乳腺外科

乳腺外科部長 加藤大典

神戸市立医療センター中央市民病院
乳腺外科部長
加藤 大典

乳癌を発症する人の割合(罹患率)は増加を続けています。増え続ける乳腺疾患の患者さんの診療が円滑に進められるよう、平成24年4月より、外科の一部門から、乳腺外科として独立しました。乳癌の検診において、マンモグラフィは一つの柱です。ごく初期の乳癌は、しこりを形成せず、砂粒のようなカルシウムの沈着を形成することがあります。カルシウムの沈着(石灰化)を検出するのにマンモグラフィは鋭敏であるため汎用されているのですが、癌以外の病変でもカルシウムの沈着は見られますので、診断を確定するためには、カルシウムの沈着した部位の組織を採取して、顕微鏡による検査(病理検査)を行わなければなりません。現在、癌の疑いがある石灰化部位の組織採取法で、最も優れているのは、ステレオ透視下のマンモトーム生検です。当院では、採取した組織に石灰化が含まれていることを確認する装置を含め、最新鋭の装置が備わっていて、多くの乳癌専門施設からマンモトーム生検のための患者紹介を受け、精密検査を施行しています。

乳癌の診断において、超音波検査は大変重要ですので、当院では従来の超音波検査法に加えて、微小石灰化を映し出す検査法(マイクロピュア)と組織の硬さを映し出す検査法(エラストグラフィ)が可能な装置を備えています。これによって、癌の疑いがあるしこりを見つけやすくなり、針を刺してしこりの一部を取って検査をする場合、どの部位を刺して取るべきかがわかりやすくなりました。

組織の病理検査、超音波検査、マンモグラフィ、MRIなどから乳癌の広がり、性質を診断し、手術のやり方(「乳房を全部取るか(乳房切除術)、乳房の一部分を取るか(乳房温存手術)」「転移する可能性のある脇の下のリンパ節をほぼ全部取るか(腋窩リンパ節郭清)、癌から最初に流れ込むリンパ節を取って癌が転移しているかどうかを調べるか(センチネルリンパ節生検)」)を決めていきます。患者さんの希望と勧められるやり方に隔たりがある場合、切除した組織の病理検査結果によっては再手術が勧められる場合もあり得ることを理解していただき、患者さんの納得されるやり方を選んでいます。 乳房温存手術は、「乳輪外縁、または乳房外縁に沿った皮膚切開からの乳腺部分切除、切ったところに癌細胞が無いことを手術中の病理検査で確認、脇の下に小さな皮膚切開を入れて、癌病巣から最初に流れ込むリンパ節(センチネルリンパ節)に癌の転移が無いかどうかを調べる」、というやり方が基本です。乳癌を治すことを最優先させながら、欠損部の補填のため、周囲の脂肪を移動させたり(lateral tissue flap法)、腹部の脂肪を真皮とともに移植したりして(遊離真皮脂肪移植法)、乳房の美容を出来るだけ保つようにしています。

乳房切除後の乳房再建は、形成外科医と協力して、同時(1期的)再建、2期的再建どちらでも施行可能ですが、乳癌の手術の時は組織拡張器を胸部に入れ、後日乳房を再建するという、2期的再建をお勧めしています。それは、手術による治療、抗癌剤による治療(化学療法)、女性ホルモンをおさえる薬による治療(ホルモン療法)、放射線による治療と、乳癌の治療が集中して続く可能性があり、治療の理解、同意と乳房再建の選択、決断とを並行して進めることが難しいためです。治療が一段落ついた時点で、乳房再建の様々な選択肢を形成外科医から説明していただき、時間的余裕のある状況下で、理解、選択、と進んだ方が患者さんは十分納得するからです。乳房再建には、保険が適応される術式と、適応されない(自由診療)術式があり、2期的再建はどちらの術式にも対応しやすい進め方です。

センチネルリンパ節を見つける方法として、従来の色素法に加えて、ICGという色素と特殊なカメラを使うICG蛍光法と呼ばれる方法を、前任の正井良和医師たちが開発し、改良してきました。ICG蛍光法は、従来の色素法に比べ、リンパの流れを追跡しやすく、最初に流れ込むリンパ節の場所を絞り込みやすい方法です。ラジオアイソトープ法と組み合わせることによってセンチネルリンパ節をより見つけやすく、取り残しが無いようになりました。

乳癌治療は外科治療、化学療法、ホルモン療法、放射線療法を適切に組み合わせることによって成績が向上します。針で一部を取った腫瘍や手術で全部を取った腫瘍の病理検査を病理診断医と検討し、手術中心ではない集学的な治療によって成績の向上を目指しています。