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呼吸器内科の病気について

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肺癌という病気について

肺癌とは肺に発生する癌の総称です。気管・気管支・肺胞の正常細胞が本来の機能を失い、無秩序に増殖することで肺癌は発生します。しかも癌細胞は局所にとどまらず血流やリンパの流れに乗って多臓器に広がり同様に増殖します。これを転移といいます。肺癌は急激な増殖能力と転移能を兼ね備えているため、悪性度が高く予後の悪い病気といえます。
わが国の肺癌死亡数は1960年代から男女とも一貫して増加しており、男性では部類別悪性新生物死亡率が1993年に胃癌を抜いて第1位に、女性でも第3位となり依然増加し続けています。

症状

大きさや場所によって様々な症状が出現します。咳や血痰といった症状を呈することもありますが、かなり大きくなっても無症状であることが多いです。
ほかに胸背部痛や喘鳴(ゼ―ゼー音)、息切れ、声がかすれる、顔面や首のむくみなどが症状として出やすいです。また一般的な癌の症状として、疲れやすい、食欲低下、体重減少や発熱が持続するといった症状も現れます。

肺癌の診断

①気管支鏡検査

肺癌の正確な病理組織診断を得るために通常の病院では用いられない極細径気管支鏡検査や気管支腔内超音波検査も行い診断を行います。

②超音波ガイド下生検

超音波ガイド下に経皮的に安全に生検を行います。皮下に近い病変の場合に行います。

③CTガイド下生検

CTスキャンを撮影しながら、病変部を確認し経皮的に安全に生検を行います。気管支検査では到達困難な病変に対して行っています。

④胸腔鏡下肺生検

当院呼吸器外科と連携し、上記検査では診断が困難な場合に行われます。

上記の組織学的検査に加えて、レントゲン検査、CTスキャン、MRI、骨シンチレーション、PET/CTなどの画像診断も行い病期(癌の進行度)診断を行います。

組織型による分類

扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、小細胞癌の4つ組織型に分類されます。治療方針の決定上このうち非小細胞肺癌(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌)と小細胞肺癌の2つに分類することが多いです。

個別化治療の時代

近年肺癌治療は遺伝子変異に基づく治療に変わり、対象となる患者さんには腫瘍の遺伝子検査を行い一人一人に合った治療を検討していきます。それにあたり当院では国内の他施設と協力した遺伝子検査を行い最先端の治療方針を検討する場合もあります。

病期分類

StageⅠ⇒局所癌、StageⅡ、StageⅢ⇒局所進行肺癌、StageⅣ⇒遠隔転移を含む進行肺癌

肺癌の治療

肺癌の治療には大きく分けて手術療法、放射線療法、化学療法とに分かれます。また近年ではがん免疫療法が肺癌で適応となり、がん免疫療法も行っております。どの治療においても関西圏で屈指の症例数を誇っております。

①手術療法

当院では呼吸器外科を中心として定型的手術は胸腔鏡を用いた低侵襲手術を行い、腫瘍の進展具合により、肺全摘出術、葉切除術、区域切除術、スリーブ切除術を行っております。

②放射線療法

放射線を照射することにより腫瘍病変部の局所制御を行います。通常の分割照射に加えて、他院とも協力しながら体幹定位肺照射治療も行っています。骨転移病変や脳転移病変に対しても放射線療法を行っております。

③化学療法

抗がん剤による治療です。当院では最新のデータに基づいて抗がん剤を選択しております。対象となる患者さんには腫瘍の遺伝子検査を行い、適応のある患者さんにおいては分子標的治療薬(ゲフェチニブ、エルロチニブなど)を用いて治療も行います。

④免疫療法

2015年12月に本邦において適応となり、期待が持てる薬剤であります。しかしながらこれまでの薬剤と異なった全身への副作用も報告されており、総合病院としての強みを生かし他科連携を行い安全に治療を行えるように努力しております。

肺癌治療は病期分類、組織型、遺伝子変異によって大きく分かれます。下記はあくまで参考です

①非小細胞癌

Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期の場合は、根治的を目標とした手術療法、放射線療法、化学療法もしくはそれらを組み合わせた集学的治療がなされます。
Ⅳ期:全身化学療法、放射線療法、免疫療法を行います。より長くより元気になる治療を目標とし、最大限の支持療法を行いながら治療を行います。

②非小細胞癌

Ⅳ期:姑息的な全身化学療法もしくは放射線療法を行います。患者さんの体力に合わせた治療を行い癌による症状を軽くすることを目標とします。

③小細胞肺癌

小細胞肺癌はLDタイプ(限局型)とEDタイプ(進展型)に分かれます。LDタイプの場合は Ⅰ期の場合は手術療法と化学療法を行います。それ以外は化学放射線療法を行います。EDタイプにおいては全身化学療法の適応となります。

チーム医療、他科連携の時代

近年肺癌化学療法では日々進歩する治療、多様化する副作用、高騰する医療費、診断を含めて他科多職種による診療が不可欠となっています。当院では医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーからなる肺癌化学療法チームを設定し、治療は勿論のこと社会的なバックアップ体制についても助言や相談を行い治療行っています。また肺癌は治療中の救急受診が最も多い部類の癌腫といわれており、当院の24時間365日提供する救急医療により急に起こる治療中の合併症や毒性対応について癌治療を行う病院にて行うことができるという安心した医療を提供します。

「息が苦しい」や「息ができない」と呼吸不全とは同じではありません。「息」という字は、「自らの心」と書きますが、心臓の病気や精神的な問題でも息が苦しくなることがあります。逆に、息が苦しくなくても呼吸不全のことがあります。人に限らず全ての動物は、酸素がないと生きていけませんが、呼吸不全とは、動脈血中の酸素濃度の低下、つまり体内に酸素が不足していることであり、医学的には、「空気吸入時の動脈血ガス分圧が60Torr以下の場合」と定義されています。動脈血ガス分圧というのは動脈からの採血をしなければ測れませんが、パルスオキシメータという装置を使えば、指に光をあてるだけで動脈血の酸素化レベル(動脈血酸素飽和度 SpO2)をリアルタイムに測定でき、動脈血ガス分圧を簡単に推定することができます。SpO2で90%以下が、大体、動脈血ガス分圧での60Torr以下に相当しますので呼吸不全であるといえます。パルスオキシメータは連続記録も可能で、小型、軽量のものが普及しており、病院などでは呼吸管理のため様々なところで使用されています。

呼吸不全はどうしておこる?

呼吸は、気道および肺によって空気中の酸素を体内にとり込み、炭酸ガスを体外に排出する作業ですので、気道に障害があって空気が肺に到達しにくくなったり、肺の病気で酸素が血液内にとけ込みにくくなった時に呼吸不全になります。しかし、気道や肺に異常がなくても、神経の病気で呼吸筋の力が低下したり、胸郭変形があって肺が十分に膨らまなかったり、あるいは薬物で脳の呼吸中枢の働きが弱くなった場合などでも呼吸不全はおこります。

呼吸不全にはどのようなタイプがある?

I 型呼吸不全とⅡ型呼吸不全

呼吸不全は、不要な炭酸ガスが体内に貯まらないタイプ(Ⅰ型呼吸不全)と貯まるタイプ(Ⅱ型呼吸不全)の2種に分けられます。Ⅰ型呼吸不全は肺不全型とも呼ばれ、喘息発作、肺線維症、肺塞栓症などがあります。Ⅱ型呼吸不全は、換気不全型とも呼ばれ、進行した肺気腫、肺結核後遺症、胸郭変形、薬物による呼吸抑制などがあります。

急性呼吸不全と慢性呼吸不全

呼吸不全の状態が1ケ月以上続く場合を慢性呼吸不全、そうでない場合を急性呼吸不全として分けています。慢性呼吸不全の患者さんは長期にわたって呼吸不全の治療が必要で、しばしば急性増悪といって、いろいろな原因で呼吸不全の悪化をきたすことがあります。肺気腫、結核後遺症、肺線維症、気管支拡張症、胸郭変形などが慢性呼吸不全の原因になります。一方、急性呼吸不全は慢性化することはまれで急性期をのりこえれば、それ以後、呼吸不全の治療は通常必要ありません。肺炎、喘息発作、薬物中毒、肺塞栓症などは急性呼吸不全の原因となります。

呼吸不全の評価は?

動脈血ガス分圧やパルスオキシメータで動脈血酸素飽和度(SpO2)を測ればその時点 での呼吸不全の程度はわかりますが、呼吸不全の患者さんでは、呼吸不全のためにどれくらい行動が制限されているかということを示す指標に、Hugh-Jones(ヒュー・ジョーンズ)の分類という次の5段階に分ける方法があります。

Hugh-Jones (ヒュー・ジョーンズ)の分類
Ⅰ度 正常
Ⅱ度 同年齢の健常者と同様に歩行はできるが、階段や坂は健常者なみに登れない。
Ⅲ度 平地でも健常者同様に歩行はできないが、自分のペースなら1.6km(1マイル)以上歩ける。
Ⅳ度 休みながらでなければ50m以上歩けない。
Ⅴ度 会話、衣服の着脱にも息切れがする。息切れのため外出が出来ない。

また、肺機能検査や、6分間歩行試験(6分間で平地をどれくらい歩けるか)などによって呼吸不全の程度を評価することもあります。

呼吸不全の治療は?

体内に酸素が不足しているわけですから、どのようなタイプの呼吸不全であっても、酸素を体内に補う治療が最優先されます。

気道確保

痰、血液、異物などによって窒息状態にある場合は、酸素を補うルートを確保するため、まず吸引によって、それらをのどから除去しますが、うまく除去できない場合や、重症の呼吸不全の患者さんには、気管チューブという管を鼻や口から気管内に挿入します。

酸素療法

通常は鼻、あるいは口からカニューレやマスクで酸素を吸入させますが、必要な酸素の流量は原因疾患や呼吸不全の程度によって異なります。急性呼吸不全では、最初から高流量(3-4L/分)で良いのですが、慢性呼吸不全では、炭酸ガスが体内に貯まるI I型呼吸不全の場合、高流量ではさらに換気が弱くなってしまうことがあるので、通常、低流量(3L/分以下)から始めます。自分で息が楽に吸えない患者さんや重症の呼吸不全の患者さんに対しては、口や鼻から、あるいは気管チューブから酸素を押し流す、いわゆる人工呼吸を行います。

人工呼吸

人工呼吸の方法は応急処置としては患者さんの口や鼻に呼気を吹き込む方法がありますが、病院では、通常、気管チューブを人工呼吸器につないで、器械によって 酸素を気管に押しこみます。ただし、気管チューブの挿入は非常に苦痛を伴うので、最近では、管のかわりに鼻マスクや鼻口マスクを使って人工呼吸を行う方法(非侵襲性換気療法)が広く行われるようになってきました。

薬物療法

酸素療法や人工呼吸はあくまで不足した酸素を補っているに過ぎませんから、呼吸不全の患者さんに対しては、酸素療法と同時に、肺炎に対する抗生剤、喘息に対するステロイドホルモンや気管支拡張剤など、原因となっている病気の治療も必要です。

在宅酸素療法とは?

わが国で最も普及している在宅療法の1つで、現在、10万人以上の慢性呼吸不全の患者さんが、この治療を受けておられます。社会保険の適用を受けたのは 1985年で、それ以前は、酸素吸入が必要なために長期の入院をしいられる患者さんがたくさんいました。現在、この治療の適応基準は、安静時の動脈血ガス 分圧が55Torr以下(パルスオキシメータのSpO2では88%以下)あるいは、60Torr以下でも、運動時や睡眠時に著しく下がる人とされています。
また、その他に、肺高血圧症やチアノーゼ型心疾患の患者さんも適応とされています。肺気腫、肺結核後遺症、肺せんい症、気管支拡張症など の慢性呼吸不全の患者さんが、多くこの治療を受けておられますが、最近では、肺癌の患者さんも増えてきています。酸素供給方法は、空気中の酸素を濃縮する据え置き型の器械が多く使われていますが、この場合、通常、携帯用には酸素ボンベを使用します。他に、専用の容器に詰めた液体酸素を使用する場合もありますが、詰め替えや器械の設置場所の問題などで濃縮器ほどは普及しておりません。在宅酸素療法を始めると、どうしても行動範囲がせまくなってしまいがちですが、実際には旅行することも可能で、酸素供給を行っている業者が宿泊先に酸素濃縮器や酸素ボンベを届けてくれますし、在宅酸素療法をうけている患者さん同士の会も各地にあります。ただし、在宅酸素療法を始められたら、必ず定期的にかかりつけの医師の診察を受けて、呼吸状態のチェックをしておくことが大事です。

在宅人工呼吸療法とは?

在宅人工呼吸療法は、炭酸ガスが体内に貯まるⅡ型の慢性呼吸不全の患者さんに対して、気管切開口を通して人工呼吸を行う方法と、専用の鼻マスク、もしくは鼻口マスクを通して人工呼吸を行う方法とがあります。前者の気管切開口からの人工呼吸は、主に、神経疾患のために呼吸筋の力が極端に弱くなった患者さんに対して行われています。一方、後者の、専用のマスクを使う人工呼吸は、胸郭変形、結核後遺症、肺気腫などの慢性呼吸不全の患者さんに対して、在宅酸素療法と併用して夜間のみに行われる場合が多く、方法が簡便なこともあり、ここ数年、急速に患者数がふえています。

急性増悪の予防は?

慢性呼吸不全は、しばしば、入院が必要となるような急性増悪をきたすことがありますが、その原因としては、風邪やそれに引き続いておこる気道感染が最も多いといわれます。これを完全に予防することは困難ですが、日頃からうがい、歯みがき、手洗いなど清潔に心がけるとともに、バランスのとれた食事、十分な睡眠、適度の運動などにより抵抗力をつけることが重要です。また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種も予防につながりますので、医師と相談されたらよいと思います。その他の原因としては、慢性的に酸素が不足していると、肺高血圧から慢性心不全(肺性心)をきたしている場合があり、この心不全が悪化しても急性増悪となります。過度の運動や疲労で酸素が不足した状態を長くつづけていたり、水分の摂りすぎなどが原因でおこることが多く、足のすねの部分がむくんできたり、まぶたが腫れぼったくなったりします。肺性心のある患者さんでは「水分・塩分の摂取量を控えて、利尿剤を服用する、また体動時には 酸素吸入量を上げ、過度の運動を避ける」などといったことも悪化の予防になります。

はじめに…

「睡眠時無呼吸症候群」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。2003年2月に山陽新幹線での居眠り運転事件で有名になり、よく新聞やテレビでもとりあげられています。実は、眠気だけでなく高血圧や心疾患など、身近な病気に密接に絡んでいます。睡眠時無呼吸はとてもありふれた病気で、50歳以上の男性の約2割・女性の1割に、治療対象となる睡眠時無呼吸があると推定されています。以下の内容をご覧になって、心当たりがある方は、一度医療機関を受診されてみてはいかがでしょう。

睡眠時無呼吸症とは

睡眠時無呼吸の大部分は、睡眠中に呼吸が止まったり(無呼吸)、呼吸が止まりかけたりする(低呼吸)、「閉塞性睡眠時無呼吸」です。自覚症状としては、睡眠時のいびき、熟睡できた感覚がない、睡眠の途中で目が覚める、起床時の頭痛、昼間の眠気、集中力の低下などがあります。本人には自覚がなく、睡眠時に呼吸が止まっていることに家族が気づく場合もしばしばあります。睡眠時無呼吸は、仕事や日常生活の支障となったり、交通事故の原因となったりするだけでなく、高血圧・不整脈・脳出血・心筋梗塞など様々な合併症を引き起こします。重症であれば無治療で寿命も短くなることがわかっており、積極的な治療をお勧めします。

睡眠時無呼吸の原因

閉塞性睡眠時無呼吸は、多くの場合空気の通り道である気道が、部分的あるいは完全に閉塞してしまうことにより起こります(図1参照)。肥満のある人や、首が短くて太い人、あごが小さい人は特に気道が狭い傾向にあり、睡眠時無呼吸になりやすいことが知られています。睡眠時無呼吸が最も多いのは肥満の中高年男性で、メタボリック症候群の方では約半数に閉塞性睡眠時無呼吸症候群の合併が見られます。

睡眠時無呼吸の診断

原則的に一泊入院して、睡眠中の脳波、酸素濃度や胸郭の動き、脈拍、鼻や口からの気流などを計測し(この検査をポリソムノグラフィーといいます)、データを解析して睡眠中の無呼吸、低呼吸の回数を調べます。ご自宅でできる簡易型のポリソムノグラフィーもあります。

睡眠時無呼吸の治療

血圧や糖尿病などその他の生活習慣病の改善のためにも、肥満がある場合はまず減量に取り組みましょう。ただし、減量のみでは無呼吸は十分に改善しない場合も多く、一定以上の無呼吸がある場合は、無呼吸そのものの治療が勧められます。また、アルコールや睡眠薬・抗不安薬は咽頭の筋肉の緊張をゆるめるために気道の閉塞を悪化させるの

経鼻的持続陽圧呼吸療法装置(CPAPといいます)(図1、2参照)

一定の圧力を加えた空気を鼻から送り込むことにより、気道の閉塞を取り除く装置で、閉塞性睡眠時無呼吸の治療の第一選択と考えられています。ポリソムノグラフィーで計測した睡眠1時間あたりの無呼吸低呼吸が20回以上(簡易型では40回以上)で保険適用となります。


(図1)


(図2 CPAPの一タイプで、他に様々な種類があります)

口腔内装置(マウスピース)(図3参照)

上下の歯間に固定して、上気道閉塞の原因の一つである下あごの沈下を防ぐ装置です。歯科医師に作成してもらいます。主に軽度から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸の患者さんに効果があります。


(図3 このような装置をはめて寝てもらいます)

手術

肥満がなく気道閉塞の主な原因が扁桃腺の肥大やアデノイドであれば、手術が良い適応となりますが、対象となるのは主に小児の睡眠時無呼吸です。

最後に…

以下の症状がある方は睡眠時無呼吸の疑いがあるので、一度医療機関を受診してみることをおすすめします。特に肥満・高血圧・糖尿病などの生活習慣病や、心臓・血管のご病気をお持ちの方は、注意が必要です。

  • いびきがひどいといわれる。時に息が止まっている。
  • 十分に睡眠をとっているはずなのに、昼間に眠たくなる。
  • 夜間によく目覚めてしまう。息がつまる感じがある。

COPDはChronic(慢性)、Obstructive(閉塞性)、Pulmonary(肺)、Disease(疾患)の頭文字で、喫煙による炎症で肺胞の壁破壊や気管支の狭窄により慢性的に咳、痰、息切れを引き起こす病気です。

COPDの原因

以前は大気汚染もCOPDの原因でしたが現在の先進国ではほとんどの原因は喫煙にあります。喫煙歴がない人はほとんどCOPDになりませんので喫煙がCOPDの原因であることはたしかですが、喫煙者全員がvの原因になるわけでなく、喫煙者の約15%程度がCOPDに進展しますが、残りの85%の 喫煙者はCOPDにはなりません。そのため喫煙以外にたばこの感受性(肺気腫になりやすさ)の要素かあると考えられています。しかし現在でも肺気腫になる人とならない人の違いはわかっておらず、また予測することもできません。COPDにならないためにはタバコから離れて生活することしかありません。 ある予測では45歳までに喫煙をやめればCOPDにならずにすむが65歳以降に喫煙をやめてももはやCOPDは避けられないと報告しています。またCOPDになった人も早急に喫煙をやめないとCOPDは進行していきます。COPDと診断されて最も重要なことは直ちに禁煙することなのです。

COPDの症状

咳、痰などの症状から始まり、徐々に動いた時の息切れ(特に階段昇降時)を呈し、やがて軽度の日常動作でも呼吸困難を起こすようになります。重症化すると、呼吸に多大のエネルギーを使うため痩せ、筋委縮、体力低下が起きて寝たきりになりかねません。

COPDの診断

肺機能検査(肺活量のように息を吸ったりはいたりする検査)で、肺活量の1秒量(最初の1秒間に吐き出す量)を測定し、気道が狭くなり息を吐くのに時間がかかるのを検出することでおおむね診断することができ、また重症度の指標となります。COPDは軽症のうちはレントゲン写真も正常にみえますが、重症になってくると肺 が過剰に膨張して見えるようになります。また胸部高分解能CTでは肺の破壊が検出され早期の肺気腫も発見できます。

COPDの治療

禁煙

すでに肺や気道の傷んだ部分を回復する方法はありません。これ以上進行しないように直ちに禁煙することが先決です。喫煙したまま投薬等を受けても悪化はさけられないからです。禁煙外来では禁煙補助薬(ニコチン禁断症状を軽くする)を使用して医師の指導のもと禁煙を行うことができます。

薬物療法

禁煙した上で気管支拡張薬(抗コリン剤、長時間作動型β2刺激剤)の吸入を行うのがもっとも有効な治療法です。また重症例や増悪を繰り返す例では、吸入ステロイドを併用します。現在では、長時間作動型の抗コリン薬、β2刺激剤、吸入ステロイド、またそれらの合剤が複数市販されており、個々の患者さんに適した吸入薬が選択されます。これらの吸入には即効性はなく、しんどい時ではなく毎日定期的に吸入することが大切です。耐えられる運動量を上昇させ(つまり息切れしてできなかったことができるようになる。)、生活の質を改善させますが、予後(あと何年生きれるかという期間)は延長しないと考えられています。
その他、去痰薬や、重症時にはステロイド薬を使用します。

酸素療法

進行した場合、不足した酸素を補うために在宅酸素療法(家に酸素の機械を設置して家庭内や運動時に酸素を吸う治療)が必要です。在宅酸素療法は予後延長効果が認められています。血液中に二酸化炭素がたまるとマスク型の人工呼吸器が必要となることもあります。

リハビリテーション

呼吸不全に加え、COPDは全身の炎症をもつ疾患でもあり、その結果筋肉量の減少や栄養障害をきたします。下肢筋力強化や呼吸リハビリテーションなどの運動療法は薬物療法に上乗せ効果を持ちます。また体重減少は呼吸不全への進行や死亡のリスクが高いとされており、やせを防ぐ栄養療法が重要です。

急性増悪

COPDの方には急性増悪といって肺炎、気管支炎を引き起こすのをきっかけとして危機的な状態の悪化を招くことがあり、重症の人ほど頻度が高いことが知られています。息切れが急速に進行する場合などにはこの可能性があります。ほとんどの場合、入院治療が必要で致死率も高い状態といえます。去痰薬やマクロライド系抗生物質、ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌)などが増悪予防に効果があるとされています。

COPDの予後

息切れ感出現後の5年生存率(5年後に何%生きているかという指標)は約70%、10年生存率は40%程度とされています。特に高齢者と喫煙続行者は予後が悪いことが知られています。またCOPDの方は後年、肺癌を合併しやすいと考えられています。

最後に

45歳以上で10年以上の喫煙歴があり、咳、痰、労作時の息切れ感がある人は一度病院受診されることをおすすめします。

ぜんそく(喘息)とは空気の通り道である「気管支」の慢性の病気です。喘息患者さんの気管支には慢性的な炎症があり、このため刺激に対して反応しやすくなっています(気道過敏性といいます)。刺激に対して気管支が反応して細くなった状態が「喘息発作」で、細くなった気管支を通して呼吸をするので、呼吸をするときにゼイゼイ・ヒューヒューという音がし、息苦しさを感じます。気管支の狭窄は治療により、あるいは自然に改善するのが喘息の特徴です(可逆性の気流制限)。喘息は症状の強い病気ですが、症状への慣れが起こりやすいため、病状を正しく判断することが難しくなり、そのため適切な治療がなされないことが少なくありません。喘息を正しく治療するためには、まず、喘息という病気を理解することが必要です。

気道炎症とは

喘息患者さんの気道には慢性的に炎症があります。好酸球という細胞が炎症に関与していることが知られていましたが、最近ではリンパ球や好中球など他の炎症細胞やその他、様々な物質も関与していることが分かってきました。症状のないときにも炎症は持続しているため、発作時以外でも治療は続ける必要があります。(後述)
炎症の程度をみるためには、痰の中にある炎症細胞の数や吐く息の中の一酸化窒素(NO)という物質の濃度を測定します。

気道過敏性とは

喘息患者さんの気管支は炎症を起こしていて、ちょうど火傷したときみたいに腫れています。火傷をしていると、ちょっと触っただけでも痛みを感じるのと同じように、喘息患者さんの気管支も刺激に対して過敏に反応するようになります。(これを気道過敏性といいます)。普通の人では刺激にならないようなもの、例えばタバコの煙、花粉、あるいは冷たい空気などに簡単に反応して、空気の通り道が細くなります。
気道過敏性の程度は気管支を収縮する物質(メサコリンなど)を用いて評価することができます(メサコリン気道過敏性検査)。

可逆性の気流制限とは

気管支が細くなると空気の流れが制限されます。これを気流制限といいます。喘息患者さんの気流制限は治療により元に戻るのが特徴とされてきました。これを可逆性の気流制限といいます。近年、喘息患者さんの気流制限が徐々に固定化していくことが分かってきました。つまり、気管支が徐々に硬くなり、細くなるのです。(リモデリングといいます。)発作の予防と同時に、進行する気流制限の予防が喘息治療における今後の重要なポイントと考えられています。

喘息患者はどれくらいいるのでしょうか?

呼吸器の病気の中では最も多く、100人中3~5人いると推定されています。喘息の有病率は年々増加しています。また中高年ではじめて発症する人も多く、近年は高齢者の喘息が注目を集めています。

喘息の症状は?

喘息の症状には以下のものがあります。

  1. 息が苦しい、息がすぐに切れる(呼吸困難)
  2. 喉や胸がゼイゼイ・ヒューヒュー・ピーピー鳴る(喘鳴、ぜんめい)
  3. 咳が何日も続く(痰の絡むことも空咳のこともあります)

喘息患者さんのすべてが喘鳴や呼吸困難があるわけではありません。一部の人では咳だけが喘息の症状であることもあります(咳喘息)。喘息の咳は夜間から早朝、そして運動時に出ることが多く、喘鳴や胸部の症状も夜間や早朝に強まる傾向にあります。ごく軽い喘息症状でも放置しておくと次第に増悪する場合が多いようです。症状が軽いうちにきちんと治療することで、症状が次第に悪化することを防ぐことができます。

なぜ喘息になるの?

喘息の根本的な原因は未だによく知られていません。喘息の患者さんは家族にも喘息の方がいる場合も多く、何らかの遺伝的素因が関与していることが分かっています。近年の遺伝子解析の進歩で喘息に関係する遺伝子が一部解明されつつありますが、その全貌が明らかになるのには、まだまだ時間を要するでしょう。

喘息にはタイプがありますか?

一つの分け方として、ハウスダスト・ダニ・花粉などへのアレルギーが強く見られる喘息(アトピー型喘息といいます。)と、アトピー体質に乏しい喘息(非アトピー型といいます。)があります。近年、喘息の多様性が強調されており、他にも様々な分類が試みられています。

1. アトピー型喘息

室内環境や屋外の様々な有機物に対して、アレルギーを起こして喘息になるタイプです。アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を合併しやすく、アレルゲンの回避や除去が有効なことがあります。

2.非アトピー型

喘息発作を引き起こすアレルギー物質が特定できないタイプです。

危険な発作の兆候とはどんなものですか?

次のような症状がでる前に病院に受診することが必要です。もしでてしまったらただちに(場合によっては救急車で)病院を受診する必要があります。

  1. 会話の際、息継ぎが必要、大きな声がでない
  2. いつも使う吸入薬(気管支拡張薬)の効きが悪い・効かない
  3. 軽くても連日起こる発作
  4. 最近、重症の発作を起こしたことがある場合(入院したり救急外来に飛び込んだり)
  5. トイレにいけないとき、失禁してしまうとき
  6. 苦しくて横になれない状態が続くとき

喘息は根治可能ですか?

現状では残念ながら喘息という疾患は根治できません。ただ発症後早いうちに十分に治療すれば、多くの喘息患者さんでは完全に症状を落ちつかせるようにコントロールすることはできます。一部の患者さんでは完全に治療を中止できる場合もありますが、その場合でも症状が再発する可能性は常に残っています。一方、喘息の症状を放置しておくと、炎症のため気管支や肺の組織が破壊されて、機能が次第に落ちて回復しなくなると考えられています。こうなると治療を中止できないばかりか、治療をしても症状が十分改善しなくなります。早期の適切な治療が大切です。

喘息の治療薬について教えてください

喘息の治療薬は毎日用いる長期管理薬と発作のときに頓用で用いる発作治療薬に分けられます。

長期管理薬

長期管理薬の主役は吸入ステロイドです。ステロイドは喘息の本態である気道の炎症を最も強力に抑えることができる薬で、吸入で用いることにより全身性の副作用はほとんどなく安全に用いることができます。毎日吸入することで気道の炎症を抑制し、気道過敏性(前述)を改善、発作を予防します。

吸入ステロイド単独でコントロールできない場合

吸入ステロイドと長時間作動型のβ2刺激薬の合剤を用います。その他、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン製剤、長時間作動型の抗コリン薬といった薬を併用します。吸入ステロイドや併用薬を十分に使用してもコントロールできない重症喘息に対しては、近年抗IgE抗体や抗IL-5抗体といった生物学的製剤が使えるようになりました。

発作治療薬

発作治療薬の主役は短時間作動型気管支拡張薬(短時間作動型β2刺激薬)の吸入です。吸入ステロイドを毎日吸入し、症状が出たときに短時間作動型β2刺激薬の頓用吸入をするのが基本です。より重症の発作ではステロイドを飲み薬や点滴で用います。ただし、喘息治療の本来の目標は、普段の治療で発作治療薬を必要としない状態にコントロールすることにあります。

コントロールが不良になる要因は何かありますか。

喘息発作の原因となるアレルゲンが分かっている場合は、アレルゲンの回避や除去に努めましょう。タバコは厳禁です。禁煙は必ず守ってください。アレルギー性の鼻炎や副鼻腔炎、胃酸の逆流(逆流性食道炎)、肥満、睡眠時無呼吸症候群などを合併していると、喘息のコントロールが不良になることが知られています。また、過度のストレスなど、精神的要因も喘息悪化のリスクとなることが知られております。このように、合併症の評価・治療やアレルゲンの回避や禁煙指導など、トータルに管理していくことが喘息管理においては重要と考えられます。

喘息治療薬は安全ですか?

治療の中心となる薬は吸入ステロイド薬とβ2刺激吸入薬ですが、いずれも全身的副作用は極めて少なく、安全性に特に問題はありません。たとえ妊娠中でも安全です。妊娠中最も大事なことは、喘息発作を起こさないことです。発作を起こすと酸素が十分に行き渡らなくなり、それが最も胎児にダメージを与えるといわれています。

きちんと治療すれば、健康な生活ができますか?

適切な治療により、多くの患者さんは次のようなことができるようになります。

  1. 喘息症状なしに様々な運動やスポーツに参加し、活動的に生活できる。
  2. 喘息症状を気にすることなしに眠れる。
  3. 喘息が悪化するシーズンや誘因に出会ったときも、喘息の発作を防止できる。
  4. 肺が充分機能し、良い肺機能を維持できる。

つまり、健常者と変わらない日常生活ができるのです。

一言で肺炎といっても肺炎の中にもいろいろなものがあります。

細菌性の肺炎、ウイルス性の肺炎、薬剤による肺炎、自己免疫疾患による肺炎…などなど。
そのなかでも一般的にいわれる肺炎とは細菌性肺炎、つまりばい菌によって引き起こされる肺炎の事を言います。(その他の肺炎については間質性肺炎の項をご参照下さい。)
昔、抗生物質が無い時代には多くの人が肺炎により命を落としてきました。薬剤が発達した現在では外来治療で治ることも多いです。しかし時に重症化することもあり、現在でも特に高齢者の死因の重要な部分を占めています。

原因となる微生物は?

外来の患者さんの肺炎の原因となる菌

肺炎双球菌、インフルエンザ桿菌(冬にインフルエンザを起こすインフルエンザウイルスとは違うものです)、黄色ブドウ球菌、モラクセラカタラリス、マイコプラズマ、などといった名前のばい菌が原因となることが多いです。
その他にはインフルエンザウィルス(こちらは、かの有名なインフルエンザを引き起こす張本人です。)等のウィルスが多いと報告されています。ウイルスと細菌は同じ微生物でもその大きさや増殖方法に違いがあり全く別のものと考えてください。
実際の臨床の場では原因病原体がわからないことも多いです。

また、ご高齢の方やあるいは脳卒中の既往のある方、胃・食道の手術後といった基礎疾患を持つ患者さんでは、慢性的に口の中やのど、胃や食道等の消化管に常在するばい菌が気道内に入り、肺炎を繰り返して発症することがよく見られます。

症状は?

熱発、咳、痰といったいわゆる風邪症状を示すことが多いです。他に胸痛、全身倦怠感、呼吸困難等の症状が出ることもあります。これらの症状は肺炎に特有というわけではなく、症状だけでは肺炎という診断はできません。

検査は?

肺炎という診断をするために、胸部レントゲン写真(時には胸部CTスキャン)、血液検査などが必要です。また、原因となる病原体が何かを調べるために、痰の顕微鏡検査や培養検査などを行います。

治療は?

原因となるばい菌に対する抗生物質投与が治療の基本となります。もちろん、安静や水分・栄養分の補給は重要です。
軽症であれば外来治療が可能ですが、外来治療無効の場合や、脱水症状等の全身症状が強い場合、呼吸困難が強い場合には入院の上、点滴治療や酸素吸入が必要なこともあります。このようなことは、高齢者や何らかの基礎疾患がある方の場合に多いです。

予防はできるの?

こうすれば必ず予防できるという方法はありません。
しかし、人混みを避ける、うがい手洗いの励行、といった誰でも知っていることを行うことが、特に抵抗力が落ちている患者さんには重要になります。
慢性的な誤嚥がある方では、食後1~2時間は横にならない、就寝前1~2時間は食べたり飲んだりしないようにしてもらいます。うがい液などを用いて口の中をできるだけ清潔に保ち、ばい菌の口の中での増殖を減らすとともに可能なら上半身を少し起こした状態で眠るようにしてもらいます。こうすることで誤嚥のリスクを軽減させることができます。
また上記のとおり高齢者や何らかの基礎疾患がある方では重症化しやすいため、インフルエンザワクチンや肺炎の原因菌で一番多い肺炎球菌に対するワクチンの接種をかかりつけの医師に相談しましょう。

1)間質性肺炎とはどんな病気?

まず間質性肺炎の「間質」って何なのでしょうか。

肺はぶどうの房状につながった空気の入った小さな袋(直径0.1-0.2mm)である「肺胞」が多数集まってできています。その袋の壁のところが間質と呼ばれる部分です。

それでは通常の肺炎と間質性肺炎はどこが違うのでしょうか?

肺胞の中身、すなわち空間に炎症をおこすと肺炎と呼ばれますが、肺胞の壁に炎症を起こすものを総称して間質性肺炎と呼ばれます。肺炎は細菌感染によるものが一般的ですが、間質性肺炎の原因は多岐にわたり、それによって様々な名前が付けられています。

間質性肺炎の症状はどのようなものでしょうか?

原因や症例によって病気の進行速度は急性(日単位)から慢性(年単位)まで様々ですが、咳・息切れが主な症状です。経過が早いものは発熱を伴うことが多くなります。経過の長いものは線維化を起こして本来スポンジのように軟らかい肺が硬く縮み、肺活量が低下します。


繊維化を起こし、蜂の巣のように硬く縮んだ肺(矢印)

2)間質性肺炎の分類は?

原因の明らかなもの

吸入物質が原因となるもの
無機物質
  • 一般に塵肺と総称され、吸入物質によりさまざまな名称が付けられます。
    • 珪肺(通常の岩石に多量に含まれる硅酸化合物の吸入によって起ります)
    • 石綿肺(石綿吸入によって起ります)
    • アルミニウム肺 など
有機物質
  • 一般に過敏性肺炎*と総称され、吸入物質によりさまざまな名称が付けられます。
    • 夏型過敏性肺炎(古い木造建築についたカビによって起ります)
    • 加湿器肺、空調機肺(加湿器や空調機についたカビによって起ります)
    • 農夫肺(飼料に付着したカビによって起ります)
    • 鳥飼病(鳥由来の粉塵によって起ります)
    • きのこ栽培者肺(ビニルハウスなどにおけるきのこ胞子吸入) など
  • 放射線照射による放射線肺炎*
  • 薬剤服用による薬剤性肺炎*
  • 感染症(一般的に急性の経過です)
    • ウイルス肺炎(インフルエンザ肺炎・サイトメガロウイルス肺炎など)
    • ニューモシスティス肺炎
    • マイコプラズマ肺炎
  • 膠原病に伴うもの(関節リウマチ、強皮症、皮膚筋炎、多発筋炎、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、SLE、顕微鏡的多発血管炎など)

(*.......肺炎とはいってもこれらの場合起こっているのは間質性肺炎です。)

原因不明のもの(特発性間質性肺炎(IIPs)呼ばれます。各疾患の略語を併記しています。)

  • 慢性線維化型
    • 特発性肺線維症(IPF):もっとも多いタイプ。
    • 特発性非特異性間質性肺炎(NSIP)
  • 喫煙関連
    • 剥離性間質性肺炎(DIP)
    • 呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患(RB-ILD)
  • 急性・亜急性
    • 特発性器質化肺炎(COP)
    • 急性間質性肺炎(AIP)
  • 稀なもの
    • 特発性胸膜肺実質線維弾性症(PPFE)
    • 特発性リンパ球間質性肺炎(LIP)

3)原因不明のもの(特発性間質性肺炎)の診断は?

  • 病気の経過、職業、環境、ペット飼育、喫煙歴、身体所見などからまず原因となるものがないか検討します。
  • 肺高分解能CT(HRCT)で特徴的な所見の有無を探します。
  • IPFでは「蜂巣肺」と呼ばれる特徴的な肺の構造変化が見つかります。
  • 気管支鏡を用いて気管支肺胞洗浄を行い、病原体などの原因物質の有無や、洗浄液中の細胞の種類による特徴を検討します。
  • ここまで調べて結論の出ないときは胸腔鏡下肺生検と呼ばれる検査を行います。特に特発性肺線維症(IPF)以外の病型はこの検査を施行しなければ正確な診断に至りません。
  • 病気の重症度、進行度をみるためには、動脈血液ガス分析、肺機能検査、6分間歩行検査などをします。

4)胸腔鏡下肺生検とは?

  • 全身麻酔をして胸に3ヶ所程度の孔を開け、ファイバースコープと処置具を胸腔内に入れて、数ヶ所の肺組織を検査用に取り出す手術です。
  • 開胸手術(胸を大きく開いて直接肺をとりだす手術)ではありませんので、体に対する負担が少なく傷も3ヶ所の小さなものですみます。通常手術後3日程度で退院できます。
  • 肺機能の悪い方、胸膜癒着のある方などでは実施できないことがあります。

5)間質性肺炎の治療方法は?

原因の明らかな場合

  • まず、原因を取り除くのが先決です。感染症の場合は抗生剤や抗ウイルス薬を使用し、環境要因があれば暴露を避けます。
  • 原因を取り除けない場合(膠原病に伴うものなど)、原因を取り除いても進行するものには以下のような治療が試みられます。
    • 炎症を伴うと考えられる場合:ステロイドや免疫抑制剤による抗炎症治療。
    • 炎症はなく線維化が主体と考えられる場合:現時点では有効な薬物療法はありません。
    • 酸素吸入が必要な場合は在宅酸素療法が行われます。

原因不明(特発性間質性肺炎)の場合

  • 特発性肺線維症(IPF):特発性間質性肺炎でもっとも多いタイプです。抗線維化薬が唯一の薬物療法です。抗線維化薬にはピレスパ(ピルフェニドン)とオフェブ(ニンテダニブ)の二種類があり、そのどちらかを使うのが一般的です。治療効果には大きな差はなく、副作用の種類が違うのでそれを元に自分にあった方を選択します。
  • 特発性肺線維症(IPF)以外の特発性間質性肺炎
    • 非特異性間質性肺炎(NSIP)
      通常ステロイドと免疫抑制剤が投与されます。
    • 急性間質性肺炎(AIP)
      有効という根拠はありませんが、重症のためステロイドパルス療法や免疫抑制剤が使われます。
    • 特発性器質化肺炎(COP)
      ステロイドが投与され、これによく反応して改善します。
    • 剥離性間質性肺炎(DIP)/呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患(RB-ILD)
      喫煙と関連する疾患と考えられ、まず禁煙で経過を見ます。

6)間質性肺炎の急性増悪とは?

時に明らかな誘因がなく急速に呼吸不全が進行することがあり、間質性肺炎の急性増悪と呼ばれます。ステロイドパルス療法や免疫抑制剤が使われますが、致死率の高い病態です。

7)治療薬の副作用は?

どのお薬にも副作用がありますので、治療を行うかどうかは進行の速さや治療が効きそうかどうかを総合的に判断して行う必要があります。代表的な薬の主な副作用には以下のようなものがあります。

ステロイド 免疫力低下による感染症・骨粗鬆症・肥満・糖尿病の悪化・筋力低下など
免疫抑制剤 免疫力低下による感染症・骨髄抑制・腎機能悪化・肝障害・悪性腫瘍など
ピレスパ 嘔気・日光過敏症など
オフェブ 下痢・肝障害など

9)間質性肺炎に対する医療費の補助は?

  • 特発性肺線維症(IPF)、もしくは胸腔鏡下肺生検で診断されたIPF以外の特発性間質性肺炎は国の難病(特定疾患)に指定されています。
  • 重症度分類がⅢ度以上に当てはまる方のみが全額補助の対象となりますが、IーⅡ度であっても通常の高額医療制度を3回以上受けると「軽症高額」が適応され、医療費上限を下げることができます。
  • IPFの重症度は安静時の動脈血液ガス分析と6分間歩行中の酸素飽和度によって判定されます。

10) 間質性肺炎サポートチーム

当院では診断・治療に難渋するこれらの疾患に対して、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、ソーシャルワーカーなどの多職種が、それぞれの専門的アプローチを連携して行い、患者さんの治療導入や日常生活の維持、生活の質向上を目指して取り組んでいます。具体的には医師による病気の診断や治療法の説明、看護師による日常生活指導や在宅酸素療法の支援、薬剤師によるきめ細かい服薬指導、副作用マネージメント、理学療法士によるリハビリテーション、栄養士による栄養指導、ソーシャルワーカーによる社会資源の有効利用などです。これらの理解を深めるために「間質性肺炎ハンドブック」をお渡ししています。また病気が進行して緩和ケアが必要な患者さんのための「間質性肺炎とどう付き合うか」という冊子もお渡しします。

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