心臓血管外科

心臓血管外科部長 小山忠明

神戸市立医療センター
中央市民病院

心臓血管外科部長
小山 忠明

心臓血管外科 概要

当院は神戸市の基幹病院として市民の健康と安全を守るために、質の高い医療を安全に提供することを基本理念としていますが、特に循環器疾患は生命と直結し待ったなしの対応が必要となる領域です。当科では24時間、365日心臓血管外科医が病院で待機し、成人循環器領域のあらゆる疾患に迅速な対応が可能となっています。現代の先進医療では単科だけでなく他科、他職種と連携したチーム医療が重要となってきています。我々は循環器内科との緊密な連携を基本として、このチーム医療を実践しています。循環器疾患では糖尿病、脳血管障害を合併した患者が増加傾向にありますが、そういった場合でも糖尿病内科、脳神経内科、脳神経外科とも連携をとりそれぞれのエキスパートとの協力のもと、治療に当たっています。

心臓血管外科が扱う成人循環器疾患は大きく分類すると虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)、弁膜疾患(大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症など)、大動脈疾患(胸部/腹部大動脈瘤・急性大動脈解離など)、末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症・下肢静脈瘤など)に分けられます。

虚血性心疾患の外科治療としては冠動脈バイパス術(CABG)が中心となりますが、2011年以降合併症が少なく術後の回復が早いという点から人工心肺非使用・心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump CABG:OPCAB “オプキャブ”)を第一選択とし、現在では単独冠動脈バイパス術の95%を超える症例に適用しています。また、用いるグラフトには動脈グラフトを多用し、特に長期開存性に優れる両側内胸動脈を積極的に使用しています。下肢の静脈クグラフト採取では内視鏡カメラを使用しての採取を第一選択とし、従来20㎝以上必要であった皮膚切開は4㎝程で可能となっており、術後の創部痛は大きく軽減しています。さらに心筋梗塞後の心肥大による心機能低下症例には、左室形成術(バチスタ手術・ドール手術・セーブ手術)も併せて行うようにしています。

弁膜疾患では、僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術を20年以上前より積極的に行っており、成功率は95%以上となっています。この僧帽弁形成術では現在、胸骨を切開しない右小開胸で完全内視鏡下による手術を第一選択としています。約2㎝と4㎝の創部と1㎝の内視鏡のためのポートのみで、肋骨を開胸器で広げることもないので術後創部痛は極軽度で、創部はロボット手術より小さくなっています。大動脈弁閉鎖不全症のうち大動脈基部病変に伴うものに対しては自己弁温存型大動脈基部再建術を積極的に行っています。一方、人工弁置換術では、抗凝固薬(ワーファリン)を必要としない生体弁をできる限り使用し、80歳を超える症例でも良好な成績が得られています。さらには、大動脈弁狭窄症で従来の大動脈弁置換術が困難な症例には、循環器内科と協力して経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI “タビ”)を行っています。そして、大動脈弁人工弁置換術にも右小開胸手術を導入しています。

大動脈疾患では、ハイブリッド手術室が導入され、大動脈瘤に対するカテーテルを用いたステントグラフト内挿術と、外科手術のハイブリッド治療を積極的に行っています。以前は手術適応から除外されていた80歳以上での胸部大動脈瘤人工血管置換術も手術方法の確立、人工心肺装置の進歩に伴い満足できる手術成績となり症例数も増加傾向です。また、救急病院として大動脈瘤破裂や急性大動脈解離症例の緊急受け入れも積極的に行ってます。

末梢血管疾患では、最近増加している閉塞性動脈硬化症での重症虚血肢に対して膝下病変、足関節末梢病変にも積極的に血行再建術を行い救肢に努めています。また、2011年より下肢静脈瘤治療を再開し、一泊二日での高位結紮・静脈瘤切除術や高周波アブレーションを用いた焼灼術と外来での硬化療法を行っています。

これら以外にも心臓疾患では稀である悪性心臓腫瘍に対しては原発巣の切除の後、腫瘍内科と連携し術後早期に化学療法、放射線治療を行い良好な成績を得ています。