がん組織における遺伝子変異検査「P5がんゲノムレポート」サービス

米国および日本の公的機関で最も利用されているがんの遺伝子変異検査から生まれたP5がんゲノムレポートは、がん患者さんの治療に役立つ可能性のある情報を提供するサービスです。

がんと遺伝子変異について

がんの多くは、正常な細胞の遺伝子に、いろいろな変異(異常)が起こることによって生じることが分かってきています。

がんを引き起こす変異は、いろいろな遺伝子で起こり、がん細胞の持っている遺伝子変異の違いによって、がんの性質や抗がん剤の効き方に違いがでてきます。例えば、細胞を増やすための信号に関係している遺伝子に変異が起きて、信号が無制限に送られるようになることにより、細胞が増え続けることが、がん化の原因となっている場合があります。このような場合、どこに遺伝子の変異があるかを調べ、異常な分子から送られている信号を特異的に阻害する薬を投与することによって、効果的ながんの治療ができる可能性があります。もっとも、そのような信号を阻害する薬を投与しても、その薬の効果を上回るような遺伝子の変異がある場合には、十分な効果が得られないということもあります。

このようながんに関わる遺伝子の変異は、数多く見つかっています。患者さんのがんが、どの遺伝子の変異によって起こっているかを知るためには、できるだけ多くの遺伝子をまとめて調べることが有用です。この検査は、患者さんのがん細胞の遺伝子のどこに変異があるかを調べるために行うものです。患者さんのがん細胞の有する遺伝子の変異によっては、効果が期待できる薬を服用できたり、新しい臨床試験に参加することができる場合があります。

ただし、がんに関わる遺伝子の変異については、まだ分かっていないものも数多く存在するため、この検査を受けていただいても有用な情報が得られないこともあります。またこの検査を受けることによって得られた検査結果を集めて遺伝子の変異の頻度などを調べることは、まだ分かっていないがんに関わる遺伝子の変異に関する将来の研究に役立つ可能性があります。

P5がんゲノムレポートについて

P5がんゲノムレポートは、米国の国立がん研究所を中心に行われている世界最大規模のがんの臨床研究(NCI-MATCH )の中で開発された検査を基に開発されました。この臨床研究は、がんの遺伝子変異を調べることにより分子標的薬などの治療を効率的に行える体制を整えることを目的としたもので、ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院、MDアンダーソンといった米国有数のがん研究所や、多くの製薬会社などが参加しています。

本サービスでは、分子標的薬などによるがん治療や、製薬会社などが行うがんの薬の臨床治験への参加の参考になる遺伝子の配列を、次世代シーケンサーという最新の装置を用いて調べて、正常な遺伝子配列と比較することにより、患者さんのがん細胞の遺伝子の変異を解析します。

解析するのは52の遺伝子です。それらの遺伝子について、発がんに関係すると考えられる一つの塩基の置換、塩基の挿入や欠失、遺伝子のコピー数の変化、あるいは二つの遺伝子が融合するといった変異を見つけ出します。

P5がんゲノムレポートには、このように最新の技術を駆使して得られた患者さんの遺伝子変異の結果に加え、効果を示す可能性のある薬剤、臨床研究中の薬剤の情報が含まれます。そのためこのレポートから、患者さんのがんの治療に役立つ情報が得られる可能性があります。

見出された患者さんのがんの変異について、どのような治療があるのか、あるいは対応する臨床治験があるかといった更なる解析は、P5が独自に構築した治験データベースによって行われます。これはさまざまな臨床研究の結果や論文、あるいは製薬会社などの臨床研究・治験情報などを集積して構成されるシステムです。

本検査で解析する遺伝子変異

発がんに関連すると考えられる1塩基置換(Hotspot;35遺伝子)

AKT1, ALK, AR, BRAF, CDK4, CTNNB1, DDR2, EGFR, ERBB2, ERBB3, ERBB4, ESR1, FGFR2, FGFR3, GNA11, GNAQ, HRAS, IDH1, IDH2, JAK1, JAK2, JAK3, KIT, KRAS, MAP2K1, MAP2K2, MET, MTOR, NRAS, PDGFRA, PIK3CA, RAF1, RET, ROS1, SMO.

遺伝子のコピー数の変化(CNV;19遺伝子)

ALK, AR, BRAF, CCND1, CDK4, CDK6, EGFR, ERBB2, FGFR1, FGFR2, FGFR3, FGFR4, KIT, KRAS, MET, MYC, MYCN, PDGFRA, PIK3CA.

他の遺伝子との融合(Fusion;23遺伝子)

ALK, RET, ROS1, NTRK1, NTRK2, NTRK3, FGFR1, FGFR2, FGFR3, MET, BRAF, RAF1, ERG, ETV1, ETV4, ETV5, ABL1, AKT3, AXL, EGFR, ERBB2, PDGFRA, PPARG.

検査の条件

対象となるがんの種類

固形がん(膀胱がん/乳がん/大腸がん/子宮内膜がん/食道がん/胃癌がん/消化管間質腫瘍/神経膠芽腫/頭頸部がん/腎臓がん/肝癌/メラノーマ/中皮腫/非小細胞肺がん/骨肉腫/卵巣がん/膵臓がん/前立腺がん/皮膚基底細胞がん/小細胞肺がん/軟部肉腫/精巣がん/甲状腺がんなど、および原発巣不明のがん)

検体の要件

この検査では、遺伝子の解析のために、がん組織由来の核酸サンプルが必要です。そのためがんを含む組織(※)のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片をご提供いただきます。

(※)がんを含む組織:がんの病理検査のために行った生検のサンプルあるいは手術の際に採取した組織サンプルを用います。

費用

この検査は、保険診療として認められていないため、費用を負担していただく必要があります。レポートを含むこの検査の費用は、432,340円(税込)です。

(注)この検査が開始された後であっても、検体がこの検査に適する状態にないことが判明した場合、この検査は中止されます。この検査が中止された場合であっても、その時点までに発生した費用を患者さんに負担していただく必要があります。

検査の同意の撤回

患者さんから、検査の同意の撤回(検査の中止)の通知がなされた場合、検査は直ちに中止され、検査結果及び患者さんの個人情報は廃棄されます。なお、同意を撤回した場合であっても、検査費用は負担していただくことになりますのでご注意ください。

検査の方法

検査は以下の手順で行われます。なお検査にかかる時間は、4週間以内です。

がんゲノム検査の流れ:フロー図

1.がんゲノム検査外来申込み(患者さん ⇒ 主治医)

本検査をご検討される場合は、「がんゲノム検査外来」をお申込みください。

(※)検査申込み有無に関わらず、検査説明費用10,800円がかかります。

当院を受診されている場合は、主治医に相談してください。

当院を受診されてない場合は、かかりつけ医にご相談の上、かかりつけ医から事前にFAX予約を取ってもらってください。
FAX予約に必要な書類は、「診療情報提供書」、「同意書」です。
当院の地域医療連携センター(FAX:078-302-2251)まで、FAX送信してください。

2.がんゲノム検査外来受診-検査内容説明-(がんゲノム検査外来担当医 ⇒ 患者さん)

がんゲノム検査外来担当医の説明や説明書の内容を踏まえ、検査を希望される場合はがんゲノム検査外来担当医にお申し出ください。

3.検査申込み(患者さん ⇒ 当院)

検査費用お支払い後、検査開始となります(※)。

(※)P5がんゲノムレポートは保険診療の対象外となるため、自費診療として検査費用を負担していただく必要があります。

4.検査受託機関への病理切片サンプルの送付(当院 ⇒ 検査機関)

受診している医療機関で、がんの病理検査のために行った生検サンプルあるいは手術の際に採取した組織サンプルを用いて、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片を作成します。FFPE切片の残余サンプルの一部をP5がんゲノムレポートを実施する検査受託機関に適切な方法で送ります。医療機関は、送付の際に個人名をID番号などに置き換え、検査受託機関では患者さんを特定できないような処置を行います(匿名化)。

5.がん組織切片サンプルの病理検査およびがん部位からの核酸サンプルの抽出(検査機関)

検査受託機関に送られたがん組織切片サンプルについて、病理判定を行い、がんの位置を特定します。次に、切片サンプルのがんを一定割合以上含む部分を削り取ります。削り取った組織サンプルから核酸(DNA+RNA)を抽出精製します。

6.がんに関連している遺伝子の配列をシークエンサーで読み取る(検査機関)

がんを含む組織から精製した核酸を次世代配列読み取り装置(NGS)にかけます。がんに関連している52の遺伝子の配列を読み取ります。

7.遺伝子の配列からがんに関連していると思われる変異を同定する(検査機関)

読み取った遺伝子の配列を正常の配列と比較して、変異の候補を抽出します。これまでに報告されている論文などの情報を基に、見出された変異の候補が、発がんに関係するものなのかを解析します。

8.レポートの作成(検査機関)

患者さんのがん細胞に含まれる、発がんに関連していると思われる遺伝子の変異をリストアップします。日本および海外で実施されている分子標的薬の治験情報を集積します。リストアップした遺伝子の変異を持つがんが適応する治験を検索します。発がんに関連していると思われる遺伝子の変異とそれに適応する治験情報、治療のガイドラインの情報などをレポート化します(※)。

(※)この検査の精度は、検体の状態により左右されることがあるほか、検査方法の技術的な限界もありますので、得られた検査結果の正確性が保証されるものではありません。また、検査の性格上、一部の遺伝子について検査結果を得ることができず、検査を行ったすべての遺伝子について検査結果をお返しできない場合もあります。

9.レポートの送付(検査機関 ⇒ 当院)

作成したレポートについては、がんの臨床専門医に内容に間違った記述等がないかレビューしていただきます。その後、レポートを当院へ送付します。

10.がんゲノム検査外来受診-検査結果説明-(がんゲノム検査外来担当医 ⇒ 患者さん)

がんゲノム検査外来担当医から、検査の結果や今後の治療の選択肢について説明を行います。

検査の結果について

担当医師に返されるレポートは、以下のような情報を含んでいます。

  • 患者さんのがん細胞が持つ遺伝子の変異
  • この変異をもつがんに対する治療のガイドライン
  • この変異を持つがんに効果が期待される薬剤(国内)
  • この変異を持つがんに効果が期待される薬剤(国外)
  • この変異を持つがん患者さんを対象とした国内で実施されている臨床治験
  • この変異を持つがん患者さんを対象とした国内では行われていないが海外で実施されている臨床治験

この検査により得られる検査結果は、患者さんのがんの性質や状態等を知るための重要な情報となる可能性があります。もっとも、この検査結果のみで患者さんの治療方針等が決定されるものではなく、この検査結果を参考にしてあなたの担当医が、患者さんと話し合った上で、患者さんに合った治療法を決めることになります。

なお、がんに関わる遺伝子の変異については、まだ分かっていないものも数多く存在するため、この検査を受けていただいても有用な情報が得られないこともあります。

また、この検査の過程において、これまで報告されていない遺伝子の変異が見つかった場合であっても、その変異とがんの性質や状態等との関連性は明らかではありませんので、そのような遺伝子の変異の有無についてお伝えすることはできません。

さらに、この検査の精度は、検体の状態により左右されることがあるほか、検査方法の技術的な限界もありますので、得られた検査結果の正確性が保証されるものではありません。また、検査の性格上、一部の遺伝子について検査結果を得ることができず、その遺伝子の検査結果をお返しできない場合もあります。

※本レポートには、最新の治験情報が掲載されていますが、全ての治験を網羅していることが保証されるものではありません。