総合聴覚センター

神戸市立医療センター中央市民病院
耳鼻咽喉科 部長
兼 総合聴覚センター長
山本 典生

近年、「きこえ」の治療は認知症の状態を変えうる要因のうち、もっとも大きく貢献できる要因とされています。一方、難聴や認知症は超高齢社会を迎えて久しい本邦では、今後難聴や認知症の方が増加するものと考えられます。また、出生する子供の1000人に1人は難聴をかかえています。このような状況で、「きこえ」の問題を解決することは重要な社会的課題と言えます。総合聴覚センターは、「きこえ」の問題を、最も末端の音をとらえる耳から音を解釈する脳までを対象に最先端の研究を行うことにより、そして医療だけでなく教育や福祉など広い視点で総合的に扱うことにより解決するため、2021年4月に開設されました。

現在、総合聴覚センターでは
1.「きこえ」に関する診療
2.「きこえ」の新しい医療につながる研究
3.聴覚障害児支援中核機能強化事業(神戸市より委託)
の3つの仕事を柱に活動しています。

診療について

 難聴に関係する一般的、あるいは専門的な診療を耳鼻咽喉科外来の「総合聴覚センター」という診療枠で行っており、詳しい検査と診断に基づいて、補聴器についてのアドバイスや検査、鼓室形成術や人工内耳手術などの専門的な治療を行います。
 診察には予約が必要で、現在診てもらっている医療機関(診療所、病院などで、耳鼻咽喉科でなくても、内科などのかかりつけの先生からの予約もできます)からFAXあるいはインターネットで予約をしてもらってください。難聴に関して現在受けておられる診療について「セカンドオピニオン」として意見を聞いていただくこともできます。詳しくは当院ホームページの「初診の方へ」と「セカンドオピニオン」の項目をご参照ください。

研究について

 聴こえの医療は、現在行われている保険診療だけで十分と言う訳ではありません。現在の医療で不十分な点を克服して新しい医療につなげる研究が大切であり、現在、総合聴覚センターでは以下のような臨床研究を行っています。ご理解、ご協力を、よろしくお願いいたします。

  1. 高齢高度難聴者の脳代謝に対する人工内耳装用の影響
  2. 内耳・内耳道奇形症例における術中EABR検査と術後の人工内耳刺激強度の関連の検討
  3. 難聴の遺伝子解析と臨床応用に関する研究
  4. 人工内耳装用者の音声リハビリテーションの開発に資する研究
  5. 人工内耳装用者の包括的な聴覚関連脳機能検査法の開発に資する研究
  6. 人工内耳装用者における日本語版リモートチェックの評価

神戸市聴覚障害児支援中核機能強化事業

 こどもの難聴は言葉や社会性の発達に影響し、医療、福祉、教育など多くの専門機関が協力する、長期間にわたる切れ目のない支援が必要です。総合聴覚センターでは、神戸市の委託を受けて、こども家庭庁がすすめる「聴覚障害児支援中核機能強化事業」をおこなっており、高度の専門知識を有するコーディネーターを配置して、以下のような支援を提供しています。

  1. 産科で受けられた新生児聴覚スクリーニング検査で精密聴力検査が必要と判断された赤ちゃんのご家族に対して、難聴児の医療や教育について情報提供し、直接のご相談にも対応します。また、ご家族向けの冊子「赤ちゃんの聞こえで要精査と言われたら」も作成していますので、ご希望があれば送付いたします
  2. 難聴小児、学童の補聴器や人工内耳に関する医療相談や支援
  3. 地域の保育所、幼稚園、小中学校、特別支援学校などに通う難聴児のご家族からの医療、療育、教育上の相談に応じています。必要に応じて、当センターのコーディネーターが保育所、幼稚園、学校などを訪問し、関係者や保護者への説明、指導や支援を行います
  4. 聴覚障害児支援のための研修会の開催
  5. 神戸市聴覚障害児支援協議会の運営

聴覚障害児支援研修会

【ご案内】
研修会動画を視聴希望される方は、後日パスワードを送付します。
総合聴覚センターのメールアドレスまでご連絡下さい。

①講師 : 神戸大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科 講師 藤田 岳
 演題 : 『知っておくべき小児難聴の医学的知識 : 難聴の原因と診断・治療法について』

②講師 : 兵庫県立こども病院 耳鼻咽喉科 部長 大津 雅秀
 演題 : 『新生児聴覚スクリーニング検査と補聴器』

③講師 : 神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科総合聴覚センター長 内藤 泰
 演題 : 『人工内耳の適応と術後のリハビリテーション』

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① 講師:神戸大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科助教 上原 奈津美 先生   
  演題:『乳幼児の聴覚検査の実際と注意点』

② 講師:兵庫県立こども病院耳鼻咽喉科部長 勝沼 紗矢香 先生  
  演題:『小児の中耳炎:その病態と聴覚障害児療育に及ぼす影響および対策』

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講師:カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)
    頭頸部外科教授・神経耳科学主任 AKIRA ISHIYAMA氏
演題:『米国における小児難聴のスクリーニング・早期介入とリハビリテーションの現状について』

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①講師:ソノヴァ・ジャパン株式会社 本久 宏一 様
 演題:『ワイヤレス式デジタル送受信システム(ロジャー)の基本的使用方法と応用』

②講師:神戸市立医療センター中央市民病院 諸頭 三郎 言語聴覚士
 演題:『人工内耳小児のマッピングと聴こえ』

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➀講師:神戸大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 助教 上原 奈津美先生
 演題:『重複障害を伴った難聴児への対応』

②講師:神戸市総合療育センター 言語聴覚士 志水 るみ先生   
 演題:『難聴小児の療育と教育―神戸市総合療育センターまるやま学園・ひばりクラス―』

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➀講師:神戸市立医療センター中央市民病院 総合聴覚センターコーディネーター諸頭 三郎(言語聴覚士)
 演題:『インクルーシブ教育での合理的配慮について―難聴幼児・学童の場合―』

②講師:兵庫県立神戸聴覚特別支援学校 若松 小百合先生
 演題:『本校における乳幼児保護者支援について』

③講師:兵庫県立神戸聴覚特別支援学校 高浜 由美先生
 演題:『聴覚特別支援学校での教育活動について』

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講師:独立行政法人国立病院機構 東京医療センター臨床研究(感覚器)センター長:加我 君孝先生
演題:『幼小児難聴医療・療育の歴史と現状と将来展望』

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総合聴覚センターからのご案内

 ご家族向けのリーフレットと新生児聴覚スクリーニングで要精査といわれた場合の説明冊子を用意していますので、ご希望される方は下記連絡先へお問い合わせください。

●「赤ちゃんの聞こえを心配されるご家族へ」

リーフレット

●「赤ちゃんの聞こえで要精査と言われたらー新生児聴覚スクリーニング後の精密検査と医療・教育―」

●「難聴児支援のハンドブック」

総合聴覚センター連絡先

電話:078-302-4516 (直通)
FAX:078-302-7246 (直通)
E-Mail:c_choukaku@kcho.jp