わたしたちは、みなさまの健康の危機を回避するべく尽力します。

神戸市立医療センター中央市民病院
救急科部長
有吉 孝一

当院は、1966年の救急告示病院として救急診療を開始し、1973年からは24時間365日の患者受入れを開始しました。また、1976年、当時の厚生省が3層構造からなる救急医療体制整備を進めるにあたって全国で指定した最初の4つの救命救急センターの内の一つです。

その後、全国では、約270の施設が順次救命救急センター指定を受け、現在に至っていますが、その中でも、当院は、厚生労働省の「全国救命救急センター評価」で、例年高い評価を得ています。

わたしたちの救急診療体制を支えてきたのは、受け入れ患者の選別は行わない、という理念です。当院は救命救急センターですが、わたしたちは三次救急に限定せず、一および二次救急、プレホスピタル・ケア (病院前救護)や災害医療まで、地域のみなさまが曝される健康の危機を、さまざまな場面で回避できるよう、お役に立つことを目指しています。さらに、医療の質を担保し、高度先進医療を追求し、急性期医療に関する研修教育の門戸を開放することも大切にしています。

上記の理念は、救急科が病院の一診療科として単独で実現できるものではありません。医療機関として多くの資源を投入してはじめて可能になるもので、イメージとしては、テレビドラマ『ER』に近いものです。救命救急センターは、さまざまな診療科や職種の人々の協力で成り立っています。救急科は、その核となり、救急初療からアドバンスドトリアージ、専門診療との調整、そしてクリティカル・ケア (集中治療)を担います。さらに、神戸市消防局や兵庫県と連携し、ドクターカーやヘリコプターを用いて医療スタッフを災害現場 (例:多数傷病者が発生した交通事故現場)に投入し、プレホスピタル・ケア (病院前救護)を担います。また、神戸市消防局や地域の医療機関とともに、メディカルコントロール (救急救命士が担う病院前救護の質を管理すること)を担います。

このように、わたしたちは、さまざまな診療科や多職種と協力し、common disease (日常の病気)から重篤な疾病まで、プライマリ・ケアから高度救命医療まで、さらに、病院前救護や災害医療まで、みなさまの健康の危機に関する幅広い課題に取り組みます。

わたしたちは、さまざまな診療科や職種の人々の協力しながら、
救命救急センターの核として、みなさまの健康の危機を回避するべく尽力します。

〈ER(Emergency Room:救急初療)〉

健康が危機に曝されていると感じられ、救急車を要請されたり、直接来院されたりして、当院を受診される方が診療を受ける場所です。受診の際は、まず、トリアージ(緊急度判定)を受けます。診療は、こども、妊娠中の方、耳や眼の症状を感じて受診される方を含め、救急科の医師が担当します。病状に応じて、緊急入院したり、さまざまな診療科の医師の診察を受けたり、かかりつけ医での診療継続を含めた今後の予定を立てたりします。

〈EICU(Emergency Intensive Care Unit:救急集中治療室)〉

健康の危機を感じてERを受診され、敗血症性ショック、くも膜下出血、重症呼吸不全や多発外傷など、特に重篤な生命の危機に直面し、生存のために、人工呼吸器、循環作動薬や緊急血液透析などを用いた全身管理が必要な方は、EICUに緊急入院し、クリティカル・ケア(集中治療)を受けます。EICUでは、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士や臨床工学技士などが関わる多職種の診療チームが治療に携わります。医師も入院中の診療を担当する科(主科)の医師と救急医が協力して、治療にあたります。

診療実績

診療科別統計

*2021年度の統計は2022年5月上旬に掲載予定です。

臨床評価指標ページ

主な疾患・治療法

初療救急

ER(Emergency Room:救急初療室)を受診される方が訴えられる健康の危機には、かぜ、下痢など、日常的によく遭遇する病気や医学的には緊急度が高くない病気から、急性冠症候群(不安定狭心症や急性心筋梗塞)や脳卒中 (脳梗塞や脳出血)など緊急度も重症度も高い病気まで、さまざまな状態が混在しています。

この不確実性の高い診療の場で医療の質を確保するため、わたしたちは、みなさまの感じられた健康の危機の緊急度を評価し、これを回避することを第一に診療を行っています。したがって、診療が、ERで完結しないことや、診察、検査や治療が他の診療科に期待されるようなものとは異なることがしばしばあります。たとえば、診断がはっきりせず、翌日以降の受診が必要だったり、インフルエンザの流行期には迅速検査を行わず診察のみで診断を下したり、診断書は後日文書窓口から依頼が必要だったりします。また、緊急入院での治療が必要な場合でも、病状やベッドの状況などによって、ERから直接他院に転院し、治療を受けていただく場合があります (転院先の選定は、ご要望を踏まえつつ、地域医療連携室とともに当方で行います)。

ERへの受診が必要かどうか、ご自身で判断がつかない場合は、「神戸市救急受診ガイド」をご参照ください。

生命の危機に瀕した方は、複数の臓器器官の機能が低下し、生体機能のバランスが崩れています。生命の危機を脱した後も、回復には長い時間が必要で、その程度もさまざまです。人工呼吸器関連肺炎やせん妄など、生体の状態や侵襲的な治療に関連した合併症を伴ったり、苦痛の緩和や看取りを治療の主軸に据えることが医学的に適当であると伝えられたりすることも少なくありません。

EICUでは、入室される方が、救命や蘇生を経て、入院前の生活を続けるほどに回復され、願わくは、さらなる健康を実現される最初のきっかけをつくることを目指しています。わたしたちは、入室される方を診療チームの要に据え、また、その方の人生の質を高めることを念頭に置き、治療にあたります。

地域のみなさまが曝される健康の危機を回避しようとするわたしたちの試みは、それが発生したその場、その時から始まっています。みなさまが救急車を要請された場合、救急救命士がそれを担います。多数傷病者が発生した交通外傷、重症外傷(例:高所転落や車外放出を伴うような交通外傷)、重症喘息発作やアナフィラキシーショックなどの危機に対し、わたしたちは、神戸市消防局や兵庫県の協力を得て、ドクターカーやヘリコプターを用いて、医療スタッフをその現場に投入し、救命・蘇生を試みます。
プレホスピタルケア 六甲山で山岳救助を行う神戸消防ヘリ

また、神戸市消防局や地域の医療機関とともに、メディカルコントロール(救急救命士が担う病院前救護の質を管理すること)を担います。

災害は日常的に生じています。地震、台風や大雨による土砂災害などの自然災害だけではなく、多数傷病者が発生するような交通外傷も災害の一種です。わたしたちは、東日本大震災や熊本地震のような激甚災害では、全国の他の組織とともに、発災後の48時間に特化したDMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)やその後の亜急性期を担う医療班に参加したり、多数傷病者が発生するような交通外傷(例:新名神高速道路有馬川橋橋桁落下事故[2016年4月22日])の病院前救護に携わったりしてきました。また、災害拠点病院として、将来、神戸市およびその他の地域で発生するかもしれない災害の傷病者を受け入れるため、病院をあげて、傷病者受け入れなどの訓練を行い、その時に備えています。

臨床研究

臨床研究

研究課題名 詳細(PDF)
push dose pressorsとしてのnorepinephrineの効果 PDF
救急外来におけるHelicobacter cinaedi感染症の臨床的特徴および治療戦略 PDF
救急外来における小児魚骨異物症例の臨床的特徴 PDF
JAAM 多施設共同院外心停止レジストリ PDF
眼周囲外傷に対する救急診療の在り方 PDF
高齢者(65歳以上)の三次救急例の事前リスク把握及びその予後についての調査 PDF
救急外来における処置時の鎮痛鎮静に対する多施設前向き観察研究 PDF
頭部CTで異常を認める意識清明な小児頭部外傷患者の臨床経過 PDF
高齢救急患者に関する調査 PDF
有熱性痙攣で救急外来を受診した成人患者に対する腰椎穿刺の必要性 PDF
日本集中治療医学会主催のICU入室患者登録システム事業への参画:患者情報システムを用いた集中治療部の機能評価(JIPAD 事業) PDF
病院前での血糖測定の必要性とバイタルサインとの関連性 PDF
マムシ咬傷に対するプレホスピタルでの対処法および医療施設での治療法および予後についての実態調査 PDF
マムシ咬傷に対するプレホスピタルでの対処法および医療施設での治療法および予後についての実態調査 PDF
熱中症患者の医学情報等に関する疫学調査 PDF
小児救急搬送症例のバイタルサインに関する多施設共同後方視的観察研究  PDF

見学・研修・人事採用などの問い合わせ

有吉孝一 救命救急センター長 kobe99@kcho.jp まで

その他の救急部スタッフにもご遠慮なくご相談ください。

後期研修(専攻医)について

特徴

本院での救急診療は1966年の救急告示病院として始まった。さらに1973年からは通年終日体制による救急患者の積極的受け入れを開始した。この救急診療体制構築にあたり医師の卒後臨床研修プログラムを組み込むことで、活気あふれる急性期型高度医療機関へと大きくシフトした。1976年、厚生省は3層構造からなる救急医療体制整備を進めるにあたって、全国で4医療機関を救命救急センターとして第一次指定した。当院がその内の一つであり、以後174施設が順次救命救急センター指定を受け現在に至っている。

この間、当院では以下の理念で救急診療体制を独自に整備してきた。先ず、患者の重症度による受け入れ選別は行わない。救命救急センターではあるが三次救急患者だけに限定せず、一次・二次救急などあらゆる救急医療需要に対応する。第二に、救急といえどもその医療品質を担保し、救急の高度先進医療を追求する。第三に、これらの急性期医療に対する研修教育の門戸を広く開放する。

これだけのことは、救急部が病院の1部門として独立して行い得るものではない。医療機関として多くのリソースを投入してはじめて可能になるものである。各部署の協力体制のなかで救急部はその核となり、救急初期診療からアドバンスドトリアージ、救急特有疾患・病態に対応し、また各科専門処置へのコーディネーションをする。研修医救急診療教育を担当する。ドクターカー・ヘリコプターを用いて医療スタッフを現場投入しプレホスピタルケアを担う。救急救命士教育を通じて地域のメディカルコントロールシステムを主導する。災害発生時現場での緊急医療展開部隊となる。これらの多様な役回りを求められた結果、活動状況は概略以下のとおり。受け入れ救急患者数4万余人/年、救急車搬入患者数約7000人/年、救急入院患者数5,300人/年、ドクターカー(ヘリ)出動230件余。イメージとしてはテレビドラマ『ER』に最も近い。130余名の各科専門医と70余名の研修医・専攻医が一緒になって、総合高度救急医療を全912床を使って展開しており、地域住民からの信頼を得ている。

豊富で偏りのない救急症例での研修を求めて応募してきた研修医は全国から170余名。彼らを指導教育しながら、より高度の救急医療の総合的知識と技能を身につけ、健康危機管理に対する幅広い見識を涵養できる人材を求めている。経験・出身医局など些細なことは勿論問わない。3年間の研修、救急医学会専門医(認定医)資格取得後スタッフ採用の機会もあり、地域救急医療の将来の指導者として期待されている。

一般目標

  1. プライマリケア、クリティカルケア、プレホスピタルケアにおける知識技能の修得
  2. およびそれらの研修医・コメディカルに対する教育研修
  3. 救急医療システム、災害医療体制の理解
  4. 3年間の救急総合診療専従による日本救急医学会専門医(認定医)資格取得

年次スケジュール

1年目

  1. 救急疾患・病態への初期対応,基本技術を修得
  2. ACLS, JATEC, BTLS(JPTEC), PALSの修得
  3. ドクターカー,ドクターヘリへの対応
  4. 研修医・コメディカル教育
  5. 学会発表・論文作成
  6. 院外研修(兵庫県監察医務室、他施設等、応相談)
  7. 専門診療科での院内研修(応相談)

2年目

  1. 専攻医・研修医・コメディカル教育
  2. クリティカルケアの知識・技術の修得
  3. ACLS, JATEC, BTLS(JPTEC), PALSインストラクターとしての活動
  4. 地域消防機関の生涯教育担当
    • 救急救命士養成所での講義・実習指導
    • 救急外来,ドクターカー,ドクターヘリでの救急救命士教育
  5. 災害医療研修会、準備と実践
  6. 学会発表・論文作成
  7. 専門診療科での院内研修(応相談)

3年目

  1. 専攻医・研修医・コメディカル教育
  2. 災害医療派遣
  3. 日本救急医学会専門医準備
  4. ACLS, JATEC, BTLS(JPTEC), PALSインストラクターとしての活動
  5. 学会発表・論文作成、およびその指導
  6. 院外研修(応相談)

※ACLS: Advanced Cardiac Life Support
※JATEC: Japan Advanced Trauma Evaluation and Care
※BTLS: Basic Trauma Life Support
※JPTEC: Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care
※PALS: Pediatric Advanced Life Support

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