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検査部タイムズバックナンバー

◆◆特集第10号◆◆        

キメリズム検査について
              細胞遺伝子検査室 吉田昌弘

【キメリズム検査とは】
まず、キメリズムと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?流行りのエクササイズ!?

今回紹介するキメリズム検査とは、正常な血液細胞を作ることが困難な疾患(白血病、再生不良性貧血等)の患者さんに対する治療法の一つである造血幹細胞移植において、ドナー(提供者)の血液細胞がレシピエント(患者さん)の体にどの程度生着*1したのか、主に移植後の生着確認の指標として用いられる検査です。
そもそもキメリズムというのは、ギリシャ神話にでてくるキマイラが語源となっています。 キマイラとはライオンの頭と山羊の胴体、蛇の尻尾をもち、複数の生物が合成された聖獣です。移植後にドナーとレシピエントの血液細胞が組み合わさることからキメリズムという名前がついたと言われています。


移植後にドナーの血液細胞が本当に生着したのかどうか、一体どのようにして確認するのでしょうか?

【移植前検査】
ヒトのDNAの中には数塩基〜数十塩基が繰り返された配列が多数存在し、その中でも比較的短い塩基配列の繰り返しをSTR(Short Tandem Repeat)と呼びます。これは個人によって異なるので、複数のSTRローカス(遺伝子座)の長さを調べることで個人を識別することができます。移植前にあらかじめ検査して、このSTRという個人を識別するための目印を決めておく必要があります。このSTR解析は、犯罪捜査におけるDNA鑑定や親子鑑定にも用いられている検査です。
あらかじめ移植前にドナー、レシピエントの血液を採取し、複数のSTRローカスをターゲットとしたMultiplex STR-PCR法を用い、DNAを増幅させてSTRローカスを検索します。それが下の左図です。その中からドナーとレシピエントを明確に識別できる特有のSTRローカスを選択します。それが下の右図です。


本例の場合、「D12S1064」というSTRローカスにおいて、ドナー195bp、レシピエント179bpと長さが異なるので目印として使用することが可能です。移植後はこのローカスのドナーピーク195bpとレシピエントピーク179bpを見ていくことになります。

【移植後キメリズム検査】
造血幹細胞移植をすると、移植後の体内にはレシピエント由来とドナー由来の血液細胞が混在します。この状態を混合キメラといいます。
その後ドナーの血液細胞がしっかり生着すると、レシピエントの体内においてレシピエントの血液細胞が消え、ドナーの血液細胞だけになります。このようにドナーの血液細胞がレシピエントに生着した状態を完全キメラといいます。


移植後は、このような生着の段階を確認する為に検査を実施します。検査は血液中のTリンパ球(T細胞)とTリンパ球以外の細胞 (Non-T細胞)に分けてそれぞれ解析をします。これは両者で解離がみられることがあり、移殖後の早期の生着、GVHD(移植片対宿主病) *2、抗腫瘍効果など有意義な情報を得ることができるからです。
T細胞とNon-T細胞それぞれから採取したDNAをSTR-PCR法で増幅し解析を行います。



移植前に目印とした「D12S1064」というSTRローカスのドナーピーク195bpとレシピエントピーク179bpを検査することで、それぞれのピークの面積比からドナー由来の血液細胞がレシピエントの体内に何%生着したのかを確認することが出来ます。
上の左図は移殖後46日にキメリズム検査を実施した結果です。Non-T細胞ではドナーの195bpだけのピークなので面積比から計算しドナーが100%となります。一方、T細胞ではドナーの195bpのピークがほとんどですが、レシピエントの179bpのピークも若干見られます。面積比から計算した結果ドナーが86%となりました。
移殖後210日の検査結果が上の右図です。T細胞・Non-T細胞共にドナーの195bpのピークのみとなっておりレシピエントのピークは検出されていません。面積比から計算したドナーも100%となりドナーの血液細胞が完全に生着したといえます。

【院内でキメリズム検査を実施するメリット】
院内においてキメリズム検査を実施している施設は全国的に見ても少数です。外注検査では検査報告まで1〜2週間かかることが多いですが、当院では院内検査を実施することにより、翌日に報告が可能となります。
移植後早期からキメリズム検査を実施することで、ドナーの血液細胞の生着確認をリアルタイムに判定することができます。また、拒絶の傾向を示した患者さんにも迅速な対応をとることができ、その後の治療方法の選択にもつながります。
当院の細胞遺伝子検査室は、血液内科の医師と密接な関わりがあり、血液内科と隣り合わせに検査室を構えることで情報を共有し、結果の報告や病態に応じた検査項目の変更や追加などの即時対応が可能となります。また、検査結果のカンファレンスなども随時行っています。
そして、このような環境下で新たな検査を積極的に導入し、さらに医師との連携を高めて、患者さんに安心できる質の高い医療を提供すること努めていきたいと考えています。

《語句説明》
*1生着:ドナーの造血幹細胞がレシピエントの骨髄に根付くこと。
*2GVHD(移植片対宿主病):ドナーから提供された移植片がレシピエントの身体や臓器そのものを敵とみなして攻撃する免疫反応。            

検査部ニュース

【学会発表】
1.野本奈津美、谷知子、紺田利子、角田敏明、川井順一、金基泰、北井豪、古川裕、北徹:当院における過去14年間での心臓腫瘍症例における心エコー図検査での検討.第78回日本循環器学会学術集会,東京,2014.3.22

2.尾松雅仁、原留成和、井本秀志、坂本紀子、森田明子、上原慶一郎、今井幸広:Pneumocystis jirovecii 感染7例の細胞像.兵庫県臨床細胞学会第30回総会.神戸.2014.3.15.

3. 紺田 利子、谷知子、藤井洋子、川井順一、金基泰、北井豪、古川裕、北徹:僧帽弁逸脱による重症僧帽弁逆流症例におけるMitral Annular Disjunctionについての検討.第78回日本循環器学会学術集会,東京,2014.3.21

あとがき

 先日、願い事が叶うといわれている京都のあるお寺へ行ってきた。住所と名前と願い事を一つ唱えると、わらじを履いたお地蔵様が家まで来て、願いを叶えてくれるそうだ。願いを唱える前に住職のありがたい説法を聞いた。その中で「生まれて死ぬまで人は誰かと関わりながら生きているので『おかげさま、お世話様、お互い様』の言葉を忘れずに謙虚な心でいなければならない」といった内容があった。ふと自分を振り返ってみると忙しい毎日でこれらの言葉をあまり使っていない自分に気づいた。自分を見つめなおし、謙虚な心で日々精進していけば、きっとお地蔵様が家に来て、願い事を叶えてくれると信じている。
                                        (N.M)
 
                                   
                         

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