IVRセンターについて

神戸市立医療センター中央市民病院 IVRセンター「X線透視やCTなど高度画像診断装置を活用、体内の様子を透視しながら、安全かつハイレベルな治療を提供。」

IVRセンターについて

IVRとは?

Interventional radiologyの略で、X線透視、超音波、CTといった画像を用いて、カテーテルや針を進め対象となる臓器の治療を行う手技を指します。日本語では「画像下治療」と呼ばれていますが、この用語は広まっておらず、IVRが医療関係者には広く知られた用語です。

カテーテルや針といった細い器具を用いるため、傷が小さいこと、多くの手技が局所麻酔で行うことができることなど、一般的に外科的な手術と比べ体への負担が軽い(低侵襲である)のが特徴です。このメリットを生かし、脳動脈瘤や頚動脈狭窄など脳血管の治療、心筋梗塞、狭心症といった冠動脈疾患や不整脈などの心疾患の治療、肝細胞癌などの悪性腫瘍の治療、外傷や内因性の出血に対する止血、大動脈瘤の治療、下肢の血管狭窄、閉塞に対する治療など、全身の様々な疾患に応用されるようになり、診療において欠かすことができない治療法となっています。また、今後も各種のカテーテル、ステントや塞栓物質などの治療デバイスや血管造影装置、診療支援ソフトウエアといった機器の発達と共に適応疾患はますます広がっていくと考えられています。さらに、大動脈ステントグラフトのように外科手術と組み合わせた、やや侵襲度の高い手技も開発され増加してきており、当院においてもIVRと外科手術を同時に施行可能であるハイブリッド手術室が導入されています(2017年現在1室、2018年度より2室の予定)。今後はこのような外科治療とIVRを組み合わせた、もしくは外科治療と同時に行われるようなIVRも増加すると予想されています。

当院のIVRセンターについて

当センターの1階には6台のIVR専用のX線装置(バイプレーン血管撮影装置5台(心血管用3台、脳血管用2台)+IVR-CT 1台)が設置され、様々な治療(血管を広げる、詰める、薬剤を投与するなど)を行なっています。血管内治療以外ではIVR-CTを用い、CT画像を利用した生検や膿瘍などのドレナージを行っています。また4階のハイブリッド手術室では大動脈ステントグラフト、TAVI(経カテーテル的大動脈弁植え込み術)などのIVR、脳神経外科の術中血管撮影及びIVRが行われており、来年度からはバイプレーン血管撮影装置が脳神経外科専用の手術室に設置され稼働することになっています。

当院は救急医療に力を入れており、いずれの診療科においても24時間365日様々な救急疾患に対応しています。放射線領域、循環器領域、脳神経領域すべて、ハイレベルのIVRに常時対応可能となっています。

IVRセンターで手技を行なっている主な診療科

脳神経 脳神経外科、脳神経内科
循環器 循環器内科、心臓血管外科
消化器 消化器内科
放射線 放射線診断科

IVRの適応となりうる代表的疾患

脳神経 脳動脈瘤、急性脳梗塞(主幹動脈閉塞)、頚動脈狭窄
頭頚部 腫瘍(上顎癌の動注化学療法や若年性血管線維腫の術前塞栓)
胸部(心臓を除く) 喀血、肺洞静脈奇形
心臓、大血管 冠状動脈疾患、大動脈弁狭窄、不整脈、大動脈瘤
腹部 肝細胞癌、腎血管筋脂肪腫、門脈圧亢進症、腹部内臓動脈瘤
末梢血管 閉塞性動脈硬化症、透析シャントトラブル
外傷、出血 骨盤骨折、腹部実質臓器損傷、産科出血、消化管出血
非血管 後腹膜腫瘍(生検)、膿瘍

過去3か年のトレンド

  • 320列CTを搭載した新型のIVR-CTを導入。診療支援ソフトウエアの導入などによりより精密なIVRが可能となった(放射線科)。
  • 有効であるというエビデンスが確立した急性再開通療法の時間短縮への取り組みを病院挙げて取り組み成果を挙げた(脳神経外科、脳神経内科)

過去の実績 [IVR件数(時間外含む)]

■ 頭頸部血管
 20122013201420152016
脳動脈瘤 138 136 91 114 114
脳血管形成術 48 40 12 15 23
頚動脈ステント     33 40 34
血栓回収     29 43 68
その他 23 25 33 24 37
緊急時間内     22 28 36
時間外 54 46 58 72 97
合計
(人数)
時間内 155 155 140 164 172
総合計 209 201 198 236 269
■ 心血管
 20122013201420152016
心血管血管形成 10 22 24 27 23
ステント 393 345 288 340 389
その他 1 12 9 18 32
合計 404 379 321 385 444
アブレーション 363 416 439 434 463
IABP、PCPS、体外PM     74 84 104
ペースメーカ留置       59 66
その他 106 107 49 36 59
緊急時間内     76 110 111
時間外 70 68 77 84 125
合計
(人数)
時間内 697 727 767 897 972
総合計 767 795 844 981 1097
■ 腹部四肢血管
 20122013201420152016
血管塞栓術止血 75 84 62 75 102
TACE 249 233 199 202 152
その他     69 74 53
合計 324 317 330 351 307
血管拡張、血栓除去 28 28 70 88 88
リザーバー 67 36 41 20 13
膿瘍ドレナージ     39 36 39
その他 24 13 25 14 21
緊急時間内     78 61 85
時間外 31 37 34 35 50
合計
(人数)
時間内 402 400 463 434 406
総合計 433 437 497 469 456
■ ハイブリッド手術室OR-1
 20122013201420152016
脳外科     8 4 2
ステントグラフト     26 36 34
TAVI     20 29 30
CRTD     90 49 48
その他     5 3 8
緊急時間外 4 6 9 0 1
合計
(人数)
時間内 92 134 140 121 121
総合計 96 140 149 121 122

IVRセンターについて診療科からのコメント

脳神経領域(脳神経外科、脳神経内科)

常に新しい機器が開発され、臨床試験等により新しいエビデンスが構築されています。当センターは国内に導入する機器のほぼすべての治験を実施し、また多くの多施設共同研究を主導および参加しています。いくつかのトピックスを紹介します。

1)急性再開通療法

2015年にその有効性が証明され世界中で飛躍的に治療件数が増加しています。患者さんの転帰を良くするためには、発症から再開通までの時間を最大限短縮することが求められており、受け入れから再開通まで110分が目標とされています。そのため、救急部、看護部、放射線技術部を巻き込んで、脳卒中治療チームを結成して取り組んでいます。2017年には月間平均10件、時間目標をほぼ達成するまでに発展しています。

2)脳動脈瘤治療、フローダイバーターおよびステント支援コイル塞栓術

2015年に保険償還されたPipeline Flexがフローダイバーターの国内導入の始まりです。当院は治験に参加し、医師教育も引き受けるなど、早くから積極的に取り組んできました。国内で唯一、複数の認定実施医が在籍し、治験を担当した他の機器と合わせてフローダイバーターの経験数は100例を超えています。また2010年から始まったステント支援コイル塞栓術ですが、国内導入されているEnterprise、Neuroform、LVISの治験をすべて担当しており、累積経験数は600例にのぼっています。Philips社の装置に組み込まれた脳動脈瘤内の血流変化を測定するアプリケーション(aneurysm flow)、computer fluid dynamicsの研究にも積極的に取り組んでいます。

3)脳神経領域の治療対象と手技
塞栓術 脳動脈瘤、脳脊髄動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、頭頚部腫瘍、など
再開通 急性脳卒中
拡張術 頚動脈狭窄症、頭蓋内動脈狭窄症、くも膜下出血後血管攣縮、など

循環器領域(循環器内科)

循環器内科ではIVRセンターで多くの検査、治療を行っています。
2016年は冠動脈造影検査956例、経皮的冠動脈形成術449例(内緊急139例)、末梢動脈形成術88例、アブレーション治療452例を施行しました。またペースメーカーの植込みも行っており、昨年は90例施行しました。そのほとんどをIVRセンターで行っています。これらの検査および治療件数は全国でもトップクラスです。IVRセンターにおいては、当科が使用するカテ室は三室ありますが、すべて2方向からの最新型透視装置を備えています。またどの部屋も十分な広さがあり、緊急時に大動脈バルーンパンピングや経皮的人工心肺補助装置等の機械を開始したり、人工呼吸器を使用する場合でも、円滑に手技が行えるようになっています。

消化器内科・放射線診断科

消化器内科ではIVRセンターにおいては主に肝臓癌に対する治療をおこなっています。多くが待機的な化学塞栓療法ですが肝癌破裂に対する緊急塞栓術も行います。またIVRセンターにおける手技ではありませんが、肝、胆道の経皮的ドレナージ(緊急含む)、肝癌のラジオ波治療といった治療も消化器内科で行われているIVR手技です。肝癌の治療方針については放射線診断科と週1回のカンファレンスで議論しています。

放射線診断科では様々な診療科の協力を得て以下のような多岐にわたるIVRを行なっています。特に当院では救急疾患が多いことを反映して緊急手技の占める割合が高いのが特徴です(年間100例以上)。また当科の特徴としては独自の外来、病棟を持たず、各診療科から依頼を受けて手技を行うことが挙げられます。このため何をしているのかわかりづらい部分があるかもしれませんが、多くの科の診療を様々な局面でサポートしております。

放射線診断科で行なっている手技
緊急止血、血行再建 骨盤骨折による出血、消化管出血(内視鏡での止血困難例)、腹部実質臓器(肝臓、脾臓、腎臓)の出血、血管損傷に対するIVR(塞栓やステント留置)、上腸間膜動脈塞栓症に対する血栓除去など
肝細胞癌に対する動注化学療法(一部)、動注リザーバー留置、腎血管筋脂肪腫に対する塞栓術  
内腸骨動脈瘤、腹部内臓動脈瘤などに対する塞栓(ステントグラフト術前を含む)  
透析シャントトラブルに対するIVR  
門脈系に対するIVR B-RTO、PTO、PTS、血管形成
CT(もしくは超音波)を用いたIVR 膿瘍のドレナージ、生検(針で腫瘍などの組織を採取すること)