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検査部タイムズバックナンバー

◆◆特集第3号◆◆        

微生物検査室の紹介      微生物検査室 仁木 真理恵


 微生物とは、細菌、酵母、ウイルスなど肉眼では観察できない生物のことで、人が生きていく上で必要不可欠な存在です。微生物と聞くと何となく嫌なイメージを抱きがちですが、人の体内にも100兆個以上存在しており、これらを常在菌とよんでいます。例えば、腸の中で生息している大腸菌などの腸内細菌は、食べ物の消化を助けたり、新たに侵入してきた菌を排除したりして私たちの体を守ってくれています。しかし、免疫力が低下している人にとっては、これらの常在菌が感染症の原因菌(病原微生物)になることもあります。また、病原性大腸菌O-157やカンピロバクターなど、体内に入り人に害を与える微生物(病原微生物)もいます。微生物検査室ではこのような病原微生物の情報を主治医に提供しています。

<微生物検査室の役割は大きく分けて4つあります>

@一般細菌検査
 喀痰、尿、膿、血液など患者さんの検体を用いて病原微生物の有無を検査しています。
  まず、提出していただいた検体をスライドガラスに塗りグラム染色*1を行います。グラム染色により、濃紫色に染まるグラム陽性菌とピンク色に染まるグラム陰性菌に分けられます。これらを顕微鏡で観察し、染色された色や細菌の形態等から菌種の推測を行います。グラム染色は細菌の分類や同定をするうえで最も重要な工程になります。


                    (1000倍)                    (1000倍)
     <ブドウ球菌(グラム陽性球菌)>          <大腸菌(グラム陰性桿菌)>             

  次に、検体を数種類の培地に塗布し、ふ卵器で培養させます。一晩培養させると、肉眼では見ることができなかった細菌が培地上で発育し、増殖して集落(コロニー)を形成し、目に見える大きさになります。数種類の培地に塗布することで、培地による発育の有無や集落の色、形状からある程度の菌名が推測できます。


    <血液寒天培地に発育した黄色ブドウ球菌>   <マッコンキー寒天培地に発育した大腸菌>

  集落が形成されるとその細菌の同定と薬剤感受性検査を行います。同定検査ではブドウ糖や乳糖を分解できるかなど、細菌が持っている性質を調べることにより細菌の種類を決定します。一方、薬剤感受性検査では患者さんの検体から検出された病原微生物に効く薬剤を調べています。同定と薬剤感受性検査は一部の菌を除いて写真のような同定パネルを用いて全自動細菌分析装置により行っています。


       <全自動細菌分析装置>                  <同定パネル>   

A迅速抗原検査
 便や尿中に排泄される病原菌の抗原*2を調べることで、病原菌の有無について迅速な報告が可能となっています。通常の培養検査による細菌の検出は2日以上かかりますが、迅速抗原検査の場合は15〜30分以内に結果を報告することができます。当院では、インフルエンザウイルス抗原検査、便中ロタウイルス抗原検査、咽頭粘液アデノウイルス検査、尿中肺炎球菌抗原検査、尿中レジオネラ抗原検査などを行っています。


           <尿中肺炎球菌抗原検査:左が抗原陽性、右が抗原陰性>


B抗酸菌検査
  結核菌などの抗酸菌検査も当院で行っています。塗抹検査では蛍光染色とチール・ネンゼン染色を行います。これらの染色は抗酸菌以外の細菌は染色されないので、他の一般細菌と区別がつきます。


      <蛍光染色写真(400倍)>          <チール・ネンゼン染色(1000倍)>

  抗酸菌は発育が遅いものが多く培養には時間がかかるため、培養結果が出るのに1〜2カ月かかることもあります。しかし、PCR法*3も同時に行うことで、半日以内に結果を報告することが可能になります。

C院内感染対策
  感染制御チーム(ICT)の一員として、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、MDRP(多剤耐性緑膿菌)、ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌などの院内感染の原因となる細菌の検出状況を調査し、院内感染防止に努めています。また、病棟内の水周りに院内感染の原因菌となる薬剤耐性菌がいないか環境調査を行い、アウトブレイク*4の防止にも努めています。
  しかし、それでもアウトブレイクが発生した際には、遺伝子解析による疫学的調査を行っています。この遺伝子解析にはパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)が広く用いられていますが、簡便性および迅速性に乏しいため、当院ではDiversiLabという特殊な機械による遺伝子解析を行い迅速に対応するようにしています。



<1番と4番は別々の患者由来の菌。2と3は1番の患者の部屋の水周りにいた菌。5は4番の患者の部屋の水周りにいた菌。すなわち、右図では1と2は98.3%の相同性*5があり、ほぼ同一の菌株であると証明できますが、1と4の相同性は65.5%なので異なる菌株由来ということになります。>



<患者さんへのお願い>
  微生物検査室では生き物を扱っているため、早急に結果を報告することが難しいこともありますが、出来るだけ早く病原菌を見つけ出し適切な抗生剤の情報を主治医に提供できるよう日々努力しています。
  しかし、せっかく検体を提出していただいたのにも関わらず、検査に不適切な検体もあります。例えば、喀痰の場合は唾液の含まれる粘液状のものだと口腔内には常在菌がたくさんいるため、病原微生物以外の菌のみが発育してしまい、検査結果の意味がなくなってしまいます。正確な検査結果を報告するために、喀痰を提出していただく際には、まずはうがいをし、口腔内の常在菌をできるだけ減らしてから、膿性な喀痰を提出していただくようにお願いします。



*1:グラム染色
   細菌がもつ細胞壁の構造の違いにより、濃紫色に染まるグラム陽性菌とピンク色に染まるグラム陰性菌に分類さ
  れる。
*2:抗原
   体内に入ってきた時に生体防御のため免疫反応を引き起こす物質(微生物の構造タンパクなど)の総称。この免
  疫反応の原理が臨床検査に用いられている。
*3:PCR法
  サーマルサイクラーという機械と特殊な試薬を用いて、細菌がもつDNAを増幅させることにより、ごく少量の細
  菌の有無を容易に確認できる方法。
*4:アウトブレイク
   一定期間内に、特定の場所で同一菌種による感染症が発症すること。
*5:相同性
   遺伝子の特定の部分が進化的に共通の祖先をもっているもの。相同性の割合が高いものが同じ菌株由来だと判断
  できる。



あとがき

 この6月から、2階生理検査室の待合廊下にかわいいお花が飾られるようになりました。この花は生理検査室や採血室の職員が、自宅の庭や貸し農園、道ばた?に咲いたり育てたりしている花を持ち寄って飾っています。お店で売っているような華やかな花ではありませんが、野の花であるがゆえに、かえってほっと心が落ち着き和むような気がします。
 また、花を飾っていると患者さんや他の職員から「お花かわいいですね」と話し掛けていただいたりして、野の花効果は色々なところに発揮されるようです。
 光り輝くような豪華で華麗な花ではなく、普段は気付かれないようにそっと咲きほころびながらも、横を通り過ぎる人の風景の中で心を和ませている野の花。
 医師や看護師のように患者さんとずっと関わりを持つわけではなく、検査や採血の少しの時間だけに触れあう私たち臨床検査技師も、その短い時間だからこそ野の花のようにそっと、患者さんに気持ちよくまた安心して良い検査を受けていただけるように努めたいと思っています。                           A.T

                                         

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