当院の小児科は小児病棟29床を有し、小児科外来および併設の救命救急センターで、神戸市における小児の急性期医療に対応しています。
外来は月曜日から金曜日まで2~3診体制で、午前中は一般外来及び専門外来、午後は専門外来、乳児健診およびハイリスク児を対象とした各種予防接種を実施しています。
救命救急センターでは、夜間や休日を含めて毎日24時間小児科専門医が当直待機して、小児救急患者を受け入れ、緊急処置にあたっています。
専用電話回線「小児科ホットライン」を通して地域の医療機関といつでも連携し、ご紹介を受けられる態勢をとっています。
小児科各分野の高度専門医療に力を注ぎ、専門医を中心にチーム医療を行っています。感染症分野では抗生剤の適正使用に留意し、必要十分な治療を行うように心がけています。
小児病棟は1人部屋を中心とした病棟構成で、感染で隔離が必要な児や、免疫抑制剤の使用などで治療上免疫が低下し感染予防が必要な児の隔離に対応しています。小児病棟にはプレイルームやキッズガーデンを設置し、生活環境に配慮しています。
痛みを伴う処置に対しては十分な鎮痛鎮静処置を行うとともに、看護師による「プレパレーション」、「ディストラクション」といった対応をすることで苦痛を減らす工夫をしています。
診療は医師の間だけではなく、各職種との連携を重視したチーム医療を基本としています。
〈病棟回診と看護ミーティング〉
〈シミュレーショントレーニング〉
〈カンファレンス〉
診療実績
診療科別統計
主な疾患・治療法
小児アレルギー・免疫疾患
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、SLE・若年性特発性関節炎などの膠原病、アレルギー性紫斑病、各種の免疫不全症など。
食物負荷試験
スキンケア指導
アレルゲン免疫療法
小児感染症
呼吸器感染症(肺炎、細気管支炎、クループ症候群、百日咳など)、消化器感染症(ウイルス性胃腸炎、O157やサルモネラなどの細菌性腸炎、肝炎など)、髄膜炎(細菌性、ウイルス性)、麻疹・風疹・水痘・ムンプスなどの合併症、溶連菌感染症、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)・蜂窩織炎などの重症皮膚感染症、法定感染症(第1~5類)、化膿性骨髄炎・関節炎、敗血症、不明熱など。隔離が必要な患者も引き受けています。COVID19感染症についても4年間で216例の入院を受け入れました。
循環器疾患
川崎病(および心合併症)、心雑音や心電図異常の精査、不整脈、心筋症、高血圧、高コレステロール血症など。QT延長症候群などの致死的となりうる不整脈の遺伝子診断も行なっています。
内分泌疾患
糖尿病、成長ホルモン欠損性小人症、尿崩症、種々の甲状腺機能異常、思春期早発症など。
腎尿路系疾患
急性腎炎、ネフローゼ症候群、尿路感染症、HUS、尿路奇形など。
血液疾患
各種の血小板減少症、血友病などの血液凝固障害など。
神経疾患
熱性けいれん、てんかん、発達障害など
臨床研究
臨床研究の実施に関するお知らせ
現在小児科では、下記の臨床研究を実施しています。これらの研究では、患者さんの日常診療で得られたデータ(情報)を利用させていただきます。
研究の計画や内容などについて詳しくお知りになりたい方、その他ご質問がある方は、「問い合わせ先」へご連絡ください。ご自身のデータが研究に利用されることについて異議がある場合は、情報の利用や他の研究機関への提供をいつでも停止することができます。
研究課題名 | 説明文 (PDF) |
熱性けいれんの暫定診断で入院した患者における急性脳症・脳炎の頻度と臨床的特徴に関する検討 |
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ナッツ類アレルギーの診断における新規アレルゲンコンポーネントの臨床的有用性の検討 | |
小児喘息重症度分布と治療の経年推移に関する多機関調査 | |
本邦で診断された自己炎症性疾患の臨床情報に関する全国調査 | |
定型負荷試験食を用いた食物経口負荷試験のレジストリー研究 | |
川崎病初期治療における中用量以上アスピリンとアスピリン不使用との治療成績比較:後向き観察研究 | |
血液凝固異常症全国調査 | |
食物アレルギーにおけるIgD・IgG4抗体の役割の検討 | |
血液型不適合性黄疸に対するガンマグロブリン製剤投与の実態調査 | |
小児への皮下免疫療法における治療効果と免疫応答の関連についての観察研究 | |
当科で経験した運動誘発アナフィラキシーの検討 | |
食物経口負荷試験によるアナフィラキシー症例に関する調査 | |
若年者心疾患・生活習慣病対策協議会突然死調査委員会研究事業(委員長:神戸市立医療センター中央市民病院 山川勝) 日本救急医学会多施設共同院外心停止レジストリに基づく若年者院外心肺停止および心肺蘇生状況の解析(進行中) |
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小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)患者から分離された肺炎球菌株の莢膜血清型分布及び薬剤感受性に関する多施設共同観察研究 | |
小児におけるB群連鎖球菌感染症ナショナルサーベイランス | |
先天代謝異常症症例の遺伝子変異を同定後、経過観察調査をおこなう研究 |
全般的な検査
- 血液検査、尿検査
- 単純X線写真、CT、MRI
- 超音波(エコー)検査
- 核医学検査
- 遺伝子・染色体検査・血液検査、尿検査
呼吸器疾患
- 呼吸機能検査
- 終夜睡眠ポリソムノグラフィ
神経・筋疾患
- 脳波、長時間ビデオ脳波
- 持続脳波モニタリング
- 聴性脳幹反応
- 筋電図、神経伝導速度
- 髄液検査
- 筋生検、神経生検
腎・泌尿器疾患
- 精密尿検査、蓄尿検査
- 腎生検
循環器疾患
- 心電図、長時間連続心電図
- 運動負荷心電図
- 心臓カテーテル検査
消化管・肝胆膵疾患
- 消化管造影検査
- 24時間食道胃pHモニタリング
- 消化管内視鏡
免疫・アレルギー疾患
- 気道過敏性試験、気道可逆性試験
- 呼気NO検査
- 食物負荷試験
- 皮膚プリックテスト
血液・腫瘍疾患
- 骨髄検査
感染症
- 細菌培養、抗菌薬感受性検査
- ウイルス分離
お知らせ
医師、医師を目指す方向け当科のご紹介
※本コンテンツは、医師の方を対象とし、当医療機関についての理解を深めていただけるよう作成しているものであり、一般の方を対象とする宣伝・広告等を目的としたものではありません。 はじめまして、神戸市立医療センター中央市民病院小児科の鶴田 悟(つるた さとる)と申します。
当科では各分野の高度専門医療に力を注ぎ、専門医を中心に各職種との連携を重視したチーム医療を行っております。今回はその取り組みについてご紹介いたします。診療でお困りのこと、先生方の担当患者さんでご紹介を検討されている場合など、ぜひご相談ください。
鶴田 悟
小児科 部長
当院の小児科について
当院は神戸市の南、ポートアイランドにある768床の総合病院で、小児科は主に小児の急性期疾患、新生児疾患を対象に医療を行っています。
小児科病棟29床、新生児センター(NICU9床、GCU12床)を有し、年間入院数はおおむね一般小児1,500名、病的新生児300名前後となっています。小児科部門・新生児科部門を併せてスタッフ13名、専攻医5名の18名体制で小児救急とNICUで24時間対応できる体制をとっています。
小児救急にも積極的に取り組んでおり、地域の先生とホットラインで直接ご相談いただける体制をとっており、24時間365日受け入れ可能となっています。
具体的な利用方法につきましては当院地域医療連携センター(代表:078-302-4321)までご連絡ください。
(※ホットラインは地域の医療機関の先生方と当院小児科医との直接の連絡用となっており、患者さんやその家族からのご相談には対応していません)
また、若手の教育にも力を入れており、小児科専門医としての十分な知識と技術を習得できるように独自の小児科専攻医育成プログラムに従って指導・教育しています。
新型コロナウイルス流行により全国的に小児科は受診控えに加え予防接種や健診のスケジュールの遅れ、さらに長期の自粛、行動制限による家庭内虐待増加など多くの問題を抱えています。
当院でも成人中心に多数のCOVID-19の患者さんを受け入れていますが、一般の患者様にも安心して受診していただけるように感染対策には十分配慮して対応しています。また、地域の行政や他の小児医療機関と協力して小児医療に歪みができないよう、努力したいと考えています。 小児科は対象となる年齢層の患者さんに対して総合的な医療を行う診療科ですが、当科の特徴となる各分野について下記に責任者より紹介してもらいました。
また、若手の専攻医から当科の小児科専門医育成プログラムを紹介してもらっていますので、小児科専門医をめざす初期研修医の先生方は是非当科のプログラムを検討してください。病院見学も大歓迎ですので連絡お待ちしています。
患者指導に力を入れるアレルギー部門
国民の半分が何らかのアレルギーを持っていると言われる現代において、小児期にアレルギーへの適切な対処法を身につけておくことは、その後のその患者さんの人生を大きく左右します。当院は兵庫県アレルギー疾患医療拠点病院として地域のアレルギー診療に貢献しています。
急性期病院のため、入院患者は喘息急性増悪やアナフィラキシーが多いですが、全てのアレルギー疾患に対応可能です。多職種で患者指導にも力を入れており、診療ガイドラインに準じた標準治療を地道に行うことを心がけています。
食物アレルギーは乳児期から食物経口負荷試験を行い必要最小限の除去指導を行い、早期除去解除を目指します。軽症から重症まで対応可能ですので、お気軽にご紹介いただければ幸いです。特に1歳の誕生日の時点で完全除去を要するような場合は是非ご紹介ください。
アドヒアランス不良含めたコントロール不良な喘息やアトピー性皮膚炎の患者さんには、疾患自己管理できるように患者教育を繰返し行います。生物学的製剤導入も可能です。
舌下免疫療法で副作用が強く続けられない患者さんには、導入を工夫したり皮下法で導入したりしてアレルゲン免疫療法を導入しておりますので、アレルギー疾患でお困りの患者さんがいらっしゃいましたら、気軽にご紹介ください。
また、アレルギー性鼻炎で勉強に集中できなかったり睡眠障害があったりする患者さんも是非ご紹介ください。ある程度安定された患者は基本的には逆紹介させていただきますので、宜しくお願いします。
早期診断から予後のフォローまで手厚い循環器部門
神戸市では1972年に学校心臓検診が開始されました。当科は一斉検診導入時から神戸市教育委員会・兵庫県予防医学協会と連携を取りながら心疾患の正確な診断と適切な管理に努め、学校管理下突然死の防止に注力してまいりました。現在も年間約50人の二次検診抽出者の診断・管理を行っています。
学校検診と並び、胸痛、動悸、失神などの原因精査は致死的心疾患の重要な診断機会となります。当科では心エコー検査、トレッドミル検査、24時間心電計に加えて、1週間記録可能な長時間ホルター心電計により、診断パフォーマンスの向上に努めています。また遺伝性不整脈や家族性脂質代謝異常については、専門機関の協力のもと積極的に遺伝子検査を行い、患児の管理・治療のみならず、家族内未診断患者の検索に努めています。
若年突然死の原因となる心疾患は、運動制限や投薬、学校現場体制整備によるCPR・AED発動促進、家庭内AED設置など、適切な管理を行うことによってイベント回避・救済の可能性があり、当科では検診後予防介入中の心室細動無後遺症救命例を過去5例経験しています。軽い胸痛や短時間の動悸の様な一見すると些細な症状であっても、イベント発生前の診断機会となりますので是非ともご紹介ください。 川崎病に関しては神戸市内を中心に広い範囲から患者さんをご紹介いただいており、入院数は年間50〜60人に上ります。初回ガンマグロブリン投与は平均5.0病日に行われ、病日や不応リスクを鑑みてステロイドを併用しています。
川崎病の最重要アウトカムである冠動脈合併症については、休日・夜間入院であっても迅速に評価を行い遅滞なく治療を開始できる体制です。
「川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン」に沿って全例に対して入院時、10病日前後に加え必要時、退院時、発症後1ヶ月・2か月時点および発症後5年まで年1回、循環器科担当医が心エコー評価を行っています。
川崎病主要症状が2-3症状程度しか見られず、速やかに自然解熱した不全例あるいは疑い例についても、複数回の冠動脈評価を施行しています。治療不要な不全例・疑い・軽症例であっても、心エコー評価目的にご紹介ください。
あらゆるハイリスクケースに対応する新生児部門
当院の新生児センターは、NICU(新生児集中治療室)9床、GCU(新生児回復室)12床からなる新生児センターです。兵庫県周産期医療ネットワークの一員として、主に神戸市医療圏産科施設からの母体・新生児搬送に対応しています。救命救急センター併設総合病院の中にあって、産科、MFICU(母体胎児集中治療室)とともに総合周産期医療センターを構成し、切迫早産、異常妊娠・分娩などの産科合併症母体や内科・外科合併母体(心血管疾患、免疫血液疾患、腎疾患、感染症など)からのハイリスク出産から出生する児に対して、母体・胎児医療の延長線上にある新生児医療に取り組んでいます。
また、母親あるいは両親とも精神疾患をかかえているメディカルハイリスクや若年出産や未受診妊婦の飛び込み出産などのソーシャルハイリスクのケースなど他院では受け入れが困難な母体から出産した児などの対応も行っています。当総合周産期センターでは、年間約800人の方が分娩され、そのうち、約300例の新生児が新生児センターへ入院しています(新生児搬送は年間約20例程度)。
当科の小児科専門医育成プログラムについて
当科では専攻医が主治医となり、主体的に診療を行なっています。また一般外来や救急外来でも豊富な症例をもとに多くの経験を積むことができます。特に当院の救急外来はER型救急医療であり、1次から3次まで多彩な症例を診療する機会に恵まれています。スタッフの先生方にご指導をいただきながら、多くの経験や学びを得る日々が自身の糧となっています。
また臨床診療のほか、スタッフの先生方からのレクチャーや、専攻医が担当するレクチャー、救急小児疾患シミュレーション、輪読会なども定期的に行い、学びを日々の診療に還元できるよう努めています。他にも兵庫県立こども病院と兵庫県立尼崎総合医療センターと合同で勉強会を行ったりしています。
専攻医の担当するレクチャーは、自分自身の経験した症例をまとめ、学んだことをアウトプットできる場となっており、疾患や病態への知識がより強く定着していることを実感できます。
今年度は新型コロナ感染症のため激動の年となりましたが、当院で経験できたことはとても鮮明に焼きつき、一生忘れることのできない一年間となりました。
当科での研修に興味を持っていただける方はぜひ一度見学にいらしてください.一緒に働けることを楽しみにお待ちしております!
先生方へのメッセージ
新型コロナ流行により学会・研究会も中止になったりオンラインになることで残念ながら地域の先生方と直接お話しできる機会が減っています。自粛ムードの中で育児に不安を抱えたご両親が気楽にかかりつけの先生方に相談することも難しくなってきています。こういった状況の中で小児医療を後退させないために今まで以上に積極的に地域の医療機関・健康福祉機関との連携が必要であると考えています。ご協力よろしくお願いします。