[ 検体検査部門 ]

血が止まる仕組み (止血機構と病態)

このシリーズでは、出血の止まる仕組み(止血機構)を解説し、 その後、止血機構と病態との関連性を説明しようと思っています。 まず、最初に傷害された血管からの出血を止めるメカニズムの話から始めましょう。

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 はじめに
動物は弱肉強食の世界の中、食べ物や生存をかけての色々な闘争に 巻き込まれ、その過程で傷つくことがあり出血が生じます。血液は、 体重の約一割を占め、生命維持のため重要な役割を担っていますが、 失血により生命に重大な危機がもたらされることがあります。そこで、 動物は進化の過程で巧妙な止血機構を組み上げてきました。我らホモ サピエンスも同様で、もっとも進化した止血機構を持っていますが、 基本的には脊椎動物はほぼ似通った機構です。
止血機構には三段階あり、まず一次止血として傷ついた血管壁に 血小板が粘着・凝集し、傷口を塞ぎます(血小板血栓―白色血栓形成) 。続いて二次止血として、血漿中の凝固因子の活性化が起こり、 血小板血栓を繊維素で結び、強固な血栓を形成します(赤色血栓)。 これで出血に対しての対策は完了しますが、止血機構は続いて、 血管内に形成された血栓の除去と血管壁の修復作用を行います(繊維素溶解現象)。 この過程を通して、血管内に形成された血栓が取り除かれ、血液の流れが元通り のスムーズなものにもどり、この時点でようやく止血機構が完結します。

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 血小板血栓の形成
障害などにより、血管内皮細胞が剥落して内皮下組織が血液に 直接触れるようになると、血小板は速やかに内皮下組織に接着し、 扁平に伸展しながら放出反応を起こし、この時放出された活性化 物質によって他の血小板を刺激し、凝集反応を引き起こし血小板 血栓を形成していきます。これらの反応を、順を追って説明して みようと思います。

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@ 血小板について
血小板は血液細胞構成成分の一つで、骨髄にある巨核球の細胞質 の一部が血管内に放出されたもので、その大きさは直径2〜4µmで レンズ状の円盤型をしています。巨核球の一部であるため核は有 りませんが、ミトコンドリア、ゴルジ装置などの細胞小器官は存 在します。また、血小板に特徴的な小器官は細胞膜の一部が胞体 内に陥入した開放小管系(顆粒放出時の通路)・α顆粒(粘着性蛋白 を含む)・濃染顆粒(ADP・ATP・セロトニンなどを含む)・暗調小管 系(Ca代謝・プロスタグランジン代謝に関与)などが存在します。
血小板の膜表面には、他の細胞と同様に糖蛋白質が存在しています。 これらは電気泳動の移動位置からglycoprotein(GP)I、II、IIIなど と呼ばれていました。その後、これらのバンドがさらに分離され 、GPIa・GPIIbなどより多くの糖蛋白質が同定されています。 この糖蛋白が血小板の粘着反応に重要な役割を演じています。

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A 血小板の粘着
血小板と内皮下組織との強い反応を起こす内皮下組織側の成分 (リガンド)は、コラーゲン・フォンウィルブランド因子・フィブ ロネクチン・ビトロネクチン・フィブリノーゲンなどが主なもの で、これらと、前に書いた血小板膜面上の糖蛋白とが相互反応的 に結合し、血小板と内皮下組織を結びつけ血小板の粘着が生じま す。微細な血管の損傷した時には、コラーゲンと糖蛋白GPIa/IIa 複合体の反応が生じ、傷ついた血管壁に露出したコラーゲン繊維 に血小板はGPIa/IIa複合体を介して結合し、粘着していきます。 一方、血流の大きな血管での血小板粘着反応は、コラーゲンに結 合したフォンウィルブランド因子と糖蛋白Ib/\複合体が関与し、 血小板はコラーゲンに結合したフォンウィルブランド因子に糖蛋 白Ib/\複合体を介して粘着します。この反応は一次止血に重要な 働きをしていると考えられています(また、動脈硬化と血栓症発症 に大きく関与しています)。

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