心臓血管外科 概要

神戸市立医療センター中央市民病院
心臓血管外科部長
小山 忠明

当院は神戸市の基幹病院として市民の健康と安全を守るために、質の高い医療を安全に提供することを基本理念としていますが、特に循環器疾患は生命と直結し待ったなしの対応が必要となる領域です。当科では24時間、365日心臓血管外科医が病院で待機し、成人循環器領域のあらゆる疾患に迅速な対応が可能となっています。現代の先進医療では単科だけでなく他科、他職種と連携したチーム医療が重要となってきています。我々は循環器内科との緊密な連携を基本として、このチーム医療を実践しています。循環器疾患では糖尿病、脳血管障害を合併した患者が増加傾向にありますが、そういった場合でも糖尿病内科、脳神経内科、脳神経外科とも連携をとりそれぞれのエキスパートとの協力のもと、治療に当たっています。

心臓血管外科が扱う成人循環器疾患は大きく分類すると虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)、弁膜疾患(大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症など)、大動脈疾患(胸部/腹部大動脈瘤・急性大動脈解離など)、末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症・下肢静脈瘤など)に分けられます。

虚血性心疾患の外科治療としては冠動脈バイパス術(CABG)が中心となりますが、2011年以降合併症が少なく術後の回復が早いという点から人工心肺非使用・心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump CABG:OPCAB “オプキャブ”)を第一選択とし、現在では単独冠動脈バイパス術の95%を超える症例に適用しています。また、用いるグラフトには動脈グラフトを多用し、特に長期開存性に優れる両側内胸動脈を積極的に使用しています。下肢の静脈クグラフト採取では内視鏡カメラを使用しての採取を第一選択とし、従来20㎝以上必要であった皮膚切開は4㎝程で可能となっており、術後の創部痛は大きく軽減しています。さらに心筋梗塞後の心肥大による心機能低下症例には、左室形成術(バチスタ手術・ドール手術・セーブ手術)も併せて行うようにしています。

弁膜疾患では、僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術を20年以上前より積極的に行っており、成功率は95%以上となっています。この僧帽弁形成術では現在、胸骨を切開しない右小開胸で完全内視鏡下による手術を第一選択としています。約2㎝と4㎝の創部と1㎝の内視鏡のためのポートのみで、肋骨を開胸器で広げることもないので術後創部痛は極軽度で、創部はロボット手術より小さくなっています。大動脈弁閉鎖不全症のうち大動脈基部病変に伴うものに対しては自己弁温存型大動脈基部再建術を積極的に行っています。一方、人工弁置換術では、抗凝固薬(ワーファリン)を必要としない生体弁をできる限り使用し、80歳を超える症例でも良好な成績が得られています。さらには、大動脈弁狭窄症で従来の大動脈弁置換術が困難な症例には、循環器内科と協力して経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI “タビ”)を行っています。そして、大動脈弁人工弁置換術にも右小開胸手術を導入しています。

大動脈疾患では、ハイブリッド手術室が導入され、大動脈瘤に対するカテーテルを用いたステントグラフト内挿術と、外科手術のハイブリッド治療を積極的に行っています。以前は手術適応から除外されていた80歳以上での胸部大動脈瘤人工血管置換術も手術方法の確立、人工心肺装置の進歩に伴い満足できる手術成績となり症例数も増加傾向です。また、救急病院として大動脈瘤破裂や急性大動脈解離症例の緊急受け入れも積極的に行ってます。

末梢血管疾患では、最近増加している閉塞性動脈硬化症での重症虚血肢に対して膝下病変、足関節末梢病変にも積極的に血行再建術を行い救肢に努めています。また、2011年より下肢静脈瘤治療を再開し、一泊二日での高位結紮・静脈瘤切除術や高周波アブレーションを用いた焼灼術と外来での硬化療法を行っています。

これら以外にも心臓疾患では稀である悪性心臓腫瘍に対しては原発巣の切除の後、腫瘍内科と連携し術後早期に化学療法、放射線治療を行い良好な成績を得ています。

診療実績

主な診療対象疾患

  • 虚血性心疾患(狭心症、急性心筋梗塞、心室瘤)
  • 弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症)
  • 大動脈疾患(胸部大動脈瘤、急性大動脈解離、解離性大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤)
  • 心筋症(虚血性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症)
  • 末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症、バージャー病、下肢静脈瘤)
  • その他(心臓腫瘍、心房細動、収縮性心膜炎)

診療科別統計

臨床評価指標ページ

主な疾患・治療法

冠動脈

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に対して心臓の血流を改善するために冠動脈バイパス術を行います。

虚血性心疾患

心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしていますが、心臓自体にも血液を送る重要な血管が3本あり、それらを冠動脈と呼びます。冠動脈が動脈硬化等により狭くなったり詰まったりして心臓に必要な血液を供給できなくなる状態を虚血性心疾患と呼びます。

狭心症

冠動脈が細くなり心臓に十分な血液を送ることができない状態で、運動したときに胸が締め付けられるように痛くなったり、息が苦しくなるといった症状が出ます。ごく軽度の運動や安静にしていても症状が出る場合は不安定狭心症と呼び、心筋梗塞に移行する可能性がある危険な状態で、緊急手術が必要なこともあります。

心筋梗塞

冠動脈が詰まってしまい、その先に血液が供給されず心臓の筋肉が死んでしまう状態です。胸を締め付けられるような激痛が長く続くことが特徴ですが、自覚症状がない場合もあります。生命にかかわる非常に危険な状態で、一刻も早い治療(カテーテル治療やバイパス手術)が必要です。

虚血性心疾患の治療

虚血性心疾患に対する外科治療の中心は冠動脈バイパス術となります。冠動脈バイパス術とは、狭くなったり詰まったりした冠動脈の先に新たな血管(グラフト)をつなげることで、心臓の血流を改善するために行う手術です。

冠動脈バイパス術には人工心肺を使用する方法と使用しない方法があります。人工心肺とは心臓と肺の代わりに全身に血液を送り出すポンプ装置です。人工心肺を使用しない方法を人工心肺非使用・心拍動下冠動脈バイパス術(オフポンプ冠動脈バイパス術)と呼び、人工心肺を使用することで起こる合併症(脳梗塞、出血、腎不全など)のリスクを下げ、身体への負担を小さくすることができます。しかし、心臓を止めず拍動したままの状態で2mm程度の血管をつなぐため、外科医の技術が重要となります。当院では2011年以降、オフポンプ冠動脈バイパス術を第一選択としており、単独冠動脈バイパス術において95%の症例で行っています。

冠動脈バイパス術に用いる新たな血管(グラフト)には胸の内側の動脈(左右の内胸動脈)、腕の動脈(橈骨動脈)、胃の動脈(胃大網動脈)、足の静脈(大伏在静脈)がありますが、より長期に血流が保たれる左右両側の内胸動脈を積極的に使用しています。また足の静脈を採取する際には内視鏡を使用する方法を積極的に行っており、その場合4㎝程度の創で採取することができます。

術後早期の運動や仕事復帰を希望される場合には、胸の骨を閉じる際にチタンプレートを使用し、より早期の運動再開を可能にしています。
冠動脈バイパス術後のCT画像

内視鏡を使用した大伏在静脈の採取

弁膜症

心臓には逆流防止用の弁がありますが、先天的に弁に異常がある場合や、加齢とともに弁が傷んでくる場合があります。重症の弁狭窄や弁逆流が起こり心不全を生じる場合は外科治療が必要になります。
弁膜症とは

心臓には4つの部屋があり、それぞれを右心房、右心室、左心房、左心室と呼びます(図1)。全身からかえってきた血液はまず右心房に入ります。右心房からは三尖弁を通過し右心室へ入り、右心室からは肺動脈弁を通過し肺へ流れ二酸化炭素と酸素を交換して左心房へかえってきます。左心房から左心室へは僧帽弁を通過し流れていきます。厚い筋肉で囲まれた左心室が収縮することで、大動脈弁を通し全身へ血液を送り出します。これら4つの弁は血液の流れが逆流しないように働いています。

心臓弁膜症では様々な理由でこれら4つの弁に閉鎖不全症(逆流)や狭窄症(通過障害)が起こりむくみ、疲れやすさ、労作時息切れ等が出現します。

弁をお薬で治すことはできないため、ひどく傷んでしまった弁は手術で治す必要があります。外科治療は主に2つあり、傷んだ弁を人工弁(生体弁、もしくは機械弁)で置き換える人工弁置換術と自己弁を修理する弁形成術に大別されます。

大動脈弁疾患

大動脈弁疾患(狭窄症や逆流症)ではほとんどが人工弁置換術を行っています(図2)。近年は高齢の患者様が多いため、当科ではほとんどの大動脈弁置換術例は生体弁を選択しています。若年の方でも機械弁置換術後の抗凝固薬内服が気になる方には再手術を説明の上で生体弁を選択しています。2008年の日本胸部外科学会の報告では日本の単独大動脈弁置換術では62%が生体弁置換術であると報告されています。

大動脈弁形成術は症例を限って行っています。特に先天性二尖弁(約100人に1人の頻度)をよい適応であり、患者様の年齢等を考慮し術式選択をしています。

大動脈弁狭窄症に対しては、近年ではご高齢の患者さんや手術のリスクが高い場合は低侵襲なカテーテルによる大動脈弁植え込み術(TAVI)も循環器内科と協力のもと行っております。

僧帽弁疾患

ほとんどの僧帽弁疾患は僧帽弁閉鎖不全症です。当科では以前より僧帽弁閉鎖不全症に対して、自己の弁を残したまま逆流を制御する弁形成術を他施設に先駆けて多数行ってきた経験があります。術前に経食道心エコーを行い僧帽弁の形態を詳細に評価することで、僧帽弁形成術での成功率は95%以上となっております(図3)。僧帽弁狭窄症に対しては、弁自体の評価を十分行い、弁形成術、もしくは弁置換術を行っています。また、弁置換術を行う場合には可能な限り自己弁組織を残すようにして弁置換術を行い、心臓機能に悪い影響が出ないようにしています。

三尖弁疾患

ほとんどの症例が他の弁膜症に併存する三尖弁逆流であり、弁周囲に人工弁輪を縫いつける縫縮術で逆流を制御しています。稀に人工弁置換術を行う場合があります。

弁膜症の外科治療に至るまでには詳細な検査、評価を専門の医師が行い最終的には当科で決定しています。出来る限り患者さんにベストな治療方針となるよう当科一丸となって弁膜症治療にあたっています。当科の弁膜症治療成績は国内・外学会発表や論文発表を行い、その治療成績は各施設から認められています。当科では豊富な経験に基づいた的確な治療を提供しています。

新しい大動脈弁狭窄症の治療

症状を伴う重症の大動脈弁狭窄症があるけれども、人工心肺を使用する外科手術のリスクが高い患者さんに対する低侵襲治療です。
大動脈弁狭窄症とは?

心臓は全身に血液を送るポンプのような働きをしています。左心室が収縮して大動脈に血液を送り出しますが、左心室の出口に大動脈弁という血液の逆流を防止する弁が付着しています。弁の変性や動脈硬化などが原因でこの弁の出口が狭くなる病態を大動脈弁狭窄症といいます。労作時の息切れや失神などの原因となります。重症の大動脈弁狭窄症を放置すると、心臓の筋肉が肥大し、心不全、狭心症発作、失神、不整脈、突然死などが起こりえます。

経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)

これまで大動脈弁狭窄症に対する手術としては、人工心肺使用下に、胸を開けて人工弁を植え込む外科手術が行われてきました。経カテーテル大動脈弁植え込み術 (Transcatheter Aortic Valve Implantation: TAVI)は、症状を伴う重症の大動脈弁狭窄症があるけれども、人工心肺を使用する外科手術のリスクが高い患者さんに対する低侵襲治療です。日本では2013年10月に保険診療可能となりました。厳しい施設基準が定められておりますが、当院は2013年12月に兵庫県初の認定施設承認を取得して以来、2016年10月末までに72例の埋め込みを施行しました。

全身麻酔後に、カテーテルとよばれる細長い管を足の付け根の動脈に挿入します。足の血管の性状がよくないなどの理由で、足からアプローチできない場合は、肋骨の間の胸壁を数センチ切開し、直接心臓にカテーテルを挿入したり、あるいは鎖骨下動脈や上行大動脈からカテーテルを挿入します。カテーテルを経由して、折りたたまれた人工弁を心臓まで持ち込み、大動脈弁の位置に植込みます。2016年10月時点では、エドワーズライフサイエンス社とメドトロニック社の製造する2種類の弁が使用できますが、患者さんの弁の性状に合わせて使い分けています。

植え込む人工弁
足の血管からの治療
胸壁からの治療
人工弁(赤矢印)が植え込まれた直後の様子
ハートチーム
TAVI治療は、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医,画像診断専門医、看護師、放射線技師、臨床工学技士など多職種にわたるスタッフが,それぞれの専門分野の知識や技術を持ち寄って、患者さんにとって最適と思われる治療法を選択し、治療を行う事で初めて可能になります。このTAVI治療を担うグループを「ハートチーム」と呼びます。当院では、各分野のエキスパートからなるハートチーム体制を整えています。
ハートチーム集合写真
TAVIの対象となる患者さんは?

症状を伴う重症の大動脈弁狭窄症があり、

  1. ご高齢(おおむね80歳以上)の方
  2. 過去にバイパス手術などの開胸手術をしたことがある方
  3. 肺気腫などの呼吸器疾患のある方
  4. 肝硬変などの肝疾患のある方
  5. 悪性疾患合併のある方(1年以上の予後が期待できること)
  6. 胸部の放射線治療を受けたことがある方
  7. 大動脈の動脈硬化が強い方

などの理由で外科手術のリスクが高い患者さんがTAVIの適応となります。ただし、リスクが低く安全に外科手術が行われると判断された方や、透析患者さんはTAVIの対象になりません。

ハイブリッド手術室

TAVI認定施設となるためにはハイブリッド手術室が必要とされています。ハイブリッド手術室とは、手術台と心・脳血管X線撮影装置を組み合わせた治療室のことで、手術室と同等の空気清浄度の環境下でのカテーテルによる血管内治療が可能です。当院では新病院移転時の2011年7月にハイブリッド手術室を導入しました。TAVIだけではなく、両心室ペースメーカー手術、大動脈ステントグラフト手術などでも使用しています。

TAVIを希望される患者さん、医療関係者の方々へ

TAVIの適応となるかどうかは、詳細な術前検査(冠動脈造影、経食道エコー、冠動脈造影、呼吸機能検査など)を行って決定する必要があります。まずは、かかりつけ医からの紹介状持参の上で、当院外来受診をお願いします。

相談窓口

循環器内科医長・心臓センター長 江原 夏彦 (外来日:火曜)
心臓血管外科主任部長 小山忠明(外来日:月~金曜。但し月、水、木、金曜は9-10時のみ)
病院代表番号: 078-302-4321
地域医療センター: 078-302-4458 FAX: 078-302-4424
FAX予約: 078-302-6031 FAX: 078-302-2251

大動脈疾患

心臓から全身の臓器に血液を本管の血管が大動脈でこれが瘤(こぶ)のように膨らむ大動脈瘤と大動脈の内側から傷が入ってしまう大動脈解離があります。

大動脈瘤

血管の一部がこぶのように膨らむ病気を動脈瘤といいます。血管は膨らむと風船のように壁が薄くなり破裂しやすくなります。全身に血液を送る血管なので、万が一破裂すると致命的な病気です。

大動脈瘤に対する治療

破裂のリスクの高い大動脈瘤に対しては外科治療が必要であり、瘤となった部分を人工血管で置き換える治療を行います。大動脈瘤の部位によって胸部(上行・弓部・下行)大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤にわかれますが、すべての部位の大動脈瘤に対して当科では手術を行っております。

低侵襲なステントグラフトによる血管内手術も循環器内科と協力して行っております。ステントグラフト治療は比較的新しい治療となるため、すべての患者さんにステントグラフト治療が適応となるわけではありません。患者さんの状態や血管の状態を考慮し、よりベストな治療方針を提示させて頂きます。(ステントグラフト治療の詳細は循環器内科のホームページをご覧下さい)

循環器内科のホームページ

また、当科では2014年より弓部大動脈瘤に対してオープンステントグラフトという新しい治療法を積極的に用いております。開胸手術は必要となりますが、人工血管とステントグラフトを組み合わせたもので、外科治療の確実性とステントグラフト治療の低侵襲性を併せ持った方法です。

大動脈解離
大動脈の壁は3層構造になっていますが、間にある中膜が突然裂ける病気です。外膜だけの薄皮一枚になった部分が破裂したり、頭を始め全身の臓器にうまく血液を送れなくなったりし、緊急手術をしなければ命を落とす危険性が極めて高い恐ろしい病気です。治療法は人工血管置換術しかなく、当科では24時間体制で手術に備え、救命率は約92%と全国的に見ても良好な成績を収めています。
治療実績

静脈瘤

末梢動脈疾患について

末梢動脈疾患は下肢の血流が障害されて起こる病気であり、症状がない場合から重度の虚血を来たす場合まで幅広い範囲に及びます。代表的な症状はふくらはぎに最も多く見られて、間欠性跛行と呼ばれています。

間欠性跛行とは運動により生じて休憩にて軽減する繰り返す不快感です。足関節と上腕の血圧を比較する検査で診断が可能であり、生活習慣の改善や薬剤を用いた保存的治療を行なっていきます。保存的治療を行なっていても2〜3割の患者さんで症状は悪化してくるため、血流を改善させる手術が必要となってきます。手術の方法は大きく分けて2つで、血管内治療とバイパス術があります。

血管内治療は狭窄・閉塞している血管内にステントと呼ばれる管を留置して血流を改善させる方法です。バイパス術は自分の血管や人工血管を用いて狭窄・閉塞している血管の中枢側と末梢側を繋げる方法です。患者さんの状態に応じて治療方法は選択します。

下肢静脈瘤について

人間の体は心臓の力で全身に血液を送っています。心臓から出た血液は動脈を通って身体の隅々まで運ばれて、静脈を通って再び心臓に帰ってきます。静脈には血液がスムーズに心臓に帰ってくるために逆流を防止する弁があります。下肢静脈瘤はその弁が壊れてしまった結果、下肢に血流が滞ることで起こります。症状としては足のだるさやこむら返り、皮膚症状などがあります。また表面の静脈がボコボコ腫れてくることもあります。

診断は超音波検査を行うことで下肢の静脈の状態を確認して行います。軽度の場合は生活習慣の改善や弾性ストッキングで圧迫することによる保存的治療を行いますが、場合によっては手術を行います。

当院では患者さんへの負担が少ない血管内焼灼術を2014年より始めました。高周波電流で120℃に加熱される装置(Closure Fast™)を用いて血管内より原因となっている静脈を焼灼して潰してしまいます。手術は基本的に日帰りもしくは1泊入院で行なっています。

診察日は毎週火曜日で当日予約も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

臨床研究

当科では臨床上の様々な疑問点を解決すべく臨床研究を行っています。観察研究とは直接の同意は頂かずこの掲示を持って同意して頂いたものとして実施されています。また院内の臨床研究倫理委員会にて審査・認可された介入研究や観察研究ではその対象となる患者さん個人に説明し同意を頂いた上で実施しています。

主な臨床研究(観察、介入研究を含む)

研究課題名 当院責任者 説明文
(PDF)
機能性重症三尖弁閉鎖不全症に対するFlexible bandによる弁輪縫縮の遠隔成績 吉田一史 PDF
大動脈弁形成術に対する全国アンケート調査 小山忠明 PDF
心臓原発肉腫に対する外科的切除後の局所再発の予防 吉田一史 PDF
広範胸腹部大動脈瘤に対する胸部大動脈ステント内挿術と胸腹部大動脈人工血管置換術を組み合わせたハイブリット治療の有効性の検討 吉田一史 PDF
重症虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する乳頭筋に介入した僧帽弁形成術の有用性に関する多施設共同研究 小山忠明 PDF

お知らせ

医師、医師を目指す方向け当科のご紹介

※本コンテンツは、医師の方を対象とし、当医療機関についての理解を深めていただけるよう作成しているものであり、一般の方を対象とする宣伝・広告等を目的としたものではありません。

はじめまして、神戸市立医療センター中央市民病院 心臓血管外科部長の小山 忠明(こやま ただあき)です。

当科では、循環器疾患で手術加療が必要なあらゆる重症、緊急症例に迅速に対応できる体制を整えてきました。各診療科との連携も迅速かつ強固であり、集約的に患者さんの治療を行えることも当院の大きな強みとなっています。

循環器治療は、この10年で大きく様変わりをしています。
大動脈弁狭窄症に対するカテーテルによる人工弁留置術(TAVI)は、当院でもいち早く導入し、内科・外科合同のハートチームとしてあらゆる困難な症例にも良好な成績を得ることができています。
心臓手術は大きな皮膚切開で胸骨を離断し、人工心肺を使用して心臓を一時的に止めて治療するのが一般的であり患者さんにとって大きな侵襲が必要な治療であるという印象を多くの方が持っておられると思います。しかし、現在の心臓手術は従来のイメージとは大きく変わってきており、低侵襲治療が多くの分野で可能となっています。 本日は、当院で積極的に行っている虚血性心疾患と弁膜症の2つの分野における低侵襲心臓手術についてお話させていただきます。

小山 忠明
心臓血管外科 部長

虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術

人工心肺を使用しないオフポンプバイパス(OPCAB)は、日本に導入されてすでに30年近い年月が過ぎていますが、単独冠動脈バイパス術(CABG)で施行される割合は、施設によってかなり差があります。
当院では90%以上の症例でOPCABを施行しています。当然ですが人工心肺装置にかかわるすべての悪影響を回避でき、特に腎不全、肝不全、脳血管病変や感染リスクの高いコントロール不良な糖尿病や自己免疫疾患を合併するハイリスク症例でそのメリットは大きくなります。
当院ではこの10年で600例以上のOPCABを施行し、病院死亡率は0.5%であり、CABGで問題となる胸骨骨髄炎の合併率も0.3%と極めて低く抑えることができています。 

CABGで使用頻度の高い下肢静脈グラフトの採取は、通常胸部正中創より大きな皮膚切開が必要であり、感染のリスクや高齢者では術後のリハビリが進まない原因となります。我々はこの下肢の静脈を内視鏡を用いて採取することを第一選択としています。2cm程の皮膚切開で採取が可能となり、術後の創部感染はこれまで1例も認めていません。また、術後の創部痛もほとんどなく術後リハビリの開始が早くなっています。

弁膜症に対する手術
1. 僧帽弁形成術

僧帽弁逆流に対する僧帽弁形成術では、胸骨を切開しない右開胸での手術が普及してきており、2年ほど前からはロボット支援での手術も始まっています。
右開胸手術といってもその実態は施設によってかなり違います。胸腔鏡またはロボット支援を用いながらも直視下での手技も併用する場合は、創部を開胸器で大きく広げている場合が多く、術後の創部痛が遷延することが少なくありません。
我々はすべての手技を胸腔鏡の画像を用いて行う完全鏡視下での僧帽弁形成を僧帽弁閉鎖不全症の第一選択としています。この方法では手術器具やルート類の出し入れを行う4cmほどのメインウィンドウ、大動脈遮断鉗子等のための2cm程のセカンドウィンドウと10mmのカメラポートで手術を行うため、創部を開胸器で広げる必要がなく、術後創部痛は極軽度で手術創はロボット支援手術よりも小さくすることができます。そして退院後の運動制限はなく、早期の社会復帰が可能となります。

僧帽弁閉鎖不全に合併しやすい心房細動や三尖弁閉鎖不全症の手術も同様の方法で同時に手術が可能です。特に心房細動では肺静脈隔離術に加えて左心耳のクリップによる閉鎖も同時の行うため、術後の脳梗塞の予防に大きな効果が期待できます。

2. 大動脈弁人工弁置換術(AVR)

大動脈弁狭窄症(AS)に対する人工弁置換術はカテーテルでの人工弁留置術(TAVI)の登場により、80歳以上の高齢者ではまず考慮される治療選択となっていますが、それより若年の患者さんでは従来の大動脈弁人工弁置換術(AVR)が第一選択となっています。
我々はこのAVRにおいても僧帽弁と同様に右小開胸での手術を導入しています。ASの患者さんでは最近日本に導入された縫合を必要としない人工弁(牛心膜弁)を用いてこの右小開胸での手術を行い、大動脈弁閉鎖不全症(AR)の患者さんでも従来の人工弁を用いて同様に右小開胸での人工弁置換を行っています。 

当科へのご紹介方法と診療フロー

当科への紹介には当院ホームページに記載されているFAX予約もしくはWeb予約をご利用ください。Web予約ではこちらから専用のIDとパスワードを配布しますので、そこから専用のサイトにアクセスして、空いている枠へ直接予約が可能となっています。 新患外来は、火曜日を除くすべての曜日で9~10時(木曜日のみ10時半まで)の予約が可能です。
また、急がれる症例や、直接相談を希望される場合は当科のホットライン(078-302-4417)へご連絡ください。24時間いつでも対応可能となっています。
当院受診後は治療方針が決まり次第ご連絡を差し上げます。通常手術日の2日前に入院していただき、術後10日前後で退院となります。退院後1カ月前後でご紹介いただいた先生へ逆紹介させていただいています。 

先生方へのメッセージ

弁膜症では、無症状であっても状況によっては早期の手術が望ましい場合もあります。また高齢であるからという理由で手術を躊躇されることもありますが、当院では80歳以上、場合によっては90歳以上でも安全に手術を行ってきた実績があります。手術の適応が不確定でも構いませんのまずはご一報ください。どのような症例でも対応させていただきます。