現在当院では、感染症指定医療機関として、また兵庫県が指定する「新型コロナウイルス感染症重症等特定病院」のひとつとして、その責任を全うするべく、病院を挙げて新型コロナウイルス感染症の治療に取り組んでおります。
新型コロナウイルス感染症患者の入院状況(5月8日現在)
延べ入院患者数 | 92人 |
---|---|
退院者数(陰性後の転棟含む) | 66人(うち宿泊療養施設への退院30人) |
現在の入院者数 | 26人(感染疑いの患者を除く) |
同感染症の入院病棟は、重症患者用及び中等症患者用それぞれに、1病棟ずつ割り振っています。これらの病棟は同感染症患者(診断確定)に特化して運用しており、先般、同感染症の確定に至らない疑い例の増加に対応するため1病棟を追加したところです。
このように、同感染症対策に多くの人的・物的医療資源を費やしており、これまで様々な疾患に対応していた診療機能については、救急診療を含めて多くを制約せざるを得ない状況にあります。
当院の再開までの診療体制(5月8日まで)
救急診療
(受け入れ中)
●重症の新型コロナウイルス感染症患者
●小児科及び産婦人科のホットライン
(停止中)
●上記以外の救急搬送
●救急外来
入院および外来
●新規の受け入れは停止中
手術
●停止中
院内感染の状況
現在、病院内で新型コロナウイルス感染症に感染したと考えられる方は、患者で7人、職員で28人の合計35人です(職種別の内訳は下表参照)。
2020年5月8日現在
人数 | |
---|---|
医師 | 2人 |
看護師 | 19人 |
理学療法士 | 1人 |
臨床工学技士 | 1人 |
ナースエイド | 3人 |
協力法人スタッフ | 2人 |
合計 | 28人 |
そのような中、当院では市中における同感染症の急速な拡大、院内感染の発生などの状況を踏まえ、4月16日に新型コロナウイルス感染症対策本部を強化しました。ICT(感染症対策チーム)や感染症科、呼吸器内科等を統括し、救急部門、中央管理部門も含め病院全体での情報共有と方針の統一を断行しております。
また、4月14日には神戸市保健所による監視を、4月17日には外部の専門家による視察も受け、当院からは院内感染の発生状況や現場での対応状況、院内組織の連携体制や再発防止策などについて説明し、助言をいただいております。
なお、この度の院内感染の拡大により、発症者と濃厚接触の可能性のある職員約330人について、4月7日より順次、自宅での2週間の健康観察としました。そのうち9名が観察期間中に発症し、PCR検査の結果、陽性となりました(職種別の自宅待機状況は下表のとおり)。
自宅待機者(内訳)
延べ人数 | 復帰済み | 待機中 | |
---|---|---|---|
医師 | 30人 | 28人 | 2人 |
看護師 | 228人 | 202人 | 26人 |
理学療法士 | 12人 | 8人 | 4人 |
臨床工学技士 | 36人 | 34人 | 2人 |
ナースエイド | 5人 | 5人 | 0人 |
協力法人スタッフ | 23人 | 17人 | 6人 |
合計 | 334人 | 294人 | 40人 |
これからの新型コロナ感染症対策と神戸市立医療センター中央市民病院の使命
(1)院内感染の早期終息に向けた取り組み
院内感染の早期終息に向け、職員が一丸となり、下記の取り組みを実施しています。これらの取り組みにより、感染拡大の囲い込みに成功していると考えており、新たなアウトブレイクは発生しておりません。引き続き、以下の取り組みを徹底してまいります。
【感染拡大防止策について】
①院内感染未然防止策
●院内マスク着用の義務化、手指消毒の徹底、事務スペース・休憩スペースの分散化、出勤時間、
休憩時間の分散化など、院内の感染を未然に防ぐ取り組みのさらなる強化
●N95マスクやPPE等の着脱訓練をこれまで以上に実施。
②院内感染の拡大を防御する取り組み
●院内感染が発生した際は、感染管理チームが迅速に聞き取り調査を行い、感染リスクの高い職員は
必ず自宅待機にさせるなど、感染拡大防御策を徹底。
●風邪症状など体調の悪い職員は、上司に報告のうえ積極的な休暇取得を指示。
●入院患者や職員に新型コロナウイルス感染症が疑われる症状が出現した場合は、速やかにPCR検査を実施。
③新型コロナウイルス感染症患者に特化したエリア・組織作り
●新型コロナウイルスの入院患者には、人工呼吸器が必要な重症患者用のエリア、軽中等症患者用の病床など
症状別に専用病棟を設置して診療。また、新型コロナウイルスへの感染が疑われるがPCR検査で陰性となった
患者を一定期間受け入れる、コロナ疑い患者専用病棟も設置。
●新型コロナウイルス感染症患者とそうでない患者が接することがないよう、慎重に病棟を管理。
また疑い患者に対しても、医療スタッフは完全な感染防護にて対応。新型コロナウイルス感染症患者の
診療には、各診療科から選抜された「COVID 診療合同チーム」を結成して対応。
●重症の新型コロナウイルス感染症患者への看護体制を、通常の2:1から1:1に、また中等症の患者については
通常の7:1から4:1にするなど、看護師の負担軽減を図るとともに、より安全な医療の提供に努めている。
(2)診療体制の早期回復に向けて
現在も進行する同感染症パンデミックに対応し、神戸市民の不安を解消するため、現在当院では、新型コロナウイルス感染症の重症患者の収容人数を約50人まで拡大し、感染症指定病院としても責務を果たしてまいります。
一方、神戸圏域の医療崩壊を防ぎ、市民の皆さまが安心できる医療体制を地域の医療機関と一体となって構築してまいります。そのためにも、地域医療機関との連携・分担の推進が一層必要となってまいります。関係先の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。
病院機能の縮小に伴い、現在、多くの方に手術や診察をお待ちいただいている状態です。今後、体制が整い次第、順次再開してまいりますが、日々不安なお気持ちの中、長い期間にわたりお待たせしていることを、心よりお詫び申し上げます。
当院の使命は、総合的かつ高度な医療を安全に提供することです。一刻も早く当院本来の姿を取り戻せますよう、感染防御策の徹底及び職員の健康維持にしっかり取り組み、新型コロナウイルス感染症対策との両立を推進してまいります。そして、院内の体制を立て直し、外来診療を含む従来の病院機能の復元を図るべく努力をしてまいりますので、ご不便・ご迷惑をおかけしますが、今しばらく再開をお待ちくださいますよう、お願い申し上げます。
神戸市立医療センター中央市民病院 院長 木原 康樹