2025年1月

論文タイトル
Facial artery bulb as a landmark for transoral robotic surgery in oropharyngeal carcinoma  (中咽頭癌に対する経口ロボット手術におけるランドマークとしての顔面動脈膨大部)
更新日/部位/テーマ
2025年1月6日/中咽頭/解剖
ポイント
Facial artery bulb
翼突鈎より約4cmの位置にあり、茎突舌筋の下外側に位置
舌動脈と間違われる場合がある
扁桃への上行口蓋動脈、扁桃動脈が分岐
私見
経口腔ロボット手術の際、茎突舌筋の切除範囲を確認するときの重要な目印になると考えています。
雑誌
Head and Neck, 2019.  https://doi.org/10.1002/hed.25862

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論文タイトル
Delayed Postoperative Radiotherapy in Head & Neck Cancers—A Systematic Review and Meta‐Analysis (頭頸部癌における術後放射線治療の遅延—系統的レビューとメタ分析)
更新日/部位/テーマ
2025年1月7日/頭頸部一般 / 放射線治療
ポイント

術後放射線治療の遅延(PORT遅延)は頭頸部癌の予後を悪化させる
 ・術後42日以内に放射線治療を開始することで全生存率(OS)が
  改善(aHR: 1.04, 95% CI: 1.03–1.06)
 ・42日以内のPORTは無病生存率(DFS)にも寄与
  (aHR: 1.31, 95% CI: 1.01–1.71)
 ・HPV陽性中咽頭癌患者では遅延の影響が小さい可能性
 ・PORT遅延が局所再発率(LRR)を増加させる一方、局所再発(LR)には
  大きな影響が見られない
私見
術後放射線治療を42日以内に開始する重要性は以前から指摘されていましたが、本研究はより大規模なデータと最新の解析手法を用いて、42日ルールの妥当性を改めて支持しています。また、HPV陽性患者の治療スケジュールを柔軟に考える余地を示唆しており、患者個別化医療の実現に貢献する可能性があります。
当院で扱う頭頸部癌治療との関連性
当院では術後放射線治療の適時性を重要視しており、手術後6週間以内に治療が開始できるよう努めています。
雑誌
The Laryngoscope, 2025年. https://doi.org/10.1002/lary.31990

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論文タイトル
Mobilization of the Maxillary Lateral Buttress to Connect the Infratemporal Fossa and Buccal Space in Sublabial Approaches
更新日/部位/テーマ
2025年1月7日/頭蓋底/手術/解剖
ポイント
上顎洞前壁と外側壁の移行部のbuttressを削除することで、経口腔前庭から側頭下窩腫瘍へのアプローチが容易になる
私見
Maxillary Lateral Buttreを切除しなくても側頭下窩には経口腔前庭よりアプローチ可能ですが、切除することで手術器具の操作性が向上しそうです。
当院で扱う頭頸部癌治療との関連性
当院では以前より側頭下窩腫瘍に対しては経鼻手術か経口腔前庭手術を行い、低侵襲化に努めていますが、同手技は経鼻と経口腔の併用手術時の術野確保に役立ちそうです。
雑誌
The Laryngoscope, 2024年.https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/lary.31930

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論文タイトル
Coffee and tea consumption and the risk of head and neck cancer
(コーヒーや紅茶の摂取と頭頸部がんのリスク)
更新日/部位/テーマ
2025年1月7日/頭頸部一般 / 疫学
ポイント
カフェイン入りコーヒー
 ・1日4杯以上の摂取で頭頸部がん全体のリスクが17%低下
 ・口腔がんで30%、咽頭がんで22%リスク低下
 ・下咽頭がんでは1日3–4杯で41%リスク低下
デカフェコーヒー
 ・1日1杯以上の摂取で口腔がんリスクが25%低下
紅茶
 ・下咽頭がんのリスクが29%低下
 ・1日1杯以下の摂取で頭頸部がん全体のリスクを減少させる一方、
  1日1杯以上の摂取で喉頭がんリスクが38%上昇
私見
コーヒーや紅茶に含まれる抗酸化物質が頭頸部がんの予防に役立つ可能性を示唆する結果です。特にカフェイン入りコーヒーの摂取が有益である一方、紅茶の摂取においてはリスクが両極化しており、さらなるメカニズム解明が必要と考えます。
当院で扱う頭頸部がん治療との関連性
食生活におけるコーヒーの適切な摂取指導を行うための科学的根拠として活用可能かもしれません。
雑誌
Cancer, 2024. https://doi.org/10.1002/cncr.35620

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論文タイトル
Post-diagnosis statin use and survival among head and neck cancer patients: a cohort study in a universal health care system
(診断後のスタチン使用と頭頸部がん患者の生存率:ユニバーサルヘルスケアシステムにおけるコホート研究)
更新日/部位/テーマ
2025年1月20日/頭頸部一般/疫学
ポイント
頭頸部扁平上皮癌診断後、スタチン内服の累積使用期間1年増加ごとに死亡リスクが30%低下するとの報告。診断前から内服している例では1年内服で死亡リスクが69%低下
私見
スタチンは、高脂血症に対する薬剤ですが、抗がん作用(腫瘍の増殖抑制、アポトーシス誘導、血管新生抑制)があると基礎研究で示されています。しかし、1年という短期間でこれほど大きな影響を与えることは、既存のエビデンスと比べて非常に大きく、驚きです。今後の臨床応用が期待されます。
当院で扱う頭頸部がん治療との関連性

雑誌
British Journal of Cancer, 2024年
https://doi.org/10.1038/s41416-024-02925-y

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論文タイトル
Survival Outcomes of an Early Intervention Smoking Cessation Treatment After a Cancer Diagnosis
(がん診断後の早期介入禁煙治療による生存率の向上)
更新日/部位/テーマ
2025年1月20日/がん一般/疫学
ポイント
喫煙がん患者は、がん診断後6ヵ月以内に禁煙治療を開始すると生命予後が改善する
私見
診断直後よりの禁煙治療を標準がん治療の一環とすることで、患者の生存率を向上させ、治療成果を最適化することができそうです。
当院で扱う頭頸部がん治療との関連性
喫煙は飲酒と並ぶ、頭頸部がんの二大発癌リスクです。がん治療を開始するにあたっては、治療効果を高め治療合併症リスクを低下させるために禁煙が必須となります。
雑誌
JAMA Oncology, 2024年12月
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/fullarticle/2825251