、ひどい場合は尿が出ないこともあります。

前立腺肥大症の症状は?

病状の悪化にともなって第1期→第2期→第3期と進んでいきます。

第1期

夜間、頻繁にトイレに行くようになります(夜間頻尿期)。

第2期

残尿が多くなり、いきんでも全部でないようになります(残尿期)。

第3期

残尿が増大し、失禁を起こすようになります。

前立腺肥大症ではどんな検査をするの?

直腸診

おしりの穴から指を入れて前立腺の大きさや硬さを調べます。

エコー

お腹からエコーを当てて前立腺の体積を測定します。

血液検査

血中PSAを測定し、前立腺癌の可能性を調べます。

尿流量、残尿測定

検査用の便器に向かって排尿して頂きおしっこの勢いを調べます。その後エコーで残尿量を調べます。

問診表・排尿日誌

現在の症状について選択形式の問診表に答えて頂きます。また1日の排尿回数と排尿量を自宅で計測して頂きます。

Pressure flow study(プレッシャー・フロー・スタディー)

前立腺の体積がそれほど大きくない割に排尿症状が強い場合など、上に挙げた検査だけでは肥大症が原因かどうかわからない場合に行います。膀胱と肛門に圧センサーを留置した状態で膀胱内に水を入れ、まず膀胱の膨らみ具合を調べます。次に排尿してもらい、その時の膀胱の収縮力や尿の勢いを計算します。

排泄性尿路造影

排尿障害が強い場合や長期にわたる場合、前立腺肥大が上部尿路(腎臓、尿管)に悪い影響を及ぼしていることがあります。それが疑われる場合は、血中に点滴で造影剤を流し、尿路に排泄される様子をレントゲンで確かめます。

膀胱鏡

尿道や膀胱頸部の狭窄が疑われる場合は、内視鏡でそれらを確かめます。

前立腺肥大症の治療は?

薬物療法

前立腺肥大によって狭くなった尿道を広げる薬を飲んで頂きます。また前立腺を小さくする薬もあります。

手術療法

薬では良くならない場合に行います。患者さんの状態や前立腺の体積などによって適切な術式を選択します。

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)

従来からある方法で、腰椎麻酔下に尿道から内視鏡を入れ、肥大した前立腺を電気で削ります。前立腺の体積がそれ程大きくない場合や全身麻酔ができない場合に有効です。入院期間は4日から約1週間です。2006年より灌流液による電解質異常を起こしにくい内視鏡(TURis)も導入されています。ただ1回の手術で取りきれる量に限度があるため、前立腺体積が大きい場合は充分な効果が得られない可能性があります。

レーザーを用いた経尿道的前立腺切除術(HoLEP)

2004年から始まった比較的新しい治療法で、TUR-Pとの違いは全身麻酔で行う点と前立腺をレーザーで削る点です。レーザーを用いることで出血が少なく、1回の手術でたくさんの前立腺を取り除くことが可能です。入院期間もTUR-Pより短くなりました。当初は術後、尿失禁で悩まされることが多かったですが、それも徐々に改善してきています。HoLEPと同じ方法ですが、バイポーラー電気メスを使用したバイポーラー前立腺核出術(TUEB)も当院で行っております。

HoLEPとはどんな手術?

HoLEPは2004年より当科で行っている比較的新しい前立腺肥大症の手術方法です。全身麻酔下に内視鏡を尿道から挿入し、高出力のレーザー(ホルミウム・ヤグレーザー)で肥大した組織を切除します。HoLEPと同じ方法ですが、バイポーラー電気メスを使用したバイポーラー前立腺核出術(TUEB)も当院で行っております。従来から行っている手術(TUR-P)と比べて次のような利点があります。

  • 高出力レーザーを用いることで出血が少ない
  • 1回の手術で大きな前立腺の切除が可能
  • 手術時の灌流液による合併症(TUR症候群)の心配がない
  • 入院期間が短い
お腹を切ることなく、大きな前立腺を切除します

肥大した内腺をくりぬく

前立腺の組織は内腺と外腺に分けられます。そのうち前立腺肥大症で肥大するのは内腺で、徐々に尿の通り道を狭くしていきます。HoLEP はレーザーで内腺と外腺との境目に切り込み、内腺のみを大きくくりぬきます。核出された組織は一度、膀胱内に移動させます。

切除片を細切しながら排出

膀胱内に移動させた切除片はモルセレーターという機器を用いて、細かく切りながら吸引・排出していきます。体外へ取り出した組織は病理検査に出し、癌が含まれていないか詳しく調べます。

カテーテル留置

内視鏡を取り除き、かわって尿路の確保や保護、止血のために尿道カテーテルという管を挿入します。尿道カテーテルは血尿がほぼなくなった翌日に抜去するのが一般的で、手術の翌日か翌々日に抜けることが多いです。

尿失禁とは

尿失禁とは、おしっこが漏れてしまう状態のことです。尿失禁自体が健康に悪影響を及ぼすことはありませんが、下着が汚れる、外出するのが嫌、常に気分が晴れない、といったことで悩まされます。年齢、性別を問わず尿失禁は起こりますが、中年以降のご婦人に多く見られる傾向があります。

腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁があります

中年以降のご婦人に多いのは咳、くしゃみ、重いものを持ち上げたときなどお腹に力を入れたときに漏れる「腹圧性尿失禁」です。年齢や出産などで骨盤を支える筋肉が弱くなるのが原因と言われています。

おしっこがしたくなるとトイレまで間に合わない「切迫性尿失禁」というタイプもあります。膀胱の過活動が原因です。

尿失禁はどんな検査をするの?

内診、腹圧テスト

子宮や膀胱が膣の出口へとび出してきていないかを確かめます。またおしっこをためた状態で咳などをして頂き、実際にどの程度漏れるか調べます。

尿流量、残尿測定

検査用の便器に向かって排尿して頂きおしっこの勢いを調べます。その後エコーで残尿量を調べます。

パッドテスト

簡易用おむつ(=パッド)をつけた状態でしばらく動いて頂き、パッドの重さの変化から漏れた尿の量を計算します。

問診表、排尿日誌

現在の症状について選択形式の問診表に答えて頂きます。また1日の排尿回数と排尿量を自宅で計測して頂きます。

チェーン膀胱造影

膀胱に金属製の細い鎖(=チェーン)と共に造影剤を注入し、レントゲンを撮ります。膀胱と尿道の角度や落ち込み具合をを調べます。

膀胱内圧測定

膀胱と肛門に圧センサーを挿入した状態で膀胱内に水を入れていき膀胱の内圧を測定します。そのあと腹圧を加えて尿が漏れた時の圧力を求めます。

MRI

膀胱や骨盤の形態を画像で調べます。

膀胱鏡

尿道や膀胱頸部の狭窄が疑われる場合は、内視鏡で確かめます。

尿失禁の治療は?

骨盤底筋訓練

骨盤の筋肉を強化するトレーニングです。腟や肛門を締めるようにします。軽い腹圧性尿失禁であれば運動を続けることで尿失禁は治ります。

薬物療法

膀胱の収縮を抑える薬や膀胱の出口を閉める薬を飲んで頂きます。

手術療法

膣から尿道の周囲に細いメッシュ状のテープを巻きつけることで、尿道を補強する手術を行っています。TVT(Tension-free Vaginal Tape)と呼ばれるもので、腹圧性尿失禁に効果があります。ただ、手術をしても完全に失禁がなくならない場合や、逆におしっこが出にくくなる場合があります。

その他

干渉低周波電流を用いる治療(ウロマスター)や膣内にリングを入れる治療(婦人科にて実施)なども行っています。

男性も不妊症になるの?

一般には不妊症の約半分は男性側に原因があると言われています。したがって女性だけが婦人科で検査や治療を受けるのではなく、男性も泌尿器科で検査をうけ、なるべく夫婦単位での治療をうけることが大切です。

男性不妊症の原因は?

精液所見の異常、性行為の障害などがあります。精子が少ない、動きが悪いといった異常は、精索静脈瘤、精子の通路の通過障害やホルモンの異常などで起こります。通過障害や精索静脈瘤が原因の場合には、手術により自然妊娠が可能になることもあります。

どんな手術があるの?

精索静脈瘤根治術は、精巣から来る静脈を鼠径部で切断します。リンパ管を温存することにより陰のうが腫れる合併症を極力減らすようつとめています。

精路閉塞に対しては、精管と精管または精巣上体管をつなぐ精路再建術を行います。これも顕微鏡を使って行う繊細な手術です。

また自然妊娠が困難な非閉塞性無精子症では、精子形成がよいとされる太い精細管を狙い撃ちする顕微鏡下精巣精子回収術を行い、精子を体外受精に提供します。

誰でも手術が受けられるの?

不妊症で悩むカップルに対しては治療成績に基づいた現実的な治療選択の提供を行うことが重要と考えています。特に男性側の治療選択を提供する場合は、治療により妊娠が可能になる確率とパートナーの年齢を考慮する必要があります。まずは泌尿器科専門医の診察を受けてください。

ダヴィンチは米国Intuitive Surgical社製で、術者は操作用のコンソールに座り、拡大された3DのHDビジョンの画面を見ながら、カメラと3本のアームを、手足を使って操作します。
ロボット支援(ダヴィンチ)腹腔鏡下手術

ダヴィンチは米国Intuitive Surgical社製で、術者は操作用のコンソールに座り、拡大された3DのHDビジョンの画面を見ながら、カメラと3本のアームを、手足を使って操作します。自由度がひとつ多い手首を持つEndowristによりあらゆる方向の切開や縫合が可能となり、あたかも自分の手が患者の体の中にあるようなイメージで手術ができます。また手ぶれを吸収する装置もついており、通常の指の動きで顕微鏡下手術のような繊細な手術が可能です。

平成24年4月にまず前立腺癌に保険適用されました。当科ではこれまで400例を超える腹腔鏡下前立腺全摘除術を行っており平成26年1月のダヴィンチ導入には全く問題なく順調でした。平成28年12月で270例あまりを達成しており、引き続き制癌と機能温存の向上を目指したいと思っております。また平成28年4月には腎癌の部分切除術にも適用され、これまでに40例あまり行っております。3Dに加え、繊細な動きのできるハサミでの切開と縫合操作の容易さから腎動脈を阻血する時間は腹腔鏡に比べ有意に短縮されています。

臨床研究

泌尿器科に受診中の患者さんへ

臨床研究の実施に関するお知らせ
現在泌尿器科では、下記の臨床研究を実施しております。
この研究では、患者さんの日常診療で得られたデータ(情報)を利用させていただきます。
ご自身のデータがこの研究に利用されることについて、異議がある場合は、情報の利用や他の研究機関への提供をいつでも停止することができます。この研究に協力いただけなかったとしても、あなたになんら不利益はありません。研究の計画や内容などについて詳しくお知りになりたい方は他の患者さんの個人情報や研究全体に支障となる事項以外で、資料のご提供や閲覧いただくことができます。その他、ご自身のデータがこの研究で利用されることについて異議のある方、ご質問がある方は、以下の「問い合わせ先」へご連絡ください。

研究課題名 当院責任者 説明文
(PDF)
転移性腎癌に対するIOIO/IOTKI後の二次治療 Secondary treatment after IOIO/IOTKI for metastatic renal cell carcinoma 山﨑俊成 PDF
経尿道的膀胱腫瘍切除術の周術期血圧変動に対する5-アミノレブリン酸の影響に関する検討 山﨑俊成 PDF
当院におけるアパルタミドのAE、効果に関するRDIとBSAを用いた検討  山﨑俊成 PDF
当院におけるロボット支援根治的腎摘除術(RARN)の導入成績について 山﨑俊成 PDF
当院におけるドナー腎採取術の術式と臨床的成績について 山﨑俊成 PDF
ロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術の臨床成績 山﨑俊成 PDF
筋層浸潤性膀胱癌に対するdose-dense GCによる術前化学療法の有効性と安全性についての検討 山﨑俊成 PDF
エンフォルツマブベドチンによる皮膚障害の発症様式に関する多機関共同観察研究 山﨑俊成 PDF
ロボット支援前立腺全摘術中の膀胱憩室切除 山﨑俊成 PDF
当院での生体腎移植のエベロリムス導入時期による成績の検討 山﨑俊成 PDF
進行性尿路上皮癌に対するエンホリツマブ/ベドチンの治療成績 Clinical Outcome of Enfortumab Vedotin for Advanced Urothelial Carcinoma 山﨑俊成 PDF
当院における転移性/切除不能腎癌に対する一次治療の変遷とその治療成績 山﨑俊成 PDF
I-O/I-O または I-O/TKI の併用療法による転移性/切除不能腎細胞癌の臨床転帰 山﨑俊成 PDF
当院における腎外傷症例の検討 山﨑俊成 PDF
腹膜外アプローチによるロボット支援前立腺全摘除術:経腹膜アプローチとの比較検討 山﨑俊成 PDF
筋層浸潤性尿路上皮がん患者を対象としたニボルマブ術後補助療法の日本における治療実態研究(ANNIVERSARY試験) 山﨑俊成 PDF
筋層浸潤性上部尿路上皮癌に対するdose-dense GCによる術前化学療法の有効性と安全性についての検討 山﨑俊成 PDF
根治的膀胱切除術における尿道断端FSAを用いた尿道温存の安全性の検討 山﨑俊成 PDF
転移性腎細胞癌の日本人患者を対象に一次治療におけるアベルマブ・アキシチニブ併用療法の実臨床での有用性を評価する多機関共同・非介入・後ろ向き観察研究:J-DART2 山﨑俊成 PDF
本邦における腹腔鏡下膀胱内手術を含む膀胱尿管逆流に対する手術の実態調査 川喜田睦司 PDF
腎部分切除術を施行した腎腫瘍患者を対象に術後成績の評価を目的とした後ろ向き観察研究 川喜田睦司 PDF
腎盂尿管癌に対する腎尿管全摘除術の治療成績の後方視的検討  川喜田睦司 PDF
5-ALAを用いたPDD-TURBTにおける輝度と病理結果及び膀胱上皮内がんに対するBCG治療に関する検討 川喜田睦司 PDF
RAPNのtrifecta達成に影響を与える画像的特徴についての検討 川喜田睦司 PDF
ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術が施行された腎洞に接する腎腫瘍症例を対象とした検討 川喜田睦司 PDF
膀胱上皮内癌に対するBCG治療後残存腫瘍の検出におけるPDDの有効性の検討 川喜田睦司 PDF
後腹膜脂肪肉腫再発予測因子に関する多機関共同観察研究 山﨑俊成 PDF
切除不能尿路上皮癌の治療に関する多機関共同観察研究 川喜田睦司 PDF
進行性腎癌に対するニボルマブ・イピリムマブの効果予測に関する多施設後ろ向き観察研究 川喜田睦司 PDF
高リスク前立腺癌に対する術前補助化学内分泌療法の有効性についての検討 川喜田睦司 PDF
前立腺がんに対するロボット支援根治的前立腺全摘術の多機関共同観察研究 川喜田睦司 PDF
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)の治療実態調査 川喜田睦司 PDF
ホルモン感受性転移性前立腺癌の治療実態に関する前向き観察研究 川喜田睦司 PDF
当院における尿道12時粘膜温存BipolEPの有効性について非温存BipolEP&TUEB&HoLEPとの比較検討 川喜田睦司 PDF
京都大学医学部附属病院ならびに関連病院における泌尿器疾患の観察研究 川喜田睦司 PDF
後腹膜鏡下腎尿管全摘術後のドレーン留置の必要性についての検討 川喜田睦司 PDF
経尿道的膀胱腫瘍切除術における、ALA(5-アミノレブリン酸)による光線力学的診断法(PDD;photodynamic diagnosis)と狭帯域光観察による診断法(NBI;narrow band imaging)の比較検討-拡大調査研究- 川喜田睦司 PDF
pT1aN0M0腎癌の転移再発に関する観察研究 山﨑俊成 PDF
前立腺癌骨転移に対する治療効果と去勢抵抗性前立腺癌に至るまでの期間の相関性の検討;骨シンチグラフィー解析ソフト(VSBONE,GIBONE)を用いた評価 川喜田睦司 PDF
リアルワールドにおける転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)患者の相同組換え修復(HRR)関連遺伝子変異保有率及び予後に関する観察研究 川喜田睦司 PDF
高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対するPDD-TURによる残存腫瘍減少効果の検討(BRIGHT study) 川喜田睦司 PDF
転移性副腎腫瘍に対する副腎摘除術における予後予測因子の検討 川喜田睦司 PDF
da Vinciサージカルシステム(DVSS)による膀胱全摘除術が施行された膀胱癌患者を対象とした後ろ向き観察研究 川喜田睦司 PDF

お知らせ

疾患、治療内容の変化に対応した最新最良の医療を目指し、幅広く市民のニーズに応じたいと願っております。隣接する先端医療センターと協力し、最新鋭の機器による診断・治療を今後も進めて行きます。また、市民の協力を得て、新薬や医療機器の治験・開発にも取り組み、我が国の医療の発展に寄与したいと考えております。少人数で多忙ではありますが、他科の医師、看護師、技師、薬剤師、CRC、コーディネーターなどとのチーム医療を充実させ、安全かつ思いやりのある医療をモットーに日々の診療に取り組みたいと思っておりますので、今後ともご指導、ご鞭撻のほどお願い申しあげます。