IBDセンター長・消化器内科医長  井上聡子

IBDとは

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は、主に潰瘍性大腸炎とクローン病を指し、どちらも免疫異常が関与する原因不明の慢性消化管炎症性疾患です。消化管にびらんや潰瘍が多発し、再燃と寛解をくりかえします。

症状は、数週間から数ヶ月にわたって続く下痢、血便、腹痛、発熱などで、とくにクローン病では肛門周囲膿瘍や痔瘻といった肛門病変を合併することがあります。また、潰瘍性大腸炎の長期経過例では、大腸癌が発生するリスクが上昇することが知られています。

上記の症状が続く場合は、上下部消化管内視鏡や小腸内視鏡検査を行って、診断します。

治療としては5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調節剤チオプリン製剤といった従来の薬剤に加えて、免疫抑制剤タクロリムス、炎症を起こす特定の物質(サイトカインや接着因子)に対する生物学的製剤、JAK阻害剤などがあり、近年は作用機序が異なる新規薬剤が次々と承認され、治療の選択肢が大きく広がりました。これにより、重症例であっても、多くの症例が内科治療によって制御できるようになりました。

近年、日本ではIBD患者数が著明に増加しています。以前は10〜30代での発症が多かったのですが、現在、とくに潰瘍性大腸炎は高齢発症も珍しくありません。当院では2024年に潰瘍性大腸炎311名、クローン病145名の診療を行いました。

IBDセンター

IBDは難治性の疾患で、生涯にわたって治療する疾患です。当院ではIBD診療を充実させるため、2024年からIBDセンターとして診療しています。

IBD治療の選択肢が増えたことにより、これらを適切に使い分ける必要があり、時に専門的な判断を要します。当センターは日本炎症性腸疾患学会指導施設に認定されており、IBD専門医が中心となり、一人一人に最適な治療を検討します。

検査としては上下部消化管内視鏡の他、カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡(図2)で小腸病変の評価を行っています。

クローン病では、腸管狭窄や瘻孔などの合併症のために何度も手術を要する患者さんがおられます。手術の最も多い原因は腸管狭窄であり、できるだけ手術を避けるために、当院では十分な内科的治療を行ったうえで、ダブルバルーン小腸内視鏡などを用いて積極的に内視鏡的バルーン拡張術を行っています(図3)。腹痛や腹部膨満感などの狭窄症状があるクローン病患者さんにおいて、当院で腸管狭窄に対して内視鏡的バルーン拡張術を行った結果、52.4%の症例で手術を回避できました。

近年はIBDの内科治療が進歩したことによって、入院を要するほど増悪することが少なくなり、複雑な治療も含めて外来診療で治療していくことが増えました。このため当センターでは、外来患者さんについても、多職種でIBD患者さんを支える体制をとっています。新規治療や自己注射を開始する際に、IBD担当薬剤師が薬剤指導を行います。また管理栄養士による栄養指導も積極的に行いますので、希望される方は主治医にお伝えください。該当する患者さんについては、社会福祉士による療養相談の手配を行います。

さらにIBD合併症の関節症状や皮膚症状については、膠原病・リウマチ内科や皮膚科と緊密に連携します。また膠原病や自己免疫疾患の消化管病変の診療にあたります。


下記曜日にIBD外来を行っていますので、診察を希望される方は、かかりつけの医療機関を通じて予約をおとりください。

外来日と担当医

毎週火曜日(井上医師)・金曜日(森久医師)

すでに他院で治療を開始されている場合は、今後の治療方針を検討するにあたり、これまでの治療歴が大事な情報となりますので、必ず予約をとっていただきますようお願いいたしま

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