放射線診断科では、全科のCT、MRI、PET-CT、核医学検査の画像診断および、脳、心臓以外の画像下治療(インターベンショナル・ラジオロジー IVR)を行っています。画像下治療には24時間体制で対応しています。チームワークを大切に、安全で迅速、適切な検査と読影を心がけています。 医師、診療放射線技師、看護師、受付含めた医療従事者だけでなく、患者さんも チームの一員です。

神戸市立医療センター中央市民病院
放射線診断科部長
安藤 久美子

CT装置は7台(内320列2台、dual energy 2台)、MRI装置は5台(1.5T2台、3T3台)(3Tは2022年と2023年に導入またはversion up)が稼働しています。院内のみならず院外の医療機関からの検査依頼にも対応しています。放射線診断科ではこれらの読影をおこなっています。

核医学部門には、臨床用のPET-CT2台、SPECT-CT2台が設置されています。また南館先端医療センターには腫瘍、脳血管障害、心疾患、炎症などの診断に用いられています。心臓核医学の診断は循環器内科が担当しています。核医学治療としては、内分泌内科と協力してI-131による甲状腺分化癌、バセドウ病の治療を行っています。また各種の内用療法も施行しています。

バリウムなどを使用する胃や大腸の消化管造影検査も放射線診断医の業務の一つです。

血管造影・IVRに関しては脳・心臓以外の分野を担当し、上腹部においては消化器内科とも連携しながら救急も含めて、塞栓術、動注療法などを施行しています。血管造影装置の一つには上記のCTとは別に、DSAと連動したIVR-CTとしてMDCTを備え、適切な診断・IVRに駆使しています。

診療実績

診療科別統計

CTは平均200例/日、MRIは平均90例/日の検査・診断を行っております。

入院前の胸部単純写真読影年2000件あまり、消化管X線検査おおよそ250件あまり行っています。

IVR(Interventional Radiology)としては血管塞栓術、エコーあるいはCTガイド下生検・ドレナージなど、年間約450件以上を施行しています。おおよそ300件が血管内治療、150例あまりが血管外治療です。骨盤骨折や腹腔内出血、喀血、産褥期出血などに対する緊急動脈塞栓術が年間約100件におよびます。

核医学での主な検査は、骨・心臓・脳などのSPECT検査年間約2000件・PET-CT約2600件総数約4600件/年におよびます。また、内分泌内科との協力で施行している甲状腺疾患(分化癌・バセドウ病)に対するI-131治療は年間約50例に及びます。

臨床評価指標ページ

主な疾患・治療法

全身のCT/MRI読影(レポート作成)

放射線診断医の主な仕事の一つで、撮影された画像を評価してレポートを作成しています。CTは上記7台の機器から産み出される検査を平均180例/日、MRIは4台から平均80例/日の診断を施行しています。可能な限り迅速にレポートを作成し担当医の治療方針決定に役立てています。また、CTやMRIの撮影に関しても、放射線技術部や看護部との協力体制のもと、安全で効率的な検査の施行を目指しています。
面と向かって患者さんを診察するわけではないのでイメージがわきにくい仕事かと思われますが、病理診断とともにその病院の医療の質を左右する重要な仕事です。

毎週の画像検討会では教育的症例を通しての若手への指導や難解な症例の検討を行い、日々の診療への還元や診断能力向上に努めています。
IVRでは術前カンファレンスで治療方針を詳細に検討し、術後カンファレンスで症例経験を共有することで、技量向上に努めています。
教育にも力を入れており、当科へローテートする初期研修医を対象としてミニレクチャーも実施しています。

他診療科との合同カンファレンスも多数実施しています。現在は救急科、脳神経外科、脳神経内科、外科、消化器内科、泌尿器科、産婦人科、乳腺外科、小児科と定期的にカンファレスを開催しており、画像を通した診断や治療方針の検討、IVR治療の検討などを行っています。
また近接する兵庫県立こども病院の画像カンファレンスにも参加しています。

核医学(PET-CT、一般核医学検査、内用療法)

核医学診断では微量の放射線を放出する放射線医薬品を投与し、対象とする臓器あるいは全身を撮影します。必要に応じてコンピューター処理をし、臓器の機能や病変の活動状態を評価しています。平均してPET/CT 50例/週、一般核医学検査40~60例/週の検査を行っています。

核医学治療では甲状腺癌に対する放射性ヨード治療の他、下記の内用療法を行っています。

診断・治療いずれにおいても関係各科と連携を取りながら、放射線診断科・放射線治療科の医師・技師・看護師と協力し、安全・適切な医療を提供できるよう努めております。

対象
PET/CT
  • 悪性腫瘍に対する病期評価など
  • 大血管炎の局在または活動性評価など
一般RI
  • 骨転移評価(骨シンチグラフィ)
  • 脳機能評価(脳血流シンチグラフィ)
  • 心機能評価(心筋シンチグラフィ)など
内用療法
  • 甲状腺癌やバセドウ病に対する放射性ヨード治療
  • 前立腺癌骨転移に対する塩化ラジウム治療
  • ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍に対するペプチド受容体放射性核種治療

IVR(インターベンショナルナルラジオロジー、画像下治療)

IVRは、X線透視、 超音波、 CTといった画像をみながらカテーテルや針をすすめ、病気を治す治療で、全身の様々な疾患に応用されています。
当院放射線診断科においては脳神経,心臓,大動脈等以外の広い範囲を担当しており、2名のIVR専門医のもと、画像機器を駆使して年間300件強、以下のような手技を行っています。
  • 救急IVR(主にカテーテルを用いた止血)
  • 腫瘍に対するIVR;肝癌に対する化学塞栓療法(TACE)など
  • 動脈瘤、動静脈奇形(瘻)に対する塞栓術
  • CTや超音波を用いたドレナージや生検
  • そのほか

救急IVR(止血)

外傷性出血、危機的産科出血、喀血、消化管出血など、主に動脈性出血に対してカテーテルを用いた緊急止血に24時間365 日対応しています。また術後出血などの合併症の対応も行っています。塞栓術が主ですが、血栓除去、溶解やバルーンカテーテルによる血管形成術を行うこともあります。多くの場合足の付け根の動脈からカテーテルを出血部の血管にすすめ、最適な塞栓物質を用いて塞栓します。塞栓物質としては主にゼラチンスポンジ、NBCA、金属コイルを使用しています。

対象疾患
外傷 骨盤骨折、腹部実質臓器損傷など(下図)
内因性の出血 消化管出血、腎出血、喀血、動脈瘤破裂など
産科出血 弛緩出血、癒着胎盤など
合併症対応 術後出血など

腫瘍に対するIVR

骨盤骨折・出血に対する止血術

カテーテルを対象臓器の血管まで進め、 塞栓を行ったり、抗癌剤を注入したりします。塞栓物質と抗癌剤を混ぜて使用したり、 吸着させて使用したりすることもあります。以下のような手技を各担当診療科の協力を得て行っております。

対象疾患

  • 肝癌に対する化学塞栓療法(TACE)
  • 動注リザーバー留置
  • 骨腫瘍の術前塞栓
  • 腎血管平滑筋脂肪腫に対する塞栓術
  • 転移性肝腫瘍に対してのビーズを用いたTACE
  • 上顎癌に対する動注化学療法

動脈瘤、動静脈奇形(瘻)に対する塞栓術

内臓動脈瘤(脾動脈瘤、 腎動脈瘤)、内腸骨動脈瘤といった動脈瘤、 肺の動静脈奇形(瘻)に対して主にコイルを用いた塞栓術を行っています。内腸骨動脈瘤では循環器内科や心臓血管外科と協力して、 ステントグラフトや手術と組み合わせた治療も行い、患者さんに最適な治療をめざしています。

CTや超音波を用いたドレナージや生検

CTや超音波といった画像をみながら腫瘍に針を刺して組織を採取したり膿瘍(膿がたまった状態)をドレナージしたりします。 主に体の表面から観察できない部分の腫瘍や膿瘍に対して行いますが、手術と比較してより低侵襲であることが特徴で、生検においてはより迅速な治療方針の策定、ドレナージにおいては感染症からのより速やかな回復に貢献しています。
特殊な生検としては、ドリル型の生検針を用いた骨生検、頸静脈からアプローチして肝生検するTJLB (Trans-Jugular Liver Biopsy)など行っています。

その他

  • 透析シャントに対するIVR
  • 胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性経静脈的硬化術(BRTO)
  • 肝切除術前処置としての経皮的経門脈塞栓術(PTPE)
  • 副腎静脈サンプリング
  • リンパ管造影
  • 非閉塞性腸管虚血(NOMI)に対する持続動注療法
  • 異物除去
  • デンバーシャント
  • 食道気管支瘻に対する塞栓
  • 高度側弯を伴う脊髄筋委縮症に対するヌシネルセン髄注
  • フォンタン術後静脈-肺静脈シャントに対する塞栓術
  • その他
リクエストがあり、技術的に安全に可能であれば基本的にはどのような手技でも行います。

臨床研究

臨床研究の実施に関するお知らせ

現在放射線診断科では、下記の臨床研究を実施しております。
この研究では、患者さんの日常診療で得られたデータ(情報)を利用させていただきます。
ご自身のデータがこの研究に利用されることについて、異議がある場合は、情報の利用や他の研究機関への提供をいつでも停止することができます。研究の計画や内容などについて詳しくお知りになりたい方、ご自身のデータがこの研究で利用されることについて異議のある方、その他ご質問がある方は、以下の「問い合わせ先」へご連絡ください。

研究課題名 説明文(PDF)
腹腔動脈狭窄に伴う動脈瘤形成、動脈瘤破裂の原因の検討 PDF
ヒトパレコウイルス髄膜脳炎の頭部画像所見の検討 PDF
デタッチャブルコイルのカテーテル内での意図的早期離脱と生理食塩水フラッシュによる留置法の有用性と安全性の検討 PDF
脾動脈解離に関する研究 PDF
超音波内視鏡下吸引穿刺法によって生じた出血に対する血管塞栓術の有効性、安全性の検討 PDF
肝被膜下血腫に対する経皮的動脈塞栓術の有効性、安全性の検討 PDF
新型コロナ肺炎の胸部単純レントゲン写真の自動診断 PDF
悪性腫瘍の内部不均一性評価のためのFDG PETのテクスチャー解析の標準化の試み PDF
小児脳のCT標準脳作成 PDF
低悪性度子宮内膜間質性腫瘍の診断におけるMRIの有用性の検討 PDF
日本インターベンショナルラジオロジー学会(以下IVR学会)における、症例登録データベースを用いた医学系研究 PDF