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検査部タイムズバックナンバー

◆◆特集第18号◆◆        

造血器腫瘍の微小残存病変(MRD)評価について
              細胞遺伝子検査室 白石 祐美


【はじめに】
 白血病や悪性リンパ腫といった造血器腫瘍の診断や,治療後の微小残存病変(minimal residual disease:MRD)の評価方法として,光学顕微鏡による標本の観察,染色体分析,フローサイトメトリー, PCR法といった様々な方法がありますが,それぞれの方法によって,検出感度は異なります(フローサイトメトリー,PCR法,微小残存病変については「特集第1号 遺伝子検査:FLT3変異とNPM1変異について」 もご覧ください)。当検査室では,このフローサイトメトリーとPCR法を併用することで,多面的な検査を行うことが可能となっています。
今回のTEKARIでは,この2つの方法の実際について,症例をあげてご紹介します。

<症例1:悪性リンパ腫>
他院でCTを行った際に,偶発的にリンパ節腫張を指摘され,その後リンパ節生検によって悪性リンパ腫と診断された症例です。


左:リンパ節のスタンプ標本画像です。N/C比(核/細胞質の比率)が高く,
  小型の腫瘍細胞が多数確認されます。
右:IgH再構成検査(※1)の電気泳動(PAGE)の結果です。陽性を示すバンド(矢印)が認められます。
  (一番右のバンドは陽性コントロールです。)

※1 IgH再構成検査
通常,B細胞は分化・成熟段階において,多様な抗体を生み出すために,免疫グロブリン遺伝子の再構成によって多種多様なクローンを生じる。 しかし腫瘍においては単一クローンが増殖するために, 再構成によって生じた遺伝子配列は同一となる。この性質を利用して,PCR法によって検出する検査である。



上図はフローサイトメトリーの結果です。これにより,腫瘍細胞は 小型であり,CD19+,CD20+,CD10+,CD43-,CD45+,Lambda+という特徴を有することが明らかとなりました。
また,骨髄へのリンパ腫細胞の浸潤の有無を確認するために,骨髄液の検査が行われました。


左:骨髄液の塗抹標本像です。骨髄液中には様々な種類の細胞が観察されますが,
  リンパ腫細胞の浸潤ははっきりしません。
右: 高感度IgH再構成検査(※2)の結果です。
   上段がリンパ節生検時の結果であり,下段が今回の骨髄液を用いた結果です。
  その値はほぼ一致しており, リンパ節で認められた腫瘍細胞と同一の細胞が骨髄液中にも
  存在することが明らかとなりました。

※2 高感度IgH再構成検査
IgH再構成検査にて陽性となった症例については、その情報をもとに、症例特異的なプライマーを選択し、semi nested PCR法により、 より感度を高めたPCR法を実施している。結果はフラグメント解析により、PCR産物長を測定することで、陽性/陰性の判定を行う。



骨髄液のフローサイトメトリーの結果です。過去の陽性パターンをもとに,症例に特異的な抗体パネルを用いることで,より高感度にリンパ腫細胞の浸潤を捉えることができます。 今回は、リンパ節生検で得られた、CD10+,CD20+,CD43-,CD45+,Lambda+という情報をもとに検査を行い、当検査においても骨髄液の細胞中の0.1%に浸潤が認められました。

<症例2:急性骨髄性白血病>
 発熱を機に近医を受診され、白血球数異常を指摘されたため当院で精査を行い、急性骨髄性白血病と診断された一例です。

骨髄液を用いた、初発時のフローサイトメトリーの結果です。
CD4+CD7+CD16-CD34+CD45dim+CD123+という特徴をもった腫瘍細胞が、骨髄液中の54%に認められます。 この結果を利用して、定期的に骨髄液の検査を行い、フローサイトメトリーを用いて治療の効果をモニタリングしていきます。

治療後 MRD1(腫瘍細胞は骨髄液中の0.01%)


治療後MRD2(腫瘍細胞は骨髄液中の0.08%)


治療後MRD3(腫瘍細胞は骨髄液中の0.92%)


治療後MRD4(腫瘍細胞は骨髄液中の35.01%)…再発


骨髄移植後(腫瘍細胞は明確には認められない)post BMT…骨髄移植後


また、腫瘍細胞にはNPM1遺伝子の変異が認められたので、この変異遺伝子の骨髄液中での発現量を測定することで、 PCR法の面からも病勢をモニタリングすることが可能でした。
以下は、初発時の発現量を1として、その後の変化をグラフで表したものです。フローサイトメトリーの結果と類似し、発現量は徐々に上昇が認められ,再発時 (MRD4)には急上昇していますが、骨髄移植後には極めて低いレベルまで低下しています。


【結語】
今回ご紹介したように、フローサイトメトリーとPCR法という2つの側面から検査を行うことで、標本の観察だけでは明らかにならなかった腫瘍細胞の存在を知ることができる場合もあり、 これらの検査はMRDの評価に有用であると考えられます。当検査室では、新規検査項目の追加や、現行法の改善などを積極的に行っており、 高感度かつ正確性の高い結果を迅速に臨床に提供していけるように日々研鑽しています。

検査部ニュース

------学術関係報告---------

【論文発表】
1. 杤尾人司:教科書には書いていない採血のコツ⑨:痛みを最小限にする穿刺法、
 検査と技術43:1305, 2015
2. 杤尾人司:教科書には書いていない採血のコツ10:”あ、逆血がない”,,,穿刺失敗時の原因と対処、
 検査と技術44:47, 2016
3. 杤尾人司:教科書には書いていない採血のコツ11:”あっ、血が止まった” その時、どうする?
 検査と技術44:217, 2016
4. 杤尾人司:教科書には書いていない採血のコツ12:血管迷走神経反射(VVR)回避法「患者を笑顔に」
 検査と技術44:427, 2016

【学会報告、講演】
1. 香原美咲:USにて腫瘤形成性膵炎を疑った膵癌の2例.
 第106回 腹部オープンカンファレンス, 神戸, 2015.12.03
2.丸岡隼人:遺伝子変異解析の基礎.日臨技近畿支部 遺伝子部門研修会.京都.2016.01.23
3.野本奈津美, 太田光彦, 紺田利子, 川井順一, 角田敏明, 菅沼直生子, 中嶋正貴, 山根崇史, 谷知子, 古川裕:
 術中経食道心エコー図にて二尖弁が疑われた高度大動脈弁狭窄症に対し経カテーテル的大動脈弁植え込み
 術を施行した一例. 第82回神戸臨床心エコー図研究会, 神戸, 2016.1.30
4.佐々木一朗:法的脳死判定.第9回脳波筋電図セミナー 関西脳波筋電図研究会.京都.2016.01.29
5.佐々木一朗:誘発電位ハンズオン.第9回脳波筋電図セミナー 関西脳波筋電図研究会.京都.2016.01.29
6.奈須聖子,竹川啓史,内藤拓也,﨑園賢治:当院における過去10年間の血液培養検査の解析.
 第27回日本臨床微生物学会総会・学術集会.宮城・仙台,2016.1.30
7.竹川啓史:ワ-クショップ院中八策 ~よりよい微生物検査の報告を目指して~ 真菌検査,
 第27回日本臨床微生物学会総会・学術集会,宮城・仙台.2016.1.30
8. 田代明人,井本秀志, 森田明子, 尾松雅仁,上原慶一郎,今井幸弘:好中球に中毒性顆粒を認め、
 G-CSF産生が示唆された転移性腫瘍の1例.第32回兵庫県臨床細胞学会総会,神戸,2016年3月5日
9.丸岡隼人:フローサイトメーターを用いた検査についての質疑応答.
 BD FACSTM クリニカルソリューションセミナー in 京都 2016,京都,2016年3月19日
10. 岩崎信広、他、メッケル憩室の超音波像について.131回大阪超音波研究会、大阪、2016年3月9日
11. 宮本淳子,谷知子,紺田利子,藤井洋子,川井順一,角田敏明,菅沼直生子,野本奈津美,太田光彦,
 金基泰,古川裕:「重症大動脈弁狭窄症の種々の病態における左房機能について-経胸壁心エコー図に
 おける検討」第80回日本循環器学会学術集会,仙台,2016.03.18-20

あとがき

 梅雨が明け、セミも鳴き始めて、すっかり夏らしくなってきた今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか? 花火大会にお祭り、海やプールなど・・・ 夏はイベントが盛りだくさんでワクワクしちゃいますね!! そんな夏を思いっきり楽しむために、夏バテ予防策をご紹介したいと思います。 ぜひ実践してみて下さい☆  
・クーラーの温度は27℃設定で!  
・暑さで食欲がなくても、ご飯をしっかり食べましょう!  
・冷たいものばかりではなく、温かいものも飲みましょう!  
・シャワーになりがちな季節ですが、湯ぶねに浸かりましょう!  
・辛いものを食べて、代謝アップ!(食べ過ぎには注意)
  これらを参考にして、暑い夏をENJOY気分で乗り切りましょう♪ くれぐれも水分補給は十分に行い、熱中症にはご注意下さい!!

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