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産婦人科 北 正 人
腹腔鏡手術とは、腹壁に3-4箇所の穴を開け、そこを通して器具を操作することで、
従来開腹して行っていた手術を開腹せずに(時に小切開を併用)おこなう方法です。
傷が小さく痛みが少ないこと・入院期間が短いことなどの利点があり、現在では
手術方法としてかなり普及して参りました。
産婦人科領域で最も早くから適応されていたのは良性の卵巣嚢腫摘出術です。
大きな嚢腺でも内容液を吸引することで小さな穴から摘出可能です。また、嚢腫のみ
切除し卵巣を残す手術も可能であり、将来妊娠希望の女性には特に適しています。
腹腔鏡下子宮摘出術は、従来、開腹して行っていた子宮周囲の手術を腹腔鏡で行い、
最後に赤ちゃんを産むように下から引っ張って子宮を出す手術です。卵巣摘出術より難しい手術ですが、工夫をすることで赤ちゃんの頭より大きな筋腫がある子宮でも摘出可能です。筋腫のみ摘出し子宮を残す筋腫核出術も腹腔鏡で可能です。子宮から
筋腫をくりぬいて、子宮に出来た傷をお腹の中で縫う手間のかかる手術ですので、
あまり筋腫の数が多いときには適しません。
子宮内膜症は不妊症や月経困難症をおこす、若い女性に多い病気ですが、的確な診断のために腹腔鏡検査がとても有用です。超音波やMRI等の検査で異常が見つからない場合にも腹腔鏡で子宮内膜症が見つかることが良くあります。最近は子宮内膜症のホルモン治療にいろいろ良い薬が出てきましたが、内膜症による嚢鹿や癒着などは手術でないと治療できません。薬と腹腔鏡を上手に使い分けることが子宮内膜症治療のポイントです。
さらに最近では癌診療に腹腔鏡が応用されるようになってきました。例えば、原発巣が
不明な腹腔内の腫瘍に対して、従来は試験開腹が行われていましたが、最近ではより侵襲
の少ない腹腔鏡で診断することで、負担も少なく手術後すぐ次の治療が始められます。
また、限られた場合ではありますが、癌の手術そのものも腹腔鏡下で行う試みも始まって
います。将来は、かなりの癌手術も腹腔鏡で行われるようになるでしょう。
以上のように、大変素晴らしい腹腔鏡手術ですが、開腹手術では治療可能でも腹腔鏡手術では治療不可能(または非常に困難)な病気が少なからずあるのは事実です。
開腹よりも腹腔鏡手術の方が難しく、それだけ合併症を起こしやすい傾向にあることも否めません。
また、特殊な器材が必要なこと、開腹手術に比べて時間がかかること、術式によっては術者
が限られることなどの制約があり、1週間に施行できる件数に限りがあります。そのため、
予約して頂いてからの手術予定日までの待ち時間が現在4-5ケ月となっております。
患者様にはご迷惑をかけておりますことをお詫びいたします。
当科では、技術の向上と手術器具・手術環境の改善を常に行い、最先端の腹腔鏡手術を
患者さんに提供できるよう努めて参ります。
褥瘡対策チームについて、お知らせします。
褥瘡(じょくそう)は医学的には、「体の一定の場所に、一定以上の圧力が、一定時間以上、
加わり続けることにより、局所の血流が途絶えることで阻血性の組織壊死が生じ皮膚潰瘍
となる」と説明されます。
日本では昔から、床ずれ(長患いでお尻が擦れる)と言われ、英語では、プレッシャーソア
(圧迫で痛む)と言います。つまり、長患いをして寝込むと、おしリに痛い皮膚擦れが
できるということです。
ヒトの体は、生きた細胞で構成されています。血液が30mmHgの圧で毛細血管の網目を流れる
間に酸素や養分を血管外の細胞とやりとりして、細胞が生きていけるのです。
仰向けに寝る(仰臥位)とおしリの突出部(仙骨部)には、200mmHg以上の体圧が集中
するので毛細血管はつぶれて、血液が流れません(阻血)。始め皮膚が赤くなって放って
置くと、その部分が黒く固くなり(壊死)、かさぶたのように浮いてきてはがれおち、
くぼみ(皮膚潰瘍)ができてしまいます。これが褥瘡の完成型です。
強い外力が瞬間的に加わっておきる「けが」とは区別して、創ではなく瘡の字をあてるのは、
こういうキズの成り立ちからです。
褥瘡は、患いの中ででき患いを一層辛くします。しかも、一旦できてしまうとなかなか
治りません。褥瘡部位の圧迫を除去するのに有効なベッド、栄養、褥瘡処置の方法、
処置の時に使う薬の選択など、総合的に考えた対応(褥瘡ケア)を必要とします。
医師、看護師(創傷専門ナース)、栄養士による回診を実施し、病院全体としての
褥瘡ケアの向上に努力中です。
褥瘡対策チーム 武井 尚子
最終更新日 平成22年9月15日