当院では耳鼻咽喉科の腫瘍班、口腔外科の腫瘍班から、頭頸部の腫瘍を扱う専門チームとして、2010年に頭頸部外科が発足しました。発足以降、患者さんの数は徐々に増加し、病院情報局のデータによると2019年には頭頸部悪性腫瘍退院患者数164名(DPCデータより全国91位)を数えるまでに至りました。
当院の頭頸部外科の特徴としては、①頭頸部癌診療の経験が豊富な専門医のもとで、早期癌から進行癌まで、部位・ステージを問わず、患者さんに最適な治療(手術、放射線治療、化学療法)を提供可能であること、②口腔外科班・形成外科の診療技術が充実しており、術後の機能再建を考慮した治療計画が可能であること。③放射線治療医、腫瘍内科医、血管内治療医の診療技術が充実しており、放射線治療、抗癌剤治療から、超選択的動注化学放射線治療(RADPLAT)まで、手術以外の治療の選択肢も豊富であること。また近隣の医療機関と協力して重粒子線治療、光免疫療法、ボロン中性子捕獲療法(BNCT)なども治療の選択肢として選択しうること④甲状腺疾患の治療に関しては、内分泌内科医・核医学専門放射線治療医・腫瘍内科医が充足しており、手術、放射性ヨード治療から分子標的薬治療まで連携をとって総合的な治療が可能であること。また術後の音声障害に関しては、耳鼻咽喉科が母体である技術を生かして、音声改善手術も可能であること、⑤総合病院に敷設した頭頸部外科であり、高齢者や内科的な合併症のある患者さんの治療に対しても、各疾患のエキスパートとチームを組んで、総合的観点から治療することができること、が挙げられます。
また、日本耳鼻咽喉科学会専門医研修施設、日本気管食道科学会認定専門医研修施設、日本頭頸部外科学会指定研修施設、内分泌・甲状腺外科専門医認定施設を標榜し、耳鼻咽喉科専門医、頭頸部外科頭頸部癌専門医、甲状腺外科専門医、気管食道科専門医の育成にも力を入れています。臨床研究も盛んで、例年平均して3件程度の国外学会発表、10件程度の国内学会発表、3本程度の英文雑誌、5本程度の和文雑誌に論文を上梓し、海外でも通用する頭頸部外科治療施設を目指しています(学術業績については耳鼻咽喉科>お知らせの の項をご参照ください)。
耳鼻咽喉科お知らせページはこちら頭頸部外科では主に頭頸部に発生した腫瘍の診断、検査および手術や放射線治療を中心とした治療を行っています
〈頭頸部外科の専門外来〉

〈手術〉

診療実績
診療科別統計
主な疾患・治療法
口腔癌治療では、手術を中心に、形成外科と合同で機能再建手術を手掛けています。また、上下顎などの切除後の補綴やインプラントは口腔外科班のスタッフが手術前から関与し、質の高い医療を提供しています。
進行頭頸部癌の患者さんに対する治療方針決定の際には、PET/CTなどの機能画像を駆使し、手術を選択するか、機能温存を図って化学放射線療法を選択するか、case by caseに最良の治療法を検討しています。
放射線治療医と定期的に放射線治療カンファレンスを実施しています。適応があれば強度変調放射線治療(IMRT)などを使用して、患者さん個々に応じた最適な放射線治療を提供しています
中下咽頭癌の表在癌に対しては、消化器内科の内視鏡専門医と合同で経口腔的治療に積極的に取り組み、より低侵襲な臓器温存治療を図っています。

臨床研究
臨床研究に関するお知らせ
研究科題名 | 当院責任者 | 説明文 |
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COVID-19による頭頸部癌患者の受診動向の変化に関する検討 | 浜口清海 | |
舌白板症に対する切除生検 ―病理診断と設定すべき安全域について― | 安本眞美 | |
耳下腺多形腺腫再発例の検討 | 道田哲彦 | |
頭頸部扁平上皮癌のオリゴ転移 -転移の個数、治療戦略、生命予後についてー | 篠原尚吾 | |
咽喉頭悪性腫瘍に対する鏡視下経口的手術に関する多施設共同での後向き解析 | 篠原尚吾 | |
日本における頭頸部悪性腫瘍登録事業の実施 | 篠原尚吾 | |
頭頸部の希少腫瘍における疫学、経過、治療成績、および予後の検証 | 篠原尚吾 | |
当院で手術加療を行った茎状突起過長症の病態、術式と治療成績について | 篠原尚吾 | |
HPV 関連頭頸部癌の疾病負担評価のための観察研究 The BROADEN study – Observational study to assess the absolute BuRden Of hpv-related heAd anD nEck caNcers |
篠原尚吾 | |
当院における耳下腺癌42例の臨床的検討 | 道田哲彦 | |
咽頭喉頭食道全摘術の再建法と治療成績に関する全国調査 | 篠原尚吾 | |
咽喉頭がんに対する経口的切除の有効性・安全性に関する研究 | 篠原尚吾 | |
鼻副鼻腔悪性腫瘍に関する多施設共同での後ろ向き解析:後ろ向きコホート研究 | 篠原尚吾 | |
口腔癌に関する多施設共同後方視的研究 | 篠原尚吾 | |
咽頭・喉頭・気管狭窄に関する全国疫学調査 | 篠原尚吾 | |
一般社団法人National Clinical Database(NCD)における手術・治療情報データベース事業 | 篠原尚吾 |
研究期間が終了した臨床研究
研究科題名 | 当院責任者 | 説明文 |
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頭頸部癌微小環境における糖代謝と免疫マーカー発現の関連性の検討 | 篠原尚吾 | |
体幹部原発癌からの頸部リンパ節に転移した症例の予後 | 竹林慎治 | |
遠隔部位からの頸部リンパ節に対する頸部郭清術の検討 | 篠原尚吾 | |
降下性壊死性縦隔炎の発生と治療法および予後に関する観察研究 | 篠原尚吾 | |
切除不能甲状腺癌に対するレンバチニブの効果に関する多施設共同後方視的研究 | 篠原尚吾 | |
深頸部膿瘍に対する手術必要性に関する検討 | 水野敬介 | |
口内法で舌部分切除術を施行した舌癌症例の検討 | 浜口清海 | |
当院における頭頸部扁平上皮癌に対する低用量毎週シスプラチン併用化学放射線療法の副作用と成績について | 篠原尚吾 | |
甲状腺悪性リンパ腫に対する気道確保の検討 | 竹林慎治 | |
低分化成分を含む甲状腺癌20例の臨床的特徴 ―甲状腺取り扱い規約第6版での甲状腺低分化癌― | 篠原尚吾 | |
唾液腺腫瘍における迅速病理診断と永久組織病理診断の比較検討 | 竹林慎治 |